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ドラッグと銃が生んだ悲劇をもとに書かれた「哀愁のマンデイ」

2024.01.28

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♪教えてくれないか
 月曜日が嫌いだからよ
 その日そのものを
 撃ち落したかったの♪


ブレンダ・アン・スペンサーはサンディエゴの郊外にあるクリーブランド小学校の向かいにある家に住んでいた。
1979年1月29日。いつもと同じ、何も変わらないような月曜日。

16歳のブレンダは、酒に酔い、PCPというドラッグを服用していたと言われている。彼女はその年の前のクリスマスに父親から買ってもらったプレゼントのケースを開けた。

PCPはわが国では麻薬指定されている向精神薬。
そして父親からプレゼントされたケースの中には、ライフル銃が入っていた。

♪彼女の中のシリコンチップに
 *オーバーロードのスイッチが入った
 誰も今日は学校に行かないだろう
 彼女が子供たちを家から出ないように
 するからだ
 父親には理解できない
 彼女は黄金のように素晴らしい娘だと
 言ってきたのだ
 彼は理由を見つけ出せない
 理由などないのだ♪


(*オーバーロード:心理学的には情報が過多となり、処理できなくなる状態のことだが、ここでは、スイッチが入る、という表現があることから、プログラミングで使われる「多重定義」のことだと思われる)

ブレンダは銃を取り出すと、家の向かい側にある小学校に向かい、銃を乱射する。
校長と用務員が死亡し、生徒や警官にも負傷者が出た。

そして何故撃った、という問いに対する彼女の答えが、冒頭の歌詞である。

「月曜日が嫌いなの。理由なんてなかったわ。ただ、面白くしたかったのよ」と、彼女は答えた。「誰だって月曜日は嫌いでしょ」

この事件からひと月もしないうち、ステージでこの歌を披露したのが、ブームタウン・ラッツである。
バンドのフロントマンだったのが、後にバンド・エイドなどのイベント・プロデュースでその名を馳せることになるボブ・ゲルドフだ。

ブレンダがこの事件を起こした時、ボブはツアーでアトランタにいた。
そしてニュースを耳にすると、書きかけだったレゲエの曲に歌詞をのせ、リズムも雰囲気もガラリと変えて「哀愁のマンデイ」を書き上げたのである。

曲はその年の7月、全英チャートでナンバーワンを記録している。
だが、サンディエゴのラジオ局はこの歌を流すことを認めなかった。

事件から45年。日本でも脱法ドラッグは蔓延している。



Boomtown Rats『Fine Art of Surfacing』
Ume

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