ベン・E・キングを輩出したことでも知られるドリフターズは、洗練されたソウル・コーラスのスタイルを確立した黒人ヴォーカル・グループで、1950年代から60年代にかけて活躍した。
代表的なヒット曲は「ラストダンスは私に」と「アップ・オン・ザ・ルーフ」、そして1964年7月にリリースされた「渚のボードウォーク(Under the Boardwalk)」だ。
(遊歩道の下で)日差しを避けて
(遊歩道の下で)僕らは楽しく過ごす
(遊歩道の下で)人々が上を歩いている
(遊歩道の下で)僕らはここで愛しあう
公園からメリーゴーラウンドの楽しそうな音が聞こえる
売店のホットドッグやフレンチフライを味わってみる
ボードウォークの下、波打ち際で
僕のベイビーとブランケットの上、そこが僕のいるところ
ボードウォークとは木の板を張って作られた遊歩道で、海岸のリゾート地では波打ち際の砂浜に観光客が歩きやすいようにと設置されていることが多い。
強い日差しだけでなく、人の目も避けて潜り込めるボードウォークの下は、若いカップルにとって隠れて楽しいひと時を過ごせる場所だったようだ。
歌詞に出て来る“You can almost taste the hot dogs”(ホット・ドッグを味わってみる)や、“We’ll be making love”(愛しあう)といった言い回しはかなり際どいが、ドリフターズの洗練されたコーラスだったからティーンエージャー向けのポップスとして許されたのかもしれない。
ドリフターズのヒットからわずか2ヶ月後、ローリング・ストーンズはアルバム『12X5』の中でこの曲をいち早く取り上げているが、そこでは歌詞が微妙に変わっていた。
最後のフレーズを”making love”ではなく、”falling love”と歌ったのだ。
当時は不良のイメージで売り出されていたミック・ジャガーだったから、”making love”と歌ったのでは刺激的すぎて、マスコミや大人たちから一斉に非難の声が上がることを見越して変えたのだろう。
その後はオリジナルのドリフターズも、”falling love”と歌い直したヴァージョンを出している。
際立った男臭さが売りだった俳優のブルース・ウィリスが、映画『ダイ・ハード』でスーパースターになる前の年に歌い、イギリスでヒットしたヴァージョンもやはり”falling love”に変えられた歌詞だった。
その翌年には女優しての評価も高いベット・ミドラーが、映画『フォーエヴァー・フレンズ(原題・BEACHES)』で歌った。
ちなみに1990年にカヴァーしたビーチボーイズは、”I wanna take you girl”と、さらに婉曲な言葉に変えている。