ジョニ・ミッチェルの歌に「California」という名曲がある。それは彼女が1971年に放った不朽の名盤『Blue』に収録されていた。
当時から画家としての才能も発揮していた彼女は、このアルバムをキャンバスに見立てて、“自由で複雑難解な女心”をリリカルに歌い描いたのだ。
この「California」は、ジョニが20代半ばにフランスやスペインを訪れた時に、“カリフォルニアに帰りたい”と思った気持ちが率直に描かれている歌だ。
もともとカナダ出身のジョニは、1960年代の半ばからニューヨークに渡り、その後カリフォルニア州のローレル・キャニオン(ロサンゼルスの近郊で、東のウッドストック同様に芸術家が集まる町)に移り住み、カリフォルニアの陽光に包まれながら暮していた。
当時、ローレル・キャニオンは、店などほとんどない不自由な場所で、道路は車がすれ違うのも大変なほど狭かった。そんな小さな町でイーグルスやグラム・パーソンズ、ザ・バーズが曲を創作したり、ジム・モリソンが詩を書いたり、フランク・ザッパが新たな演奏スタイルを探求していた。
リンダ・ロンシュタット、ニール・ヤング、ママス&パパスのキャス・エリオットなど、後に大きな成功を収めることになるミュージシャン達が、このローレル・キャニオンに集まったのは、安い家賃のためだったようだ。
このアルバムで、ジョニ・ミッチェルはギターやピアノの他に、“ダルシマー”と言う楽器を弾きながら歌っており、この曲もその一つである。
歌詞の中に出てくる“酷いニュース”というのはベトナム戦争のことを指していて、当時の空気感もしっかりと伝わってくる内容となっている。
異国の街を旅しながら、カナダ出身の彼女がカリフォルニアを「故郷」と呼び、一日も早く帰りたがる想いの裏には何か特別な愛着があったのだろう。
たとえそこが生まれた場所ではなくても、ありのままの自分を受け入れてくれる場所。人はそれを「帰る場所」=「故郷」というのかもしれない。

*サムネイル画像はWikipediaより
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