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時代を超えて現在を撃つメッセージと演奏~スーパー・ジャンキー・モンキー

2024.02.04

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1993年11月、CBSソニーで国内新人発掘部門を担当していたミュージック・マンの野中規雄は、ニューヨークのライブハウス「CBGB」に来ていた。

ラモーンズやテレヴィジョン、パティ・スミス、トーキング・ヘッズなど、パンクに影響を受けたバンドが出演していたことで知られるCBGBに野中が足を運んだのは、日本で行われたオーディション優勝者に与えられた副賞だった「CBGBで演奏できる権」の立ち合いのためだ。

アメリカのインディーズ・バンドによる街フェスとして始まった「CMJミュージックマラソン」に、日本から参加していたのはオルタナティブ・ロックの4人組、SUPER JUNKY MONKEYである。

地元インディーズ・バンドに混じっての出演だったこともあって、 前のバンドが終わると観客たちは引き上げ始めた。
スーパー・ジャンキー・モンキーのメンバーたちがセッティングを始めるのを見て、まるで期待できないバンドだと思ったに違いない。

ちっこい東洋人の娘っ子を見た客がゾロゾロ帰り始めた。
そこにKeiko のギター!(ビースティーボーイズより凄い)
まつだっっ!! のドラム!(男だか女だかわからんパワー)
大音量に客が続々と戻ってきて最後は大盛況。
ほとんど満員になった客が踊りまくり暴れまくった!


その日のライブが終わったとき、偶然に来ていた3大メジャーのレコード会社キャピトルのA&Rから、「ぜひ、うちと契約してくれ」と野中は申し込まれた。
CBSソニーの契約アーティストだったので、「CBSで決まっている」と断ったが、内心ではいけるという手応えを感じていた。

それだけではなかった。
プロモーターからも、「KISSのオープニングをやってくれ」という誘いが来たのである。
この申し出を野中は喜んだが、「キッス(KISS)!? だっせー!」とメンバーから反対されて断らざるを得なかった。

野中はこのとき、ミュージック・マンならば誰もが一度は思い描く夢、日本のロック・バンドをアメリカに送り込んで成功させるという物語に、間違いなく一歩近づいたことを実感していた。
後にこう回想している。

「このバンドの未来がバラ色に見えた瞬間だった」


1991年にMUTSUMI623(Vo)、KEIKO(Gt)、かわいしのぶ(Ba)、まつだっっ!!(Dr)の4人によって結成されたスーパー・ジャンキー・モンキーは、帰国後の1994年にメジャー・デビューを果たした。
そして女性4人によるガールズバンドとして、オルタナティブ・ロックシーンで注目されていく。

アメリカのCBS傘下にあったインディーズ・レーベル、トライスターでもLPを発売したが反応は良く、アメリカのアニメ主題歌に起用されて好評だった。

野中はトライスターから再三にわたって、プロモーションのために渡米してくれるようにという要望を受けた。
しかしバンドは「アメリカやだ。日本でやる」と、意志は固かった。

バンドのカリスマ・ヴォーカルMUTSUMI623の突然の死によって、スーパー・ジャンキー・モンキーが世界に羽ばたく夢が消えたのは1999年2月のことだ。

それから12年後、野中は「この仕事を何10年もしてきて 何100というバンドに関わって 今でも断言できるのは、私が日本人バンドで最も愛した」のがスーパー・ジャンキー・モンキーだったと述べている。

洋楽のThe Clash、日本のSJM、嘘偽りなくマイ・フェイバリットだから
オーバーじゃなく
当時の世界のロックシーンの最先端に位置したバンドだった。
まさに空前絶後、彼女たちの前にも後にもこんなバンドは
日本で一つも出ていない。と、思う。
150㎝そこそこの、本当のリトルモンスターたち
しかし睦はもういない。
熱狂の会場CBGBも、もうない。


そんなスーパー・ジャンキー・モンキーから15年もの時を経て、あらためて完成させた映像が届けられたのは2015年のことだ。
そこには素晴らしい演奏と、時代を超えて現在を撃つメッセージが込められている。


(注)本コラムは2015年12月11日に公開されたものです。 文中に引用した野中規雄さんの言葉は、下記のサイトでご覧になれます

社長の履Rec書「スーパー・ジャンキー・モンキー」
http://ameblo.jp/shachorirekisho/entry-10192736802.html
スーパージャンキーモンキーな夜|レッツゴー!洋楽研究会
http://ameblo.jp/nihonyogaku/entry-10282294797.html



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