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【インタビュー】bonobos──5人組として新たに始動した彼らが届ける、都市に暮らす大人のためのファンタジー

2017.08.07

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『ULTRA』(2011年)、『HYPER FOLK』(2014年)と、ここ数年充実のアルバムを発表し続けているbonobos(ボノボ)。ボーカル/ギターの蔡忠浩(サイチュンホ)とベースの森本夏子のオリジナル・メンバーに加えて、アコースティック・デュオ=Bopahanaでの活動や、畠山美由紀らのサポートでも知られるギタリストの小池龍平、くるりの元ドラマーでもあり最近では古川麦トリオでも活躍するマルチ・プレイヤーの田中佑司、スカポンタスなどで活動していたドラマー梅本浩亘が正式メンバーに加わり、5人組のバンドとして新たに始動した。

「前作『HYPER FOLK』を作った後、ワントラックのアルバムという形で、管弦楽器を駆使した組曲のような作品を作ろうと思って、それに向けた作業も進めてたんです。だけど辻くん(前任ドラマーの辻凡人/現在はラリーパパ&カーネギーママなどで活動中)の脱退を受けて、新たに5人のバンドとしてスタートすることになったこともあって〈組曲〉はひとまず置いといて、この5人でやれる曲を1から作りはじめたんです」(蔡忠浩/以下同)

この5人なら新しいフェーズへ進めると確信したきっかけとなったのは、彼らの代表曲のひとつである「THANK YOU FOR THE MUSIC」のリアレンジだったという。


「リハーサルのスタジオでディアンジェロやハイエイタス・カイヨーテあたりを聴いたりしながら、ワイワイとセッションしてたんです。そんな中で〈THANK YOU FOR THE MUSIC〉をR&Bに寄せた感じでリアレンジしてみたら、すごく手応えを感じて。メンバー個々のプレイスタイルを打ち出せるし、それぞれに見せ場を作り出せるなって気付いて。ギターの(小池)龍平なんかは、もともとエレキギター弾きじゃないんですよ。サポートで参加してもらってから初めて知ったんだけど、ほとんどアコギしか触ったことなかったっていう。でも、彼のジャズギター的なサウンドが、bonobosの曲によってはすごく合ったし、バンド・サウンドの新たなアイコンにもなる。キーボードの(田中)佑司はクラブ・ミュージックやR&Bも好きで、彼が鍵盤で出してくる和声もスタイリッシュなんです。僕が打ち込みで作った、コードネームもないような、両手じゃ足りないような和声も、響きの良さは残したまま、すっきりトリートメントしてくれたりね。ドラムの梅(梅本浩亘)は10年来の知り合いなんだけど、もともとファンクやレゲエをやっていることもあって、アメリカン・ルーツが基本にあった辻くんのドラムとはまったく違ったタイム感を持ってて。彼が叩くことで、森本さんのベースの聴こえ方がガラリと変わってくる。そういうそれぞれの良さを、俺が手綱を握って全体を見回しながら配分していったら、気持ちいい音になるだろうなって。それにメンバーからも建設的なアイディアがたくさん出てくる」

激しいギター・サウンドにはじまり、カットアップ的なサウンド・コラージュやオートチューンで加工したボーカルが、都会のきらやかな喧騒をイメージさせるカラフルなポップス「東京気象組曲」で幕を開けるニュー・アルバム『23区』。ジャイブ、R&B、レゲエ、ジャズ、アフロ・ビートと多彩なスタイルを聴かせるこのアルバムは、さまざまな思いを抱えた人々が行き交う大都市と、その人々が暮らす郊外の光景を描いていくオムニバス映画のような作品だ。


「曲の長さはコンパクトだけど、その中にプログレッシヴな展開や密度の高い情報量が詰まっているというのは、自分の作家としてのチャレンジ。3分や4分ぐらいの短い時間で、聴いてる人がすごく楽しくなれるようなね。ちょうどこのアルバムを作ってる時期に思ってたことなんですけど、あるライターの方が以前『最近のシティボップと呼ばれる音楽を聴きながら、都市部に住む大人が必要とするファンタジーについて思いを巡らせた』というようなことをツイートしていて。俺もその頃に同じようなことを考えていて。生々しすぎる現実に加えて、今まで溜まっていた汚いものがドバッと表出してきてるような今の世の中で、必要とされるポップ・ミュージックがあるんじゃないかと。昔、シティ・ポップと呼ばれてた音楽は、消費とか虚構といった言葉をイメージさせたけど、今はもっと生活に寄ったものというか、俺にとってはフォーク・ミュージックのようなもので。いくら洒落たことを言ったって、神社の前を通ったらお賽銭投げて手を合わせたり、地域のお祭りに行ったりする。そういう暮らしとちゃんと地続きでありたいって、ここ数作は考えてる。オリエンタルなものじゃなく、普通の日常にある日本の風景を歌ってこそ、今ポップ・ミュージックをやる意味があるって気がするんです」

先述した〈組曲〉のために用意していた曲想を、5人のバンド・サウンドのために仕立て直したという、アルバムのラストを飾る表題曲「23区」は、まさにアーバン・フォークといった味わい深い1曲だ。

「僕は東京の西の方に住んでるんですけど、甲州街道や中央道を帰る、なんてことない夜のダラっとした時間。そういうひと時を楽しめるような音楽になればいいなって思って作った曲。車を走らせていくとだんだん光も少なくなって、なんなら遠くにアルプスの稜線なんかが見えるような。しかも道は渋滞してたりして、爽快感はまったくない〈夜の中央フリーウェイ〉というか(笑)。曲の中に〈Milk & Honeyの国へと続くハイウェイは大渋滞〉ってフレーズが出てくるんですけど、夜の高速道路で混雑してたらもちろん早く帰りたいなって思うけど、みんなテールランプを真っ赤に光らせながら、自分の家族や恋人が住んでいる街へと家路についてるわけじゃないですか。そういうふうにちょっと視点を変えて見ると、同じ渋滞に巻き込まれてる人たちも愛おしく思えてくる」

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「〈Milk & Honeyの国〉って旧約聖書に出てくる言葉だけど、幸せを求めて約束の地へと向かう民族たちの大移動になぞらえてみたりして……ちょっと視点を変えるというか、寛容さっていうのかな。一歩踏みとどまって考えれば、自分もその中の一人なんだから『みんな、がんばろうぜ』って思えてくる。ただただ文句言って終わりっていうんじゃなく、最終的にはポジティブに捉えられるもの──直接的なメッセージを発して何かを変えようというよりは、あじさいが土の成分で花の色が変わるように、音楽によって少しずつ性質が変化していくというか。現実を捉え直すために必要な大人のファンタジー。そんなイメージで、僕は音楽を作ってるんです」


bonobos『23区』

bonobos
『23区』

(P-vine)


bonobos『THANK YOU FOR THE MUSIC (Nui!)』

bonobos
『THANK YOU FOR THE MUSIC (Nui!)』

(ORANGE LINE TRUXXX)




bonobos official website
http://bonobos.jp/


bonobos 日比谷野外大音楽堂 ワンマンライブ
2017年8月12日(土)東京 日比谷野外音楽堂


bonobos、日比谷野音ワンマン映像化プロジェクトのクラウドファウディングを実施中
詳しくはhttps://camp-fire.jp/projects/view/25795を参照ください



*本記事は2016年9月30日に初回公開したものに加筆修正を施し、再掲載しました。

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