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大滝詠一の名作「サイダー’73」から始まった、CM音楽の新時代

2014.09.26

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1970年代にCM音楽で音楽シーンに新風を吹き込んだのは、日本におけるコマーシャルソングの祖と言える三木鶏郎の門下生で、CM音楽のプロデューサーとして活躍していた大森昭男だった。

“CM界のクロサワ”とも呼ばれた映像監督の杉山登志と組んで、主に資生堂のコマーシャルを作っていた大森は、1972年に自らの事務所ON・アソシエイツを発足させてまもなく、はっぴいえんどの大瀧詠一に音楽を依頼する。

はっぴいえんどを聴いた時、すぐに、こういう新しい人たちと仕事がしたいと思いました。色々と感じ入る曲があったんですけど、三ツ矢サイダーの仕事に繋がったのは「ウララカ」です。企画をもらった時、直感的に、その場でこの大滝さんにお願いしようと思ったんですね」


1971年11月20日にセカンド・アルバムの「風街ろまん」を出した後、はっぴいえんどはメンバーそれぞれが新たなる地平目指して活動の幅を広げていた。

細野晴臣と鈴木茂はスタジオでの仕事が多くなっていた。

大瀧詠一は72年の春からソロ・アルバムのレコーディングを始めて、6月にはソロ・シングル「空飛ぶくじら/五月雨」を出している。

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近いうちにどうやら解散するらしいという話も漏れ伝わっていたはっぴいえんどは、結局のところ10月に三枚目のアルバムのレコーディングのために渡米した。

だが、ラスト・アルバムの『HAPPY END』の発売を待たず、12月いっぱいをもって解散する道を選ぶことになる。

解散直前の11月25日、大滝詠一はソロアルバム「大瀧詠一」を発表したが、「ウララカ」はA面の最後に収録されていた。

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大森が「コマーシャルソングをやりませんか」とアプローチしたのは、新年が開けて間もなくのことだったという。

朝11時ぐらいだったと思います。
コマーシャルソングをお願いしたいんですけど、って大瀧さんの自宅に電話をしましたね。
『何でしょう』『三ツ矢サイダーです』。
ちょっと間があって『分かりました』と。
『で、詞はどなたが』『鶏郎門下の伊藤アキラさんです』


伊藤アキラもやはり三木鶏郎の門下生で、「オー・モーレツ!」(丸善石油、現・コスモ石油)や「この木なんの木」(日立の樹)、「やめられない とまらない」(カルビー かっぱえびせん)など、CM業界ではつとに知られる存在で、作詞家としても活躍していた。

若者たちが自作自演で作り始めていたフォークソングについて、”生活歌”という意味では師匠の三木鶏郎が作っていたコマーシャルソングと同じだと捉えていた伊藤は、広告関係者の中ではよく聴いているほうだった。

だからはっぴいえんどの大瀧詠一が作曲して歌うと、大森から電話で伝えられた時も、新しい試みに抵抗はなかった。

だが、大瀧詠一がどこの誰なのかはわからなかった。
はっぴいえんどの知名度は、まだその程度だったのだ。

二回目に大森から電話を受けた伊藤は、大瀧詠一から出ている歌詞の“注文”を聞かされる。

始まりの音は母音の“あ”で始めてくれ、ということでしたね。
三音四音の組み合わせで、最初は“あ”。
自分でも歌う人ですからイメージがあったんでしょうけど、かなり厳しい注文でした(笑)


だが一流の職人だった伊藤アキラが書いた歌詞は、見事に大瀧詠一が出してきた条件を満たすものだった。

「サイダー’73」
あなたがジンと くるときは
わたしもジンと くるんです




「サイダー’73」はコマーシャルソングの歴史に残る名作となり、翌年の「Cider’74」も大好評で、作詞・伊藤アキラ、作曲・編曲・歌が多羅尾伴内こと大瀧詠一のチーム(「サイダー’76」のみ山下達郎)で、5年間も新しいヴァージョンが次々に作られた。

大瀧詠一や山下達郎をいち早く起用して成功した大森は、続いて坂本龍一、鈴木慶一、大貫妙子、井上鑑などと一緒に、時代の先端を行くセンスやサウンドを取り入れてCM音楽に新時代をもたらすのである。

77年「資生堂・サクセスサクセス」(ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)、78年「資生堂・時間よ止まれ」(矢沢永吉)、79年「資生堂・君の瞳は10000ボルト」(堀内孝雄)など、イメージソングの時代が始まると話題曲とCMのタイアップを手がけていく。


(注)引用元は田家秀樹著「みんなCM音楽を歌っていた―大森昭男ともうひとつのJ‐POP」(スタジオジブリ刊)、CM音楽をたどることによって日本の音楽史を綴った労作です。

大滝詠一『NIAGARA CM SPECIAL』
ソニー・ミュージックレコーズ


田家秀樹『みんなCM音楽を歌っていた―大森昭男ともうひとつのJ‐POP』(単行本)
スタジオジブリ (2007/08)

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