「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

TAP the SCENE

ウェディング・シンガー〜間違った結婚相手を選んでしまった二人の運命は?

2024.02.13

Pocket
LINEで送る

『ウェディング・シンガー』(Wedding Singer/1998)


青春映画や恋愛映画では、その作品で描かれる時代設定が劇場公開時とリアルタイムではないケースがよくある。1970年〜80年代におけるこのジャンルでは50年代や60年代モノが数多く製作されたが、これは作り手たちが自分たちの若かった頃を振り返ろうとする時に起こる必然的なことで、時が流れて作り手たちの世代が変われば、今度は80年代や90年代モノが増えていくことになる。そしてこの種の映画にはなぜか傑作が多い(例えば70年代に公開された『アメリカン・グラフィティ』や『ビッグ・ウェンズデー』、80年代の『君がいた夏』、ゼロ年代『あの頃ペニー・レインと』など)。

90年代後半に作られた『ウェディング・シンガー』(Wedding Singer/1998)もそんな傑作の一つだった。主演のアダム・サンドラー、監督のフランク・コラチ、脚本のティム・ハーリヒ、製作のジャック・ジャラプートらは学生時代からの友人関係。いつか一緒に作品を作りたいと思い続けて10年後に本作で実現した。「僕らは青春時代の多くの時間を80年代の郊外で育ちながら過ごした。この映画では郊外での生活、人間関係、結婚について描きたかったんだ」

この映画には誰もが実行可能な小さな魅力がたくさん詰まっている。だから観る者は段々とハッピーな気持ちになってくる。事実、アメリカでは「大好きな人と一緒に観ると幸せになれる」という噂が広まって大ヒットした。

普遍的な愛や結婚のストーリー、出演者たちの笑顔(特にドリュー・バリモア)や歌声(アダム・サンドラーも歌を披露)、そして80年代のヒット曲を綴ったサウンドトラック。あのビリー・アイドルが自身の役で登場するのもサプライズだが、当時8歳になる息子が『サタデー・ナイト・ライヴ』の人気コメディアン、アダム・サンドラーの大ファンだったので受諾したという。映画に出るとビリーは息子から神様扱いされたとか。

物語の舞台は1985年の郊外の町。ロビー(アダム・サンドラー)はプロのミュージシャンになる夢を捨てきれずに、他人の結婚式を歌と司会で盛り上げるウェディング・シンガーの職で何とか生計を立てている。しかし、自分の結婚式では当日に花嫁からドタキャンされるという最悪なことが起こる。

自暴自棄になっていた時、結婚パーティ会場で働くジュリア(ドリュー・バリモア)と出会って意気投合。3か月後に迫った結婚式の準備を手伝ってほしいと言われる。彼女の婚約者はリッチな証券マンで、多忙なことを理由に手伝ってくれないのだ。ロビーはジュリアのために仲間たちの協力を得ながら日々駆け回る。一方ジュリアはマリッジ・ブルー気味になり、母親の説得も虚しく今の彼が本当に運命の人かどうか迷い始める。ロビーのことが頭から離れない。

そのうち、ジュリアの婚約者がとんでもない性格の浮気者だということを知ってしまうロビー。いつしかジュリアに心を奪われていたロビーだったが、自分にはお金もないのでいい暮らしが望めない。そんな時、ドタキャンしたはずの昔の彼女がロビーのもとに戻ってきた。間違った結婚相手を選んでしまった二人の運命は?……

改めて“結婚とは何か?”を考えさせてくれる良質な作品だ。なお、子役スターとなって以降はいろいろとトラブルが絶えなかったドリュー・バリモアは本作をきっかけに復活した。ウェディング・バンドが演奏したり歌ったり、映画で流れてくる当時のヒット曲は以下の通り。

○Billy Idol ”White Wedding”
○The Buggles ”Video Killed the Radio Star”
○Culture Club ”Do You Really Want to Hurt Me”
○The Police ”Every Little Thing She Does Is Magic”
○The Smiths ”How Soon Is Now?”
○The Psychedelic Furs ”Love My Way”
○Thompson Twins ”Hold Me Now”
○Elvis Costello ”Everyday I Write the Book”
○David Bowie ”China Girl”
○New Order ”Blue Monday”
○Musical Youth ”Pass the Dutchie”
○Sugar hill Gang ”Rapper’s Delight”
○Kajagoogoo ”Too Shy”
○The Cars ”It’s All I Can Do”
○Spandau Ballet ”True”
○A Flock of Seagulls ”Space Age Love Song”
○The B-52’s ”Private Idaho”
○Flying Lizards ”Money (That’s What I Want)”
○Dead or Alive ”You Spin Me Round (Like a Record)”
○Depeche Mode ”Just Can’t Get Enough”
○The J. Geils Band ”Love Stinks”
○Hall & Oates ”You Make My Dreams”
○Madonna ”Holiday”
○After the Fire ”Der Kommissar”
○Nena ”99 Luftballons”
○Journey ”Don’t Stop Believin'”
○The Cure ”Boys Don’t Cry”
○Lionel Richie ”All Night Long (All Night)”
○Kool & the Gang ”Ladies’ Night”
○Huey Lewis and the News ”Do You Believe in Love”
○Nucleus ”Jam on It”
○Jan Hammer ”Miami Vice Theme”
○Bruce Springsteen ”Hungry Heart”
○Wham! ”Wake Me Up Before You Go-Go”
○Adam Sandler
“Have You Written Anything Lately?”
“Somebody Kill Me”
“Grow Old With You”
“That’s All”

機内でのクライマックスシーンではあのビリー・アイドルが本人役で登場

予告編

ウェディング・シンガー

ウェディング・シンガー



●この商品の購入はこちらから
●Amazon Music Unlimitedへの登録はこちらから
●AmazonPrimeVideoチャンネルへの登録はこちらから

*日本公開時チラシ
132124_1
*参考/『ウェディング・シンガー』パンフレット
*このコラムは2016年6月に公開されたものを更新しました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

【執筆者の紹介】
■中野充浩のプロフィール
https://www.wildflowers.jp/profile/
http://www.tapthepop.net/author/nakano
■仕事の依頼・相談、取材・出演に関するお問い合わせ
https://www.wildflowers.jp/contact/

Pocket
LINEで送る

あなたにおすすめ

関連するコラム

[TAP the SCENE]の最新コラム

SNSでも配信中

Pagetop ↑

トップページへ