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ロケットマン〜珠玉の名曲を送り出した作曲家エルトン・ジョンと作詞家バーニー・トーピン

2024.03.25

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『ロケットマン』(Rocketman/2019)


エルトン・ジョンの半生を描いた映画『ロケットマン』(Rocketman/2019)が公開された。

2018年に大ヒットした同じ英国人ミュージシャン、フレディ・マーキュリーの『ボヘミアン・ラプソディ』の後だけに賛否両論はある様子。でも自腹鑑賞してきた感想は、観る者がどこに軸を置くかによって楽しみ方がいかようにでも変わり広がる作品だということ。

物語はエルトンの幼少期からデビュー時期、そしてアルバム7作連続1位という黄金時代を築き上げた1970年代と嵐が去った後の1983年の姿を描く。つまり、派手な衣装とメイクのポップスター街道真っ只中と、それ以前・直後のエルトン。90年代以降の特大ヒットを入口にした世代には疑問だらけかもしれないが、ソングライティングにおける生涯の相棒バーニー・トーピンとの関係性を見れば、この時代設定以外はあり得ない。

エルトン・ジョンが世に送り出した珠玉の名曲の数々は、作詞家バーニー・トーピンなくして生まれなかった。まずバーニーが歌詞を書き上げ、それからエルトンがピアノで曲をつける。70年代にリリースしたアルバムのブックレットには二人が並んだ写真がメインに登場することが多く、いかに強い絆で結ばれたソングライターチームであったかが分かる。

最初に歌詞をもらうんだ。彼が曲のシナリオを書いて、僕がそれを仕上げるという変わった形を取っている。彼が歌詞を書くのにどれくらい時間が掛かっているか分からない。尋ねたことがないからね。でも歌詞を受け取ると、それをすぐに理解できれば、もうキーボードに手を置いて開始する。大抵、できるまで長い時間は掛からない。


両親から満足な愛を得られなかったこと。同性愛者のポップスターとなり、孤独な人生を歩んでいたこと。その同性の恋人から金銭的に利用されてきたこと。アルコール、ドラッグ、過食といった依存症の悪夢にうなされてきたこと……ショッキングな場面が流れていく中、バーニーとの出逢いや創作活動、ブレない友情こそが、映画『ロケットマン』の真髄だ。

製作総指揮を担当したエルトンは、この映画で正直であることに拘った。「彼はこんなに素晴らしかった。こんなに偉大だった」という描写だけは避けたかったという。

この映画を通じて理解してほしかったのは、名声と引き換えになった途方もない代償、子供時代が自分に与える大きな影響、中毒や自分の行動が引き起こす苦しみを、うまく言葉にできないことによる孤独の大きさだ。

何より大切なのは正直であることだと気づいてからは、苦しまなくなった。正直であることが僕の答えで、自分の一番暗い秘密を表に出し、子供の頃からずっと抱えていた重荷を下ろす。吐き出して、語るんだ。


また、この映画の特徴は曲が年代順に登場しないことにある。「Tiny Dancer」「Don’t Let The Sun Go Down On Me」「Goodbye Yellow Brick Road」といった代表曲のほとんどは歌詞の内容に合わせ、物語を進めるための手法として使われる。さらに俳優自らが歌い、現実離れした演出も含めて「ミュージカル・ファンタジー」というべき作品となっている。

見どころは多い。非凡な才能がリビングルームでひっそりと開花する少年時代。レジナルド・ドワイトからエルトン・ジョンへの自己革命。誰もが知る「Your Song」誕生の瞬間。中でもトルバドールでの「Crocodile Rock」を披露する伝説のステージは、音楽のチカラが圧倒的な臨場感で迫って来る名シーンの一つ。

エルトンとバーニーのコンビは1976年の『Blue Moves』で解消されるