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伝説の白人ソウルシンガーの栄光と挫折

2024.12.21

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イギリス出身のブルー・アイド・ソウル・シンガー、ジョー・コッカーが、2014年12月22日に自宅のあるアメリカ・コロラド州で死去した。

ハスキーなしわがれ声と独特の歌唱が持ち味で、多くのファンを惹きつけ唯一無二の輝きを放っていた。ジョーのレーベルとなるソニー・ミュージックでは次のように声明を発表している。

「ジョーは長く肺小細胞がんとの闘病を続けていました。今年で70歳でした。彼は20代前半までイギリスに住み続けていましたが、1978年以降はのちに妻となるパム・ベイカーとアメリカに移住しました2007年にはイギリスの女王からOBE(オフィサー)を叙勲されました。1964年以来、ブルースやソウルの歌い手として各国で活躍し、今日まで活動を続けていました。これまで40枚以上ものアルバムを発表し、世界中を精力的にツアーして回り続けていました」


この訃報を受けて…多くのアーティストたちからメッセージが寄せられている。

「ジョーが亡くなったと聞いて本当に悲しいよ。ジョーは本当に気のいい北部のあんちゃんで大好きだったし、他のたくさんの人と同じで僕もジョーの歌声が大好きだったんだ。特に“With A Little Help Of My Friends ”をカヴァーしてくれて嬉しかった」ポール・マッカートニー(ビートルズ)

「ジョーが亡くなって悲しい。独自の曲を作った素晴らしい歌手だ」ブライアン・ウィルソン(ビーチ・ボーイズ)

「永遠に愛している。いつもあんたを思い出すだろう」スティーヴン・タイラー(エアロスミス)

「癌で悲しい損失だ。ファースト・アルバムを聴いて声にぶっ飛んだのを覚えている。素晴らしい歌の人生だった」ポール・スタンレー(キッス)


1944年(昭和19)5月20日、ジョー・コッカー(本名ジョン・ロバート・コッカー)は、イギリスのサウス・ヨークシャー州シェフィールドで生まれた。幼少の頃から歌うことが好きで、12歳の時に兄のバンドでゲストとして初めて人前で歌った。

この頃は、スキッフルという、イギリスのルーツ・ミュージックを継承する人物ロニー・ドネガンに大きな影響を受けていた。

1960年代初頭、15歳となったジョーはガスの配管工として働きながら、“ヴァンス・アーノルド”という芸名を名乗り、労働者達が集う酒場(パブ)で音楽活動を始めた。大好きなレイ・チャールズやチャック・ベリーの曲をカヴァーし、ジョン・リー・フッカーやマディー・ウォーターズなどのブルースを多く歌っていたという。

1963年、ローリング・ストーンズのサポートを務めた後、デッカレコードと契約を結び、翌年ビートルズの「I’ll Cry Instead」のカヴァーでデビューするも、不発に終わる。

地元シェフィールドにてライヴ活動を地道に続け、1968年にA&Mレコードから再デビューを果たす。同年、ビートルズの「With A Little Help Of My Friends」をカヴァーしたシングルがイギリスでトップ10入り、一躍人気歌手の仲間入りを果たす。

このカヴァーには、当時ポール・マッカートニーも絶賛した。そして、1969年8月、ウッドストック・フェスティヴァルに参加。

♪「With A Little Help Of My Friends」/ ジョー・コッカー in ウッドストック・フェスティヴァル


このステージでのパフォーマンスが話題となり、アメリカでも注目を集めるようになったジョーは、レオン・ラッセルがバンドリーダーを担当したマッド・ドッグス&イングリッシュメンをバックに従え、全米ツアーを実施する。

良い意味でも悪い意味でも“時代を象徴していた”大所帯のツアーは、一枚の名盤(ライブアルバム)となり、ロックファンの間では今も伝説として語り継がれている。だが、このツアーによってジョーはアルコールとドラッグに溺れていった。

数年のブランクを経て、1974年にようやく『I Can’t Stand In The Rain』をリリース。翌年には、シングルカットされたでビリー・プレストンのカヴァー「You Are So Beautiful」が、ビルボードのヒットチャートで5位になり、シンガーとしてのキャリアを高めた。

翌1976年にはジャマイカ録音で、ピーター・トッシュ、エリック・クラプトン、スタッフ(アメリカの凄腕フュージョンバンド)とのアルバムを制作しながら、長年の薬物中毒とアルコール依存からの脱却をはかる。

1981年にはザ・クルセイダーズのアルバム『Standing Tall』にゲストで参加し、全米1位のヒットを記録。このヒット以降、ジョーは大衆的な歌手としてアルバムをコンスタントにリリースできるキャリアを確立。

このアルバムに収録された「I’m So Glad I’m Standing Here Today(邦題:明日への道標)」は、まさにジョーのために書かれた曲であり、それまでの自身の人生を投影する“大切な歌”となった。

♪「I’m So Glad I’m Standing Here Today(邦題:明日への道標)」/ザ・クルセイダーズFeat. ジョー・コッカー

真っ暗闇の日々の中でも
太陽の光の存在を思い出すことさえ出来れば
心の言うことに耳を澄ませば
きっとあなたの道は見つかるだろう…


その翌年、ジェニファー・ウォーンズとデュエットした映画『愛と青春の旅立ち』のテーマ曲「Up Where We Belong」が全米チャート1位となり、アカデミー賞(歌曲賞)およびグラミー賞(最優秀ポップパフォーマンス)を受賞した。

♪「Up Where We Belong」/ジョー・コッカー&ジェニファー・ウォーンズ


ジョー・コッカー『Mad Dogs & Englishmen』

ジョー・コッカー
『Mad Dogs & Englishmen』

(2010/USMジャパン)



The Life of a Man – The Ultimate Hits 1968 – 2013

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執筆者
【佐々木モトアキ プロフィール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12648985123.html

【公演スケジュール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12660299410.html

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