かつてはバンドのヴォーカリストとしてカリスマ的な人気を博した若者が、バンド解散後に創作意欲を失い、人里離れた田舎でキャベツを育てながら隠遁生活を送っている。
そんな主人公がひとりの少女との出会いから、新たな曲を生み出すまでを寓話的に描いた映画『月とキャベツ』(監督 篠原哲雄)は、シンガー・ソングライターの山崎まさよしが主演して、1996年末に単館系映画館で劇場公開された。
クライマックスで効果的に使われた主題歌「One more time, One more chance(ワン・モア・タイム ワン・モア・チャンス)」は、山崎まさよしにとって初のヒット曲になり、息の長いセールスを記録した。
それから10年後の2007年、アニメーション映画『秒速5センチメートル』(監督・制作 新海誠)の主題歌として起用されたのを機に、「One more time, One more chance」はアニメファンにも発見されることになる。
緻密に描かれた美しい画面がアニメファンの間で評判になり、『秒速5センチメートル』は7月にDVDが発売されてから徐々に浸透していった。
2007年のアジアパシフィック映画賞では「Best Animated Feature Film」を受賞し、中国や韓国、台湾、香港でも上映されたことからアジア各国にも知られ始めた。
CD未収録だった弾き語りヴァージョンが入った「One more time, One more chance『秒速5センチメートル』 Special Edition」は、通算22枚目のシングルとして2007年3月3日に発売されて、歌に対する評価は再び高まった。
ちょうどその頃、「One more time, One more chance」のカヴァーを収録したアルバムが、意外なところからロングセラーを記録していた。
クラブジャズユニットi-depのナカムラヒロシが、同じくi-depでボーカルを務めるCanaと結成したSotte Bosse(ソットボッセ)が、1990年代のヒット曲をボサノヴァやジャズ風にカバーした『Essence of life』は、インディーズながら若者向けセレクトショップ、ヴィレッジ・ヴァンガードからブレイクしたのだ。
21世紀のカヴァー・ブームの一端を担うことになったそのアルバムには、「島唄」(ザ・ブーム)や「真夏の果実」(サザンオールスターズ)、「世界に一つだけの花」(SMAP)などが取り上げられていた。
男性シンガーの曲を女性がソフトに歌うことによって、歌詞やメロディの素晴らしさに、あらためて気がついたリスナーも多かった。
哀切なテーマが具体的な言葉と画によって、アニメファンや世代下の層にまで届くようになった「One more time, One more chance」は、そこからさらなる広がりを見せ始める。
YouTubeにオフィシャル動画として、弾き語りヴァージョンがアップロードされたのは、2008年12月8日だった。
それから足かけ6年かかって再生回数を伸ばし、10月上旬には遂に1,000万回を越える数字となり、今もその数を着実に伸ばし続けている。
「One more time, One more chance」は、いつまでも色あせないスタンダード・ソングが、時を超えることを証明しただけではない。
世界中の人たちからの書き込みがあるということから、今後は国境や民族を超えて、世界のスタンダードになる可能性も生まれてきている。
歌詞に「♪いつでも捜しているよ どっかに君の姿を 明け方の街 桜木町で」とあるように、この歌はヨコハマを舞台にした歌でもあります。
「月とキャベツ」
「秒速5センチメートル」
●Amazon Music Unlimitedへの登録はこちらから
●AmazonPrimeVideoチャンネルへの登録はこちらから

- TAPthePOPアンソロジー『音楽愛 ONGAKU LOVE』
TAP the POPが初書籍を出版しました!
「真の音楽」だけが持つ“繋がり”や“物語”とは?
この一冊があれば、きっと誰かに話したくなる
今までに配信された約4,000本のコラムから、140本を厳選したアンソロジー。462ページ。
「音楽のチカラで前進したい」「大切な人に共有したい」「あの頃の自分を取り戻したい」「音楽をもっと探究、学びたい」……音楽を愛する人のための心の一冊となるべく、この本を作りました。
▼Amazonで絶賛発売中!!
『音楽愛 ONGAKU LOVE』の詳細・購入はこちらから








