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音故知新③〜こうしてR&Bが誕生した

2021.12.28

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今回の音故知新は、R&B(リズム・アンド・ブルース)のルーツに迫ります。
このジャンルは時代と共に洗練され、進化も著しく、その特徴を一言で言い表すのは難しい。
R&Bといえば、後に発展するロックンロールなどにも多大な影響を与え、現代でも様々なアーティスト達が“表現(パフォーマンス)の基礎”としている音楽ジャンルである。
黒人系大衆音楽として今や世界中で愛されているこの「R&B」という呼称は、ビルボード誌の編集者だったジェリー・ウェクスラーというユダヤ系白人の男によって作り出されたといわれている。
後にアトランティックレコードの経営者となるウェクスラーがこの呼称をつけるまでは、一切の黒人音楽は「レイスミュージック」と呼ばれていた。
1920年代のブルースのレコードにはレイスミュージックと記されており、その他ジャズやゴスペルなども含めてあらゆる黒人音楽がそのように呼ばれていたのである。
それまではビルボード誌でも黒人音楽のチャートを“レイスミュージック・チャート”として発表していたという。
しかし1947年の或る週末「もう、こういう名前で呼ぶ時代ではないだろう」「何か違う名前で呼ぼう、週末の間に皆で考えよう」と、ビルボード誌編集部で話が出たのをきっかけに、次の火曜日にウェクスラーが「R&B(リズム・アンド・ブルース)っていうのはどうだろうか?」と提案し、それが採用されたというのだ。






それともう一つ、このR&Bというジャンルの誕生にはラジオの存在が深く関わっていた。
第二次世界大戦後、全米に白人経営による黒人音楽を流すラジオ局が爆発的に増加したという。
連邦通信委員会によってそれまで規制されていたラジオ局の数が緩和されたのだ。
テレビの普及と共に、中流階級の白人を中心に“ラジオ離れ”が進む。
ラジオは少しずつマイノリティーに特化したメディアとして生き残りをかけるようになる。
小規模なラジオ局はレコードを用いた番組編成に慣れており、DJ(ディスクジョッキー)の重要性が高まっていったという。
リスナーの趣向を見極めつつ強烈な個性で番組を率いるDJが、レコードのセールスマンでありヒットを作り出すキーパーソンとなっていた。


──それは1951年の夏の出来事だった。
オハイオ州クリーブランドで『レコード・ランデヴー』というクラシックレコード専門番組を担当していたDJアラン・フリードは、自身の番組を『ムーンドッグズ・ロックンロール・パーティー』という名前に改変する。
彼はその数週間前に地元レコード店に招かれ、白人のティーンエイジャー達が店内放送で流れるR&Bに合わせて楽しく踊っている場面を見かけて衝撃を受けたという。
そのことをきっかけに、彼はR&Bを専門に放送するラジオ番組を作ることを決心したのだ。





彼が新たにスタートさせた番組では、白人向けの流行歌には目もくれず、チャック・ベリーやリトル・リチャード、レイ・チャールズといった黒人ミュージシャンのレコードをヘビーローテーションで放送し、自らを“ムーンドッグ”と名乗り、流す曲のほとんど全てを「ロックンロール」と呼んで紹介した。
こうして彼は、黒人音楽を白人向けの番組で流した最初の白人DJとなったのだ。
その放送は深夜帯でありながら大きな反響を呼んだという。
この「ロックンロール」とは、もともと黒人の間で使用されていたスラングで、はじめはセックスを示唆するものだったが「楽しい時を過ごす」「パーティーをする」「ダンスを踊る」などの意味を持つようになり、ブルースやジャズの歌詞中に表れるようになったものである。
1950年代初めからはR&Bの歌詞にも使われるようになるが、いずれにせよそれは当時の(特に中産階級の)白人にとっては聞き馴染みのない表現だった。
フリードは黒人ミュージシャンによる楽曲を、白人の若者にとって新鮮でクールな響きを持つ「ロックンロール」という名前に呼びかえたことで広く紹介することに成功したのだ。
──時を同じくして、黒人音楽のレコードを扱うインディペンデントのレーベルがアメリカの各地に創設されてゆく。

アトランティック(ニューヨーク)
チェス(シカゴ)
キング(シンシナティ)
モダン(ロサンゼルス)
アラディン(ロサンゼルス)
スペシャリティ(ロサンゼルス)
サヴォイ(ニューアーク)

1950年代初頭までは、この7つのレーベルで製作されたレコードがR&Bチャートの2/3を占めていたという。
1960年代になるとジェームス・ブラウンが“ファンク”という新たなスタイルでチャートを駆け上る一方で、オーティス・レディングやサム&デイヴを代表とするスタックスレーベル、そしてマーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダーを代表とするモータウンレーベルも加わり、R&B黄金期の到来を迎える。
程なくして、この内2つのレコード会社が世界的な規模にまで成長することとなる。
一つはワンマン黒人社長、ベリー・ゴーディー・ジュニアが築き上げたモータウンレコードで、もう一つが白人経営陣が築き上げたアトランティックレコードだった。
実はこのアトランティックの創設者が、駐米トルコ大使の息子アーメット・アーティガン(トルコ人)だったということは、あまり知られていない。

