「年間で200万人、いや260万人もの子供が、防ごうと思えばできたような病気のせいで命を落としているんだよ。他にも何百万人もの子供たちが虐待や暴力の犠牲になっていると聞いている。こんなことは起こらずに済むはずのことなのに…そうと思うと本当にいたたまれない気持ちになるんです」(マイケル・ジャクソン)
戦争、貧困、飢餓、経済至上主義、差別、自然破壊、エネルギー問題…
20世紀〜21世紀を生きる人類は常に大きな問題を抱え、様々な出来事に直面してきた。その問題の起因となっているものの多くは人類の“自業自得”ともいえるもの。
これまでもたくさんの歌や文学、映画やドラマ、舞台などの作品を通じて「地球が傷ついている」「世界が病に冒されている」というメッセージが伝えられてきた。
今日は“キング・オブ・ポップス”ことマイケル・ジャクソンが遺したメッセージソング「Heal the World」をご紹介します。
生前、マイケルはあるインタビューでこんな質問を受けた。
「残りの人生で、たった1曲しかパフォーマンスできないとしたら、どの曲を選びますか?」
マイケルは「う〜ん…2、3曲選んじゃダメ?」と真剣に悩みつつも、きっぱりとこう答えたという。
「1曲だとしたら…やっぱり“Heal the World”だよ。あの歌は僕が今までにレコーディングしてきたすべての楽曲中でも特別な曲なんだ。人々の心の中に、これからも長く生き続けると思っているよ。何かとても特別なもの、何かとてもイノセントなもの、何かとても大切なものについての曲だから。」
君の心の中に小さな場所がある
僕にはわかってる…その場所こそが愛なんだ
君のため 僕のため
世界を癒すんだ
そして人類みんなのために
この歌はマイケルが1991年(当時33歳)に発売した楽曲で、作詞作曲は彼自身によるもの。
それは“20世紀最後の戦争”ともいわれた湾岸戦争が勃発した年でもあった。
アメリカや多国籍軍の戦死者が 200~300人だったのに対して、イラクでは子供たちや女性、老人の民間人を含む3万人以上人が亡くなったといわれている。
世界中が再び戦争の理不尽さを目の当りにした時期に、マイケルはこんなメッセージを発信することとなる。
日々をもっと注意深く見つめてみれば
人々が傷つき死んでいく
なぜ僕らは生命の首を絞め続けるのか?
この地球を傷つけ その魂を十字架に磔にするのか?
ディスニー映画やフランク・シナトラ、アレサ・フランクリンなどを手掛けてきた音楽監督マーティ・ペイチによるプレリュード(前奏曲)部分に“少女の語り”が重ねられており、よりドラマティックな仕上がりとなっている。
本作のミュージックビデオには、アメリカやアフリカ、中国や中東、東ヨーロッパなどで内戦や政府による抑圧、差別や貧困で苦しんでいる様々な人種の子供たちが登場している。
マイケルはこの作品の発表を契機に、1992年に「ヒール・ザ・ワールド財団」を設立した。
財団の目的は、世界中の子供たちが様々な暴力や差別、放置といった不幸にさらされないようにするというものだった。
財団設立にあたって、当時マイケルが語ったメッセージをご紹介します。
「僕らのミッションは世界を変えること。子供や生態系やこの地球に対するみんなの認識を変えて、みんなにとってもっと素晴らしい場所にすること。そしてその第一歩は子供達を救うことだと思っています。だって彼らこそが未来ですから。やり遂げるまで、決してこの使命から離れないつもりです。」