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「TAP the COLOR」連載第137回
JAZZが誕生して100年以上が経つ。その歴史を振り返る時、10年ごとに巨人と呼ばれる優れたジャズマンたちがいたことに気づき、その凄まじい演奏に圧倒される。JAZZは歓びのダンス・ミュージックであり、苦悩する芸術音楽でもある。今夜は、6月に去って行ったジャズマン4人を想い出してそっと耳を傾けたい。
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アート・ペッパー『The Return of Art Pepper』
モダン・ジャズの巨人たちには破滅型の人生を送る人が多いが、アート・ペッパーはその代表格かもしれない。しかし、彼が吹くアルト・サックスに魅せられたジャズマンやファンは数え切れず。1951年にスタン・ケントン楽団から独立後、自身のカルテットを組んで西海岸のマイナーレーベルに初の吹き込みを行ったのが1952年。しかし、ドラッグに溺れて数年を棒に振ってしまう(その後も何度か繰り返す)。本作はウエスト・コースト・ジャズの名盤を残した50年代後半の録音。なお、70年代の復活作も素晴らしい。1982年6月15日死去。享年56。
スタン・ゲッツ『Stan Getz Plays』
この人もドラッグ癖の影響で凄まじい人生を送ったが、「クール・テナー」と称されたスタイルは、同時期の熱いビ・バップとは対照的な演奏でジャズシーンに確かな足跡を刻んだ。しかし、トラブルもあってスウェーデンに数年滞在。帰国後の1962年、ギタリストのチャーリー・バードと組んでボサノヴァ作「デサフィナード」を録音するとポップチャートでも大ヒット。続くアストラッド・ジルベルトとの「イパネマの娘」はあまりにも有名。本作は50年代に残した代表作の一つ。1991年6月6日死去。享年64。
オーネット・コールマン『At the Golden Circle Stockholm』
オーネット・コールマンのフリー・ジャズは、それまでのジャズの概念や常識を覆す破壊力によって一大センセーションを巻き起こした。1958年に初リーダー作を録音。翌年には永遠の衝撃作『ジャズ来るべきもの』をアトランティック・レーベルから発表すると、フリー・ジャズはムーヴメント化してNYまで知れ渡っていく。本作は1962年末から沈黙を守っていた彼が突如ヨーロッパで第一線に復帰して、スウェーデンのジャズクラブでの演奏を収めたブルーノート作品。2015年6月11日死去。享年85。
ウェス・モンゴメリー『A Day in the Life』
ジャズ・ギターの礎を築いたチャーリー・クリスチャンの流れを汲むウェス・モンゴメリーは、1960年に傑作『インクレディブル・ジャズ・ギター』を録音。そして洒落たポップス工場として知られていたA&Mレコードが新たにジャズ部門をスタートさせると、ウェスの煙草の吸殻ジャケットでも有名な本作が第1弾として発表される。イージー・リスニング・ジャズと呼ばれたアレンジは賛否両論だったが、やがて70年代には一大勢力フュージョン・シーンを形成するまでに至る。1968年6月15日死去。享年45。
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