TAP the SCENE

アウトサイダー〜渋谷の街で1本の青春映画が公開されて若い世代の間で伝説になった

2016.08.27

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映画館の暗闇から明るい陽射しの中へ踏み出した時、俺は二つのことを考えていた……


真っ白なノートに主人公ポニーボーイがそんな言葉を綴り、夕陽に染まったスクリーンから「Stay Gold」が流れ始めた時の感動を今でも覚えている。ティーン主役映画=脳天気なコメディ路線が主流だった時代に、「硬派でまともな青春」が突然目の前に映し出されたのだから。1983年9月のことだった。

その年の一番の話題は、春に開園したばかりの東京ディズニーランド。まさにアメリカ文化の象徴と言えたこの空間に、大人から子供まで誰もが夢中になっていた。しかし、80年代という新しい時代の中で呼吸する当時のティーンたちが本当に求めていたのは、純真無垢なファンタジーよりも「そこにあるリアル」だった。

本国アメリカでは、社会の矛盾やどうしようもない生活環境に戸惑いながら生きる自分たちの気持ちをストレートに表現するムーヴメント、“YA(ヤング・アダルト)”が台頭していたが、それは似たような環境におかれていた日本の都市部の中高生たちの心情にも当然シンクロした。

この映画『アウトサイダー』(The Outsiders/フランシス・コッポラ監督/1983)に登場するのは、すべて10代。
ダラス(マット・ディロン)やチェリー(ダイアン・レイン)以外は、当時ほとんどは無名役者(アウトサイダー)たち。その中にはエミリオ・エステベスやラルフ・マッチオ、ロブ・ロウ、そしてあのトム・クルーズも出演していた。

舞台はアメリカのスモールタウン。恵まれない環境で生きつつも、仲間たちと明日の希望を信じて生きている“グリース”の少年たち。敵対する金持ちチーム“ソッシュ”たちとのトラブルが原因で、物語は思わぬ方向に。主人公ポニーボーイたちは身を隠すのだが……青春は儚く過ぎていく。

彼らはこの映画を機に“YAスター”となり、映画雑誌の人気投票は彼らで独占され、『アウトサイダー』は日本でもこの年最も支持された作品となった。

そして、スティービー・ワンダーが歌った余りにも美しく、聴く者すべての心を打つ主題歌「Stay Gold」は、レコード化がされないという異例のままラジオ局にリクエストが殺到して(今では彼のベスト盤に無事収録。もしレコード化されていれば、間違いなくBillboardチャートで1位になってこの年最大のベストセラーの一つになっていたことだろう)、それを受けて日本人歌手(タイロン橋本)によるカバー盤まで発売されるほどの熱気ぶり。

スーザン・ヒントン(この映画ではナース役で特別出演している)の原作小説も文庫本発行(集英社)されたり、青春映画自体がブームとなって、80年代を通じて大量に制作公開されるようにもなった。

さらに特筆すべき点として、街カルチャーへの影響がある。例えば、数年後に起こった東京・渋谷のアメカジチームやセンター街チーム現象はその一つだったのではないだろうか。仲間意識・ファッション・歩き方まで、まるで映画から飛び出してきたかのような世界が、80年代後半の渋谷では確かに“上映”されていた。

たった90分の物語が、ある世代を魅了する。
そしてそれらが実際に街でヴィジュアル化されて社会現象にまでなったのには、やはりこの映画には一貫したまともなスピリットが息づいていたからだと思う。とにかく、奇跡的なくらい素晴らしすぎる作品だったのだ。

映画のクライマックス。主人公が死んでいく友達から掛けられる言葉。

夕陽を眺めるその心が黄金なんだ。その気持ちをずっと持ち続けてくれ


あれから30年以上経った現在。今でも街のどこか薄暗い片隅で、こうした青春の美学がひっそりと囁かれていることを心から願って。(中野充浩)

オープニング
*この映画は最初と最後が同じシーンで繋がっている。つまり回想の物語。エンディングでも「Stay Gold」が流れる。


*「Stay Gold」収録のサントラ盤も公開30周年を記念して2013年にリリース。
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『アウトサイダー』


*日本公開時のチラシ
スクリーンショット(2014-06-24 23.08.44)
*このコラムは2014年7月9日に初回公開されました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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