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「TAP the COLOR」連載第99回
この連載を始めるにあたって様々な色を集めてきたが、最も数少なかったのがこのオレンジだった記憶がある。そんな中、最も強烈な印象を放ったのが『アメリカン・グラフィティ』のサウンドトラック盤だった。今改めてオールディーズ・ナンバーに耳を傾けると、ロックンロール全盛期の鼓動が聴こえてくる。
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サウンドトラック『American Graffiti』(1973)
その後のすべての青春/学園モノに多大な影響を与えた映画のサントラ盤。41曲の珠玉のオールディーズ・ナンバーを収録し、所々に伝説のDJウルフマン・ジャックの独特の喋りが挿入される。1962年のカリフォルニアが舞台ということで、1950年代半ば〜60年代前半のヒット曲が満載。ビーチ・ボーイズでさえ新人だった頃のR&Rクラシックがずらりと並ぶ。映画から生まれた永遠の名盤。
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アメリカン・グラフィティ〜41曲の珠玉のオールディーズが流れる超有名監督の青春映画
ブルース・スプリングスティーン『Greetings from Asbury Park, N.J.』(1973)
ボスことブルース・スプリングスティーンの原点。このデビュー作はボブ・ディランの再来として売り出したかったレコード会社の意向もあり、バンドサウンドよりもシンガー・ソングライター的なアプローチが漂った。アルバムタイトルも今思うと泣けてくるが、何よりも非凡な才能を持った裏通り出身の若者の登場は、商業化されつつあったロックの未来へとつながっていく。時間が経つにつれ、この作品の重みを感じる。なお、五十嵐正氏による書籍『スプリングスティーンが歌うアメリカ』はファンなら必読だ。
ジャクソン・ブラウン『Hold Out』(1980)
こちらもスプリングスティーンと並んで、今やアメリカ音楽の伝説的存在となったジャクソン・ブラウン。6枚目の本作は初の全米ナンバーワンを獲得した。今まで以上にロック色の強い作品であり、幕開けたばかりの80年代への姿勢がジャケット写真からも伺える。82年には前出『アメリカン・グラフィティ』の影響を受けた映画『初体験リッジモント・ハイ』の主題歌「Somebody’s Baby」を歌って、古くからのファンを心配させるが、今聴くとむしろ心地いいサウンドに酔いしれる。
REOスピードワゴン『Good Trouble』(1982)
1971年にレコードデビューしながら、まったく売れないまま地道にライヴ活動を続けていた彼らが、突如大ブレイクしたのが1980年の『Hi Infidelity』だった。本作はその続編的なアルバムだが、REOは次の『Wheels Are Turnin’』までヒットチャートの常連に。日本では耳障りのいい「産業ロック」の一環として揶揄されるが、当時ロックを聴き始めて間もない頃の少年少女たちにとっては、自分史を振り返る時、サウンドトラックに選曲されるバンドであることには間違いない。
*元ギタリストのゲイリー・リッチラスが先日13日に亡くなりました。
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