──R&Bのルーツを辿るとブルースやゴスペル(黒人霊歌)、そしてジャズに行き着く。
その音楽性や演奏形態は、時代や各々のミュージシャンによって一つの枠に収まらないのもこのジャンルの特徴である。
R&Bが登場した50年代は、黒人音楽がより自由で大衆性の高いポップミュージックとして成熟しつつあった時期だった。
1960年代に入ると公民権法の成立をはじめとする黒人の意識向上を受け、ビルボード誌の黒人ポップチャートの名称が一度「ソウル」という呼び名に改められる。
1970年代末のディスコブームによって黒人音楽と白人音楽の垣根が曖昧になってしまい、再度黒人の作る音楽を区別するため「R&B」という名称が復活する。
そして1980年代以降は、再び黒人ポップミュージック全般を表す言葉として「R&B」という呼称が定着するようになってゆく。







こちらのコラムの「書き手」である佐々木モトアキの音楽活動情報です♪
宜しくお願い致します。







『山部“YAMAZEN”善次郎×佐々木モトアキ ダブルネーム弾き語りTOUR “ちょっと長い関係の歌旅2022”】


1月15日(土)八幡DELSOL café
1月22日(土)福岡ROCK食堂(昼公演)
1月22日(土)福岡ROCK食堂2階Honey Bee(夜公演)
1月23日(日)行橋Rock ‘n Roll Bar Memphis 
1月28日(金)東広島pasta amare 
1月29日(土)大阪 新世界ヤンチャーズ
1月30日(日)和歌山OLD TIME
2月5日(土)久留米 農と音2号店 
2月6日(日)佐賀 雷神 
2月18日(金)横浜THUMBS UP
2月19日(土)静岡・御前崎Cook House椿
2月20日(日)名古屋ROLLINGMAN
2月22日(火)金沢JealousGuy
2月23日(水・祝)新潟Mush
3月4日(金)沖縄・コザ CROSSOVER CAFE’ 614
3月5日(土)沖縄・那覇Drunk CINDERELLA
3月6日(日)沖縄・宮古島 雅歌小屋
3月19日(土)下北沢ニュー風知空知
3月20日(日)茨城・水戸Jazz Bar Bluemoods
3月21日(月・祝)埼玉・所沢MOJO
3月25日(金)広島LIVE café Jive
3月26日(土)岡山Desperado
3月27日(日)徳島Music Bar Ricky
4月15日(金)小郡ジラソーレ
4月16日(土)熊本八代7th chord 
4月17日(日)大牟田 陽炎
4月21日(木)仙台HIGHBURY
4月22日(金)福島Harvest
4月23日(土)岩手・二戸 HOUSE OF PICNIC 
4月24日(日)秋田・湯沢BASEMENT
4月30日(土)福岡Bassic.(ライブ&スペシャルスライドショー)

↓チケットご予約&公演詳細・共演者情報はこちら
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12713121312.html






【歌ものがたり2022春〜雨ニモマケズ風ニモマケズ】


1月16日(日)長崎・思案橋ブラックリスト
2月8日(火)福岡・大牟田キャラクターBAR(調整中)
2月12日(土)東京・高円寺MOONSTOMP   
2月13日(土)埼玉・川越 大黒屋食堂  
2月26日(土)福岡・薬院 遊来友楽 
2月27日(日)北九州・黒崎 居酒屋 中村屋
3月12日(土)群馬・前橋 呑竜横丁  ※詳細未定
4月2日(土)兵庫・宝塚 ※会場・詳細未定
4月3日(日)京都・四条大宮高辻 夜想 ※詳細未定
4月9日(土)茨城・古河LIVESTATION ”L” ※詳細未定

↓チケットご予約&公演詳細・共演者情報はこちら
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12714724886.html





佐々木モトアキの楽曲「You」のミュージックビデオです♪
映像編集、ポートレート(写真)撮影共に、佐々木モトアキ本人が手掛けております。
とてもシンプルな技法ですが、何よりも登場する皆さんの表情が素敵です✨
人が“目を閉じている”表情。
その“瞼(まぶた)に浮かんでいる”誰かの顔。
繋がってゆく“一人ひとりの想い”が、100通りの、いや1000通りのドラマを描いてくれています。





佐々木モトアキ
執筆、動画編集、音楽・食・商品・街(地域)に関わるPRなどなど…様々なお仕事承ります。

例えば執筆・編集のお仕事として、、、
「ロック」「ジャズ」「ブルース」「R&B」「シャンソン」「カントリーミュージック」「フォークソング」「歌謡曲」「日本の古い歌」など、ほぼオールジャンルのページ企画・特集に対応いたします。
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音楽以外のライティングとして、WEBページの作成・リニューアル、各種パンフレット作成に伴う「店舗のご紹介」「メニューご紹介」「企業・会社のご紹介」「商品のご紹介」などなど様々なPRに関わるお仕事も承ります。


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あらゆるものに存在する、ルーツや“人の想い”を伝えながら「誰が読んでもわかりすい読み物」をお作りいたします✒︎
お気軽にご依頼のご相談・ご連絡ください♪
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090-2669-2666

【佐々木モトアキ プロフィール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12648985123.html

【TAP the POP佐々木モトアキ執筆記事】
http://www.tapthepop.net/author/sasaki

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