今からさかのぼること50年…英国のミュージシャン、ニック・ロウは、“完璧なメロディ”と言っても過言ではない珠玉のメッセージソングを発表した。
ニックはアメリカ音楽への造詣が深く、カントリーなどのルーツ・ミュージックへのリスペクトを払いながらも、見事なポップミュージックへと昇華させたオリジナルソングを世に送り出してきた男だ。
この「(What’s So Funny ‘Bout) Peace, Love, and Understanding」は、ブリンズリー・シュウォーツというバンド在籍時に書いた名曲のひとつである。
「(What’s So Funny ‘Bout) Peace, Love, and Understanding」/ニック・ロウ
パンクロック、ハードロック、グラムロック、プログレッシブロックなどなど多岐に渡る“ロックジャンル”の中に、「パブロック」と呼ばれるジャンルがある。1970年代前半からイギリスで巻き起こったムーブメントの一つだ。
ニック・ロウが在籍していたブリンズリー・シュウォーツは、そんな“パブロックの礎”ともいえる伝説的なグループなのだ。
この“ブリンズリー・シュウォーツ”というちょっと不思議な名前は、当時リーダーでギター&ボーカルを担当していたブリンズリー・シュウォーツの名前がそのままバンド名になったものだ。ニックはあるインタヴューで、バンド名が決まった経緯について語っている。
「彼(ブリンズリー)は他のメンバーより年上だったんだ。他のみんなは当時まだガキでね。別に彼が自ら“これは僕のバンドだから自分の名前を付けたい”と言ったわけではなかったけれど、最年長ということで…言ってみれば彼がバンドリーダーのような者だったんだよ。それに彼がすごく珍しい名前だったというのもあって…他に特に理由はなかったね」
前身バンド“Kippington Lodge(キッピントン・ロッジ)”に、ニックがベーシストとして加入したのが1968年のこと。
ポップロック調のシングルを数枚発表した後、ボブ・アンドリュース(キーボード)、ビリーランキン(ドラムス)に落ち着いて“ブリンズリー・シュウォーツ”に改名する。
「僕はブリンズリーと同じ学校に通っていたんだ。学校を卒業してプロのミュージシャンになるまで、僕はまっとうな職に就いていたんだ。ある日ブリンズリーが電話してきて、当時彼がやっていたバンド(キッピントン・ロッジ)に入らないか?と言ってきたんだよ。彼らはすでにレコード会社と契約を交わしていたんだけど、それは当時としては凄いことだったんだ。それで僕はすぐに仕事をやめて、彼の住んでいた街へ行ってバンドに加入したんだよ。そのバンドが後に“ブリンズリー・シュウォーツ”という名前に変わったんだ」
このバンドのスタートは順風満帆なものではなかった。デビュー前に巨額を投じてアメリカでのプロモーションを展開するも、結果はボロボロ…多額の負債を背負うことになる。70年に晴れてデビューするも、別名義でリリースしたり、年間300本ともいわれるパブでのライブなど地道な活動が続いたのだ。
ビートルズ以降の70年代のイギリスのロックと言えば、ハードロックやプログレッシブロックなどが登場して一大勢力を築いていく時代。そんな中にあって、彼らのサウンドはロックンロール、ブルース、カントリーなどのアメリカン・ルーツミュージックとも言えるシンプルなもの。
ゆえに“イギリスのザ・バンド”とも呼ばれていた。当時、同じようにパブロックというジャンルを形成していたアーティストとして、イアン・デューリーやパレーツ、デイヴ・エドモンズ、ドクター・フィールグッドらも名を連ねる中、彼らの功績と云えば、その数年後に発生することとなるパンクやニューウェイヴへ多大な影響を与えたことだろう。
後にニックがプロデューサーとして関わったダムドやプリテンダーズ、そしてこの名曲「(What’s So Funny ‘Bout) Peace, Love, and Understanding」をカヴァーして多くの音楽ファンにメッセージを伝えたエルヴィス・コステロの活躍は、まさに“伝説のバンド”ブリンズリー・シュウォーツの存在があってこそのものだった。
「(What’s So Funny ‘Bout) Peace, Love, and Understanding」/エルヴィス・コステロ
1972年にギター&ボーカルのイアン・ゴムが参加してからの3rdアルバム『Silver Pistol』は、ラインナップが固まっての代表作との呼び声も高く、その後も良質のアルバムを2枚発表するも…バンドは陽の目を見ることは無く1975年に解散する。
この名曲を収録したラストアルバム『The New Favourites of… Brinsley Schwarz』は、デイヴ・エドモンズのプロデュースによって1974年に発表されたもの。
ここでの意気投合がきっかけとなって、ニックとデイヴは後に“Rockpile(ロックパイル)”を結成し、さらに良質なポップミュージックを生み出していくこととなる。
「Heart」/ロックパイル
<引用:『1995クロスビート増刊号ロックンロール』シンコーミュージック>


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