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ペイネ 愛の世界旅行〜このどうしようもない世界で「本当の愛」を見つけるために旅立つ恋人たちの名作

2024.01.13

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『ペイネ 愛の世界旅行』(Il Giro Del Mondo Degli Innamorati Di Peynet/1974)


ハイコントラストの白黒映像。跳ね上がる爆撃の中、手と手を取り合って何度も駆け抜けていく1組のカップル。そして流れ出すエンニオ・モリコーネのテーマ曲──『ペイネ 愛の世界旅行』(Il Giro Del Mondo Degli Innamorati Di Peynet/1974)のあまりにも印象的なオープニングだ。

このアニメーションは、ベトナム戦争や中東危機など世界中で紛争が絶えなかった1970年に企画が立てられ、3年の歳月を経て完成した。物語後半の「戦争反対、恋愛賛成」というシーンが象徴するように、本作は「愛と平和」をテーマにした恋人たちのための映画である。

2020年、世界はその頃と一体何が変わったのだろうか? そう思うと心が傷む。だからこそこの作品が放つ力強いメッセージに、今もう一度心を向けてみる機会だと思う。

恋人たちを描いたのは、レイモン・ペイネ。1908年パリ生まれの世界的なイラストレーターで、フランスだけでなく日本でも1986年に軽井沢に美術館が建てられたので出向いたことのある人も少なくないだろう。1930年に5歳年上の夫人と結婚。夫婦はペイネが描く恋人たちのように仲が良く、彼女が創作に大きな影響を与えたと言われている。1999年に90歳で死去。『ペイネ 愛の世界旅行』はペイネ唯一のアニメーション作品であり、1974年7月に日本で初公開されて、その後リバイバル上映もされた。

物語は、おかっぱ頭に山高帽をかぶったバレンチノと髪をポニーテールにしてミニスカートを履いたバレンチナという恋人たちが、本当の愛を見つけるためにラブパスポートを手に入れるところから始まる(恋人カードにはアダムとイブ、シーザーとクレオパトラといった有名なカップルも登録している)。そしてエアー・ラブという天使が操縦する飛行機に乗って、世界中を次元を超えて自由に旅していくというもの。

そこには愛のメッセンジャーとも言える有名な人物たちがいて、二人は歴史的瞬間に立ち会いながら、時には離れ離れになりながらも、長い旅の末、1968年5月のパリの五月革命において遂に安息の場所を見つけ出す。花びらが祝福するように恋人たちの頭上を舞っている。「戦争反対、恋愛賛成」のプラカードが出てくるのはこのクライマックスだ。

訪れるのは20ヶ国26都市。移動手段はエアー・ラブのほか、車、自転車、潜水艦、馬車、気球、列車、ヘリコプターなど様々。日本にも立ち寄るシーンがあり、そこでは富士山、芸者、NHK、タクシー、着物などが登場する。また、鳩や天使や花といった平和のシンボルも全編に渡って恋人たちを見守っている。音楽ファンにはビートルズの4人の姿も見逃せない。

「愛してる?」
「もちろんだよ」
「どのくらい?」
「すべての世界よりも!!」


(バレンチノとバレンチナの旅路)
第1部/天界でラブパスポートを受け取り、最初に出向くのはべツレヘム。キリストの誕生に立ち会った後、ギリシャ→オランダ→ベルギー→地中海→ドイツ→スペイン→スイス→イタリアへ。ネモ船長、ドン・キホーテ、ヘミングウェイ、ウィリアム・テル、フェリーニ、ダ・ヴィンチ、聖フランチェスコなどが登場。

第2部/イギリス→デンマーク→北極→日本→ブラジル→メキシコ→アメリカ→中国→ロシア→フランスでは、エリザベス女王、ビートルズ、シェークスピア、ニクソン、ブレジネフ、毛沢東、ロートレック、モナリザなどが登場。


巨匠エンニオ・モリコーネの音楽が流れる感動的なオープニング


♪ サウンドトラック『ペイネ 愛の世界旅行』

♪ サウンドトラック『ペイネ 愛の世界旅行』






*日本公開時チラシ
137450_1
*参考/『ペイネ 愛の世界旅行』(プチグラパブリッシング)
*このコラムは2016年2月に公開されたものを更新しました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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