タイガース時代の隠れた名曲といわれていた「風は知らない」が、2018年から19年にかけて行われているツアー〈沢田研二70YEARS LIVE『OLD GUYS ROCK』〉でも歌い継がれている。
そもそも1969年4月にシングルで発表された時は「美しき愛の掟」のB面曲という扱いで、ワンコーラスしか歌詞がない小品といった趣きだった。しかし、間奏をはさんでサビの繰り返しを入れても2分と少ししかないにもかかわらず、ファンの間では当時から好感度がかなり高い曲だった。
それはおそらく沢田研二のソフトな歌声とメロディや歌詞のマッチングが、音楽的にもきわめて相性が良かったからだろう。
この曲のソングライターは、作詞が越路吹雪のマネージャーでもあったベテランの岩谷時子、作曲はモップスの「朝まで待てない」やテンプターズの「エメラルドの伝説」で注目を集めた24歳の若き音楽家、大学を出て間もない村井邦彦だった。
とくに村井の書いたメロディは、ビージーズの名曲「マサチューセッツ」を思わせる牧歌調で、ゆったりと落ち着いた空気感が何ともいえない味を醸し出していた。
前年にタイガースのために「廃虚の鳩」を提供していた村井は、加橋かつみが持っているハイトーンのきれいな歌声を活かして、斬新なヒット曲を生み出したばかりだった。
しかも、それまでのタイガースにはなかったヒューマンな世界を展開し、表現の可能性を大きく広げたとして期待されていた。
「風は知らない」も「廃虚の鳩」と同じ系譜に連なる作品だったが、当時まだ20歳だった沢田研二はあっさりと力まずに唄うことによって、逆に歌に込められた作者たちの思いを際立たせている。
村井邦彦は大学を卒業してまもなく作曲家になったが、テンプターズとタイガースの成功で売れっ子になり、注文が殺到してきたという。
しかしそのうちに「自分が興味のある音楽をやりたい」という気持ちが強くなってきたために、その年には音楽出版社としてアルファミュージックを設立している。
それは作家の発想で自主的に曲を作り、良い楽曲が生まれたらそれを売り込むという、欧米の音楽出版社と同じやり方で新しい音楽に取り組んでいきたいという、真摯な思いがあったからだった。
欧米にはスタンダード曲という多くの人々が長年歌い続けてる曲がたくさんあるのに、なぜ日本には懐メロはあってもスタンダード曲がないのか。
そうした気持ちで1970年に作った「翼をください」は当初、フォークグループ赤い鳥のシングルではB面曲としてレコード化された。
だが後に教育の現場などでも広く唄われるようになり、やがて合唱曲のスタンダードへと成長していった。さらには1998年にフランスで行われたFIFAワールドカップで、日本代表の応援歌に選ばれたこともあって、今ではジャンルを超えたスタンダードになっている。
タイガースの「風は知らない」もB面曲からスタートしたが、ソロになってからも沢田研二が歌い継いでいくことによって、半世紀もの時間が経過しても忘れられることなく、今ではスタンダード・ソングになりつつある。
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