「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

TAP the ROOTS

グラム・パーソンズの魂が向かった場所

2024.09.18

Pocket
LINEで送る

1973年9月20日。バーズやフライング・ブリトー・ブラザーズで活動したグラム・パーソンズの遺体が、忽然と姿を消した。棺に入れられたパーソンズの遺体は、LAの国際空港から彼の親族が暮らすニューオリンズに向かうことになっていた。

カントリー・ロックの伝説ともなったグラム・パーソンズが、ジョシュア・ツリーのモーテル、ジョシュア・ツリー・インにチェックインしたのは、9月18日と記録されている。

ジョシュア・ツリーは、LAの空港から200マイルほど東に行ったところにある国立公園で、その面積は東京ドームの1.5倍ほどある(国立公園に制定されたのは、パーソンズの死後、1994年のことだ)。

そこには、山が、砂漠が、自然の庭がある。そしてモハーヴェ砂漠には、ジョシュア・ツリーが生息している。そして巨岩で有名なこの地は、ロッククライミングとスクランブリングの聖地とされていた。

グラム・パーソンズはロッククライミングを愛していた。そして2作目となるソロ・アルバム『グリーヴァンス・エンジェル』の制作を終えた彼は、リラックスしたかったのだろう。ロッククライミングを楽しみ、酒を飲んだ。酒を飲み、モルヒネを打った。9月19日、彼はモーテルで、帰らぬ人となっていた。

そのパーソンズが収まった棺を盗んだ男たちは、霊柩車に棺を乗せると、東に向かい、途中、バーで車を停めている。ひとりは、フィル・カウフマン。もうひとりは、マイケル・マーティンといった。ふたりは、パーソンズの友人であり、カウフマンはロード・マネージャーであった。

バーでふたりは、献杯を交わした。そして、故人が生前語っていた言葉を、実行に移すことをもう一度、確認しあった。ふたりは、ジョシュア・ツリーへと向かった。

ジョシュア・ツリー国立公園の中、車は、巨大な岩の前で停まった。岩の上には、もうひとつ、ちょこんと小さな岩が乗っている。その岩が帽子のように見えることから、そこはキャップ・ロックと呼ばれていた。

「もし、俺が死んだら。。。」

グラン・パーソンズは、そう言ったのだと、カウフマンは供述している。

「キャップロックで俺を焼いてくれ。。。」


キャップ・ロック。そこはグラン・パーソンズが生前、盟友キース・リチャーズと一晩、過ごした場所だった。ふたりは酒を飲み、歌を口ずさみ、幻覚剤ペヨーテをキメた場所だった。

以来、その場所は伝説となった。その場所では、グラン・パーソンズの霊が現れ、ギターを奏で、歌を口ずさむというのである。



Sacred Hearts & Fallen Angels: Anthology

●Amazon Music Unlimitedへの登録はこちらから
●AmazonPrimeVideoチャンネルへの登録はこちらから

Pocket
LINEで送る

あなたにおすすめ

関連するコラム

[TAP the ROOTS]の最新コラム

SNSでも配信中

Pagetop ↑

トップページへ