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エレキ・ブームが日本で爆発したアストロノーツとベンチャーズの合同公演

2015.01.10

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エレキ・ブームの前兆は東京オリンピック開催を目前に控えて、日本中が躁状態になっていた1964年の夏に、「太陽の彼方」がヒットしたことから始まるサーフィンブームにあった。

イギリスのビートルズがアメリカでヒット・チャートの1位から5位までを独占して人気が爆発したその時、日本ではなぜかアメリカでも無名だったアストロノーツの曲が大ヒットしていたのである。

洋楽ヒットチャート大事典によれば、1964年の年間100位の上位5曲はこうだった。

1位「ロシアより愛をこめて」(マット・モンロー)
2位「花はどこへ行った」(キングストン・トリオ)
3位「恋のパームスプリングス」(トロイ・ドナヒュー)
4位「恋はすばやく」(バス・バッカス)
5位「太陽の彼方に」(アストロノウツ)

「サーフ・パーティー」を67位に、「ホットロッド・パーティー」を92位に送り込んだアストロノーツは、サーフィンとはまったく縁のない高地にあるコロラド州ボルダーに住む学生たちによって結成された。(注1)

ロックンロールバンドとしてスタートしたアストロノーツは、おりからのサーフィン・ブームにあわせて、1963年に「サーフィンNo.1(BAJA)」でデビュー、かろうじて全米チャートの94位に顔を出したが、その後はまったくヒットに恵まれなかった。

ところが日本ではレコード会社のディレクターによって、アルバムの中から「Movin’」という曲が発見される。
それが「太陽の彼方に」というタイトルでシングルが発売になると、予想をはるかに超えて大ヒットしたのだ。

アストロノーツ太陽の彼方

エコーを聴かせた軽快なエレキサウンドは、日本人の耳に「ノッテケ ノッテケ」とも聞こえて親しみやすかった。

さっそく複数の日本語カバーが作られて、サーフィン・ブームに弾みをつけることになる。

ちなみにこの曲を作ったのは1967年にナンシー・シナトラの「サマー・ワイン」で、作曲とプロデュースを手がけてデュエットするリー・ヘイズルウッドだった。
「サマー・ワイン」もまたアメリカよりも日本にほうが受けたから、メロディー・メーカーとしてのりーが日本人の感性と相性が良かったということかもしれない。


シアトルのローカルバンドだったベンチャーズは1960年、「急がば廻れ(Walk Don’t Run)」でビルボード誌のヒットチャートで第2位を記録するヒットを放っている。

1962年にも初来日していたが、来たのはドン・ウィルソンとボブ・ボーグルの2人だけだった。
当時はまだギター二人のデュオだったのだ。
しかし東芝レコードのイベントに参加したものの、日本で起用されたベースとドラムスが力量不足でまともに演奏できず、バンドの魅力を伝え切れなかった。

日本で人気が出始めたのはアストロノーツの「太陽の彼方に」がヒットした後で、エレキギターのサウンドを前面に出したバンドということから、「急がば廻れ」や「パイプライン」に注目が集まったからだ。

アメリカでの実績は断然上だったので、東芝レコードも力を入れて1965年1月5日に勝負曲、「ダイヤモンド・ヘッド/朝日のあたる家」の発売を準備した。

日本でエレキブームが爆発したのは1965年1月3日から行われた、アストロノーツとベンチャーズの来日合同公演だった。

最終日となった1月10日の東京厚生年金会館2回公演は超満員になり、ベンチャーズはモズライトのギターによるダイナミックなサウンドで大変な評判を呼んだ。

こうして「ダイヤモンド・ヘッド」も大ヒット、一気にベンチャーズはブレイクして脚光を浴びた。


最終公演のセットメニューは下記の通りだった。

1.ベンチャーズ・メドレー
(ウォーク・ドント・ラン~パーフィディア ~木の葉の子守歌)
2.ドライヴィング・ギター
3.ブルドッグ
4.パイプライン
5.アパッチ
6.10番街の殺人
7.ウォーク・ドント・ラン’64
8.バンブル・ビー・ツイスト
9.ワイプ・アウト

アンコール
10. キャラバン

この日のライブはレコーディングされて「ベンチャーズ・イン・ジャパン」というアルバムになり、ビートルズをはるかに凌ぐセールスを記録した。

そこで共演した寺内タケシとブルージーンズの活躍もあって、1965年は日本中にエレキ・ブームの熱気と勢いが広がっていく年になった。

ベンチャーズライブ・イン・ジャパン

(注1)ボルダーは日本のマラソンランナーなどが高地トレーニングを行うことで、長距離ランナー達の聖地としてよく知られている。

53年目の今年も来日ライブを行うベンチャーズ、「京都の恋」に見る日本との相性の良さ

アメリカよりも日本で受けたナンシー・シナトラのB面ヒット曲「サマー・ワイン」



ザ・ベンチャーズ『ザ・ベンチャーズ コンプリート・ライヴ・イン・ジャパン’65』
EMIミュージック・ジャパン

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