VIDEOTAPEMUSIC──古いVHSや街の片隅に残された生活の痕跡をモチーフに、新たな情景を描き上げる怪作

リサイクルショップや閉店したレンタルビデオ屋で蒐集したVHS、実家のホームビデオに記録された映像などからサンプリングしては、新たな物語性を孕んだ映像／音楽作品へと換骨奪胎していくVIDEOTAPEMUSIC。

2015年に発表した2ndアルバム『世界各国の夜』は大きな反響を集め、翌年には配信限定シングル『Sultry Night Slow』や、映画『バンコクナイト』トリビュートとして坂本慎太郎と12インチ『バンコクの夜』を共作。また並行して、映像作家としてcero、坂本慎太郎、クレイジーケンバンドなどのMVをディレクションするなど、精力的な活動を展開してきた。

約2年ぶりのオリジナル・アルバムとなる『ON THE AIR』。〈放送中〉を意味するタイトルの本作には、思い出野郎Aチームの面々や荒内佑（cero）、LUVRAWこと鶴岡龍（トークボックス）、フィメール・ラッパーのNOPPALらがゲスト参加。

坂本慎太郎が描いたジャケット画のようにラヴァーズロック、ダブ、スウィング、ルンバ……と、トロピカルでレイドバックした風合いを打ち出しながらも、どっぷりエキゾで時空を超える脳内トリッピンな前作の印象とは一線を画す。これまでと同様にVHSからのサンプリングを基にした手法に加え、郊外の街を歩き回ってフィールド・レコーディングした素材や、目にした風景やその場の空気から感じ取ったものをモチーフにして作曲していったという制作方法の変遷も影響しているのだろうか、音の中に浮かび上がってくるさまざまな時代のさまざまな地域で営まれていた生活の痕跡が、現代に生活を送る人たちの心の深淵にあるさまざまな想いとチューニングが合っていくような感覚を味わった。