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雨の後楽園球場で圧巻のパフォーマンスを見せた1972年のELP

2024.03.09

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エマーソン・レイク・アンド・パーマー(ELP) は、1970年にキース・エマーソンとグレッグ・レイク、カール・パーマーの3人で結成されたイギリスのプログレッシブ・ロックバンドだ。

ELPの実質的なステージ・デビューは、その年の8月29日にワイト島で開催された「第3回ワイト島ポップ・フェスティバル」での演奏で、大観衆を驚かせたELPの壮絶なパフォーマンスとして語り継がれている。

クラシック音楽を大胆に取り入れたムソルグスキー作曲の『展覧会の絵』を、独自の解釈でライブで表現して評判になったのは1971年のことだ。

そして1972年に来日を果たしたELPは7月22日に後楽園球場で約35000人を集めたコンサート、「ロック・エクスプロージョン・スペシャル」を行って日本のロックファンに強烈なインパクトを与えた。

これは前年に開催された激しい雷雨で伝説となった後楽園球場のグランド・ファンク・レイルロード来日公演に続く、歴史的な「ロック・エクスプロージョン・スペシャル」となった。

前年同様、このときも雨の降る悪コンディションで機材の状態も不十分だったにもかかわらず、いかにもイギリスからやってきたロック・スターとしての振る舞いと、全身全霊を込めるかのような気迫に満ちたその日のライブは東京12チャンネル(現テレビ東京)から生中継された。
そしてそのライブ映像が、今では動画で試聴することが可能になっている。


映像は録画されたビデオをマスターにしているため決して良好ではないが、当時の迫力がしっかり記録されている。

後半に入って盛り上がってきたライブで、グレッグが急にB・J・トーマスの「雨にぬれても」を歌い出すと、それが観客席の緊迫感をゆるめて、少し空気が和んだ後でこの日のハイライト・シーンとなる「展覧会の絵」が始まる。(41分10秒~)


最後の「ロンド」では、キースがハモンドと格闘するという恒例のステージ・アクションを披露し、ハモンド・オルガンの鍵盤にナイフを刺して音をキープするという場面になると、日本公演用のために日本刀を使うというサービス精神で、圧巻のパフォーマンスを見せた。

それまでにもジミ・ヘンドリックスのギターに火をつけるパフォーマンスや、ピート・タウンゼントのギターを壊すパフォーマンスといった過激なものはいくつかあったが、日本に来てそういった類のものを披露したはキース・エマーソンがはじめてだったと思われる。

ちなみにこの時のステージは夜8時からの生中継だけでなく当日の深夜にも再放送されたのは、まだ家庭用ビデオがない時代だったからで、コンサートを見に行った人たちには大いにありがたかったようだ。

後楽園球場を埋め尽くした大観衆のほとんどにとって、メンバーの動きなどは遠くで動く豆粒のようにしか見えなかった。
GFRの時もそうだったが、当時はステージはセカンドベースの上に設置されていて、客席はスタンドのみだったのだ。
そのときのことをキースは自伝でこう綴っている。

いろいろな事情で、私たちと観客との間には大きな距離があったが、客がだんだん盛り上がってきている様子が伝わってきたので、私たちも元気づけられた。


ELPは迫力のある演奏で観客に応え、両者の大きな距離を忘れさせるほど会場は熱気に包まれるのだった。

キース・エマーソン『キース・エマーソン自伝』(単行本)
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