TAP the ROOTS

ヒア・カム・ザ・レイン・アゲイン〜デジタルポップで奏でる心理的SMプレイ

2017.03.23

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 1981年にデビューしたアニー・レノックスとデイヴ・スチュワートのデュオ、ユーリズミックスは、神秘的なグループだった。

 まず、バンド名である。
 オーストリアの神秘思想家ルドルフ・シュタイナーによって提唱された舞踏芸術、オイリュトミー<eurythmy>。言葉や音楽をダンスに変換して表現するものだが、幼少時代にシュタイナー教育を受けていたアニー・レノックスがオイリュトミーをヒントに、この一風変わったバンド名を考えたと言われている。
<eu>は美しい、<rythmos>はリズム、というギリシア語である。このギリシア語を英語読みすると、ユーリズミーとなるのだ。

eurythmics-004

 次にアニーとデイヴの関係である。
 ふたりが出会ったのは1970年代。アニーはデイヴが暮らしていた街で働くウェイトレスだった。ほどなく恋仲になったふたりは、ザ・ツーリスツというバンドを結成する。このグループは「二人だけのデート」というスマッシュ・ヒットを残しただけで解散し、アニーとデイヴはユーリズミックスを結成するのだが、ここでふたりは「二人だけのデート」をやめてしまうのである。
 ユーリズミックスとして活動するにあたり、あえて恋人同士の仲でいることをやめたのか、はたまたふたりの恋が醒めたのかは、わからない。だが、この微妙な関係が、ユーリズミックスの楽曲に不思議な緊張感とパッションを与えているのである。

 1983年。アメリカ進出を果たしたふたりは「スウィート・ドリームス」をヒットチャートのトップに送り込んだ後、「ヒア・カムズ・ザ・レイン・アゲイン」を発表する。


ほら、また雨が降ってきた

 タイトルであり、曲の歌い出し部分でもあるこの歌詞は、アニー・レノックスがニューヨークのホテルの部屋の窓から外を眺めながら、口にしたセリフだった。
 同じ部屋には、キーボードで新しいリフを試し弾きするデイヴ・スチュワートがいた。
「ダウンタウンで手に入れたカシオのキーボードを弾いていたのさ。AmからF、Gといったシンプルなコード進行のリフだよ。そのリフに、アニーの言葉がかぶさってきたんだ」と、デイヴ・スチュワートは語っている。


ほら、また雨が降ってきた
私の頭に降る雨は思い出のよう
私の頭に降る雨は新しい感情
解き放たれた風の中を歩きたいのに
恋人同士のように話したいのに
あなたの海の中に潜りたいのに
あなたとふたり、雨の中

 アニー・レノックスは自らつぶやいた言葉の後に、そんな歌詞をつなげてみせた。


話しかけて
恋人たちがするように
一緒に歩いて
恋人たちがそうするように

 エレクトリック・ポップに秘められた演歌のような女の想い。
 そして、そんなサウンドは日本でも人気を博したのである。



Eurythmics『Touch』
RCA Records

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