「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

Extra便

あの頃洋楽ファンが夢中になった“パワーバラード”の名曲②

2023.01.31

Pocket
LINEで送る

「パワーバラード」の世界から名曲を厳選


80年代に洋楽デビューした人に捧げるこの企画。音楽雑誌のグラビア切り抜き。FMのエアチェックとカセットレーベル作り。輸入盤のジャケットの匂い。MTVを眺め続けた深夜帯。プログレハードやヘヴィメタル/ハードロックのトキメキ。

アルバムを買うと、必ず1曲は入っていたバラードナンバーを楽しみにしていた人も多いはず。今回はそんな「パワーバラード」の世界から名曲を厳選してみました。ドライブや通勤タイム、懐かしの音源探しに活躍すること間違いなし!! (選曲/中野充浩)

エイリアス「More Than Words Can Say」(1990年・全米2位)
シェリフとハートの元メンバーらによるスーパーグループ。と言ってもピンと来ないかもしれない。シェリフは1988年に「When I’m with You」が全米ナンバーワンになったカナダ出身のロックバンド。だがこの時既にバンドは解散しており、1982年にリリースした曲の特大リバイバルヒットだった。エイリアスのこの曲はまさにその続編的な響き。力強く美しい。まさにパワーバラードの見本。忘れられた名曲でもある。


ボン・ジョヴィ「Bed of Roses」(1993年・全米10位)
日本で人気が先行した彼らは、1986年のサード作『Slippery When Wet』で遂に全米を制覇。続く88年の『New Jersey』はデフ・レパードやガンズ・アンド・ローゼズらとチャートのトップを入れ替わり争った。4年後の『Keep The Faith』リリース時はグランジやオルタナロック全盛期。80年代に栄華を極めたHR/HMはアウトなもの、時代遅れなものとされる中、ボン・ジョヴィの信念・美学を感じさせるこの曲は本当に感動的だった。彼らの数あるバラードの中でも一番の出来だろう。


ガンズ・アンド・ローゼズ「November Rain」(1992年・全米3位)
1987年にリリースしたアルバムが次第に評判を呼び、その後1年掛りでチャートのトップに到達。80年代後半の音楽シーンは彼らの話題が絶えなかった。そして4年後に同時リリースされた新作2枚はまさに王者の風格。唯一、グランジ/オルタナ勢に対抗できたHR/HMバンドだった。この曲はガンズらしいパワーバラード大作。スラッシュのギターソロが泣ける。


エアロスミス「Angel」(1987年・全米3位)
70年代の活躍が嘘のように80年代に入って低迷したエアロスミス。それもそのはず、メンバーたちはドラッグに溺れて身も心もボロボロで廃人寸前だった。そんな彼らに転機が訪れたのが1986年。ランDMCの「Walk This Way」で再びクールな存在に返り咲く。87年には大復活作『Permanent Vacation』をリリースして真の全盛期に突入していく。そのアルバムに入っていたのがこの曲だ。


デフ・レパード「Love Bites」(1988年・全米1位)
アイアン・メイデンと並んでNWOBHMシーンから登場してきたイギリス出身のデフ・レパード。当初からのアメリカ狙いもあり、1983年のサード作『Pyromania』で大ブレイク。全米だけで1000万枚を売った。続く『Hysteria』はナンバーワンとなり、こちらも1200万枚という驚異的なセールスを記録。このパワーバラードもシングルカットされて、あっという間にチャートのトップに上り詰めた。


ホワイトスネイク「Is This Love」(1987年・全米2位)
英国/欧州色が極めて強かったホワイトスネイクが1987年に全米を制覇した時は驚いたものだが、本人たちに言わせればそれは狙い通りの当然の結果だったのだろう。『白蛇の紋章〜サーペンス・アルバス』と呼ばれる大ブレイク作からは、大人も聴けるこの落ち着いたパワーバラードが誕生。今聴いても味わい深い名曲。80年代の風景が絵画のように蘇ってくる。


クワイエット・ライオット「Thunderbird」(1983年)
アメリカのヘヴィメタル・ムーヴメントは、このLA出身のクワイエット・ライオットのアルバム『Metal Health』がナンバーワンになった時から始まった。70年代後半のアメリカでは見向きもされず、日本のレコード会社からデビューした経験を持っていただけに、当時を知るファンはこの快挙に涙した。なぜならあのオジー・オズボーンの相棒となったランディ・ローズが在籍したバンドでもあったからだ。そのランディは1982年に飛行機事故で死去。ラストに収められたこの曲はランディに捧げられた。それだけで泣ける。


ネルソン「Only Time Will Tell」(1991年・全米28位)
R&R期のスター、リッキー・ネルソンの双子の息子たちが結成したネルソン。その美形ルックスのせいもありアイドル的な人気が先行したが、本当はカントリー・ミュージックを愛する本物志向だった。この曲は大ヒットした1990年のデビュー作『After The Rain』に収録されていたバラードナンバー。当時、ジェームス・ディーンを起用したアメリカのジーンズメーカーのCMでも使用されていた。


ヴァン・ヘイレン「Can’t Stop Lovin’ You」(1995年・全米30位)
企画のトリはやはりこれで。Part1から紹介してきたパワーバラード群と比較するとポップな印象で、厳密にはバラードじゃないかもしれない。しかし、これはデヴィッド・リー・ロスが抜けた後、サミー・ヘイガーの加入でダークでヘヴィな志向に10年近く傾いてからの、ヴァン・ヘイレンなりの陽射し、復活的な意味を持ち合わせた曲だったのだ。明るいようで切ない。切ないようで力強い。こんな曲、ヴァン・ヘイレンにしか演れない。聴いているだけで前に進む気持ちになれる。これこそが優れた音楽が放つチカラだ。








パート1はこちらから。

【執筆者の紹介】
■中野充浩のプロフィール
https://www.wildflowers.jp/profile/
http://www.tapthepop.net/author/nakano
■仕事の依頼・相談、取材・出演に関するお問い合わせ
https://www.wildflowers.jp/contact/

Pocket
LINEで送る

あなたにおすすめ

関連するコラム

[Extra便]の最新コラム

SNSでも配信中

Pagetop ↑

トップページへ