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ブラジルで新たな一歩を踏み出した「上を向いて歩こう~オーリャ・プロ・セウ(Olha pro céu)」

2016.11.28

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2016年7月29日の金曜日と30日の土曜日、リオデジャネイロ市の中心部にある「VIVO RIO」では、日本の国際交流基金の主催で『上を向いて歩こう~Olha pro céu~(オーリャ・プロ・セウ)』が2日間に渡って開催された。

コンサートのタイトルにもなった「Olha pro céu(オーリャ・プロ・セウ)」は、ブラジルで人気を誇るラッパーのエミシーダ(Emicida)と東京スカパラダイスオーケストラが、新たな解釈でレコーディングした「上を向いて歩こう」のタイトルに由来している。

その日の新聞「Jornal O Globo」の文化面には、エミシーダとスカパラの記事が大きく載った。
バリトン・サックスの谷中敦が取材に答えて、エミシーダとのコラボレーションについて、こんなふうに語っていた。

「上を向いて歩こう」という曲は、日本人にとってすごく大事な曲です。
気持ちの上で落ち込んだ時に、歯を食いしばってでも、ニコニコしてでも、がんばって行こうって‥、青年の気持ちでね。
アメリカで1963年に1位になったときに、日本人にもできるんだと勇気を与えてくれた。
そんな希望のメッセージが含まれているし、普遍性があるから新しい世代にも受け継がれてきたと思う。


エミシーダが書き下ろした「Olha pro céu」のリリックは、坂本九が歌ったオリジナルの「上を向いて歩こう」の歌詞へのリスペクトが込められたものだった。


ワインやビールでほどよくくつろいだ雰囲気のライブ会場は、夜8時50分に照明が落ちて暗くなった。
そして場内の大型モニターに坂本九のレコード・ジャケットが映されて、オリジナルの「上を向いて歩こう」が1コーラス流れた。

続いてイギリスのオリー・マーズが2015年に発表した、オノ・ヨーコさんの訳詞による英語版の「LOOK AT THE SKY(上を向いて歩こう)」が、CMヴァージョンで2分ほど紹介された。

そこからスカパラとエミシーダがレコーディングした時の映像に切り替わり、「Olha pro céu(オーリャ・プロ・セウ)」がフェードアウトしてステージの幕が開いた。

ブラジル出身で日本で活躍するマルシアが「上を向いて歩こう」を、ポルトガル語に訳した「Olhando pra cima」をア・カペラで歌ってコンサートが始まった。

ここまでで、すでに4種類の異なる「上を向いて歩こう」が、観客に届けられたことになる。

第1部は人気シンガーのヴァネッサ・ダ・マタのライブだったが、半分以上の曲で聴衆が合唱する盛り上がりとなり、最後はエミシーダを呼び込んで、二人がデュエットして締めくくった。

ステージのセットチェンジの時間には、スカパラが昨年秋にファヴェーラ(貧困地区)を訪れて、子どもたちのブラスバンドと交流した映像が映しだされた。

そして第2部の東京スカパラダイスオーケストラのライブでは、25年以上も海外ツアーを続けているだけあって、広いステージをフルに使った動きで一気に聴衆をスカパラの世界に巻き込んでいった。

Vivo Rioはテーブルと椅子がびっしりと並び、食事や飲み物が提供される会場だったので、最初はおとなしく座って聴いていたブラジル人たちも、途中からどんどん立ち上がってステージ前に出ていく。

美空ひばりの「リンゴ追分」を歌いながらマルシアが登場し、エキゾチックでパワフルなスカのアレンジで披露し、「ふりむけばヨコハマ」では観客に「ヨ・コ・ハ・マ」と日本語でコールさせてともに
楽しんだ。

そしてエミシーダが参加した「Olha pro céu(オーリャ・プロ・セウ)」が始まったが、この日は後半のフリーラップからが圧巻だった。
 
あらゆる人種や文化が交じり合う国、ブラジルで新たな一歩を踏み出した「上を向いて歩こう~オーリャ・プロ・セウ(Olha pro céu)」は、ここからどんな広がり方をするのだろうか。






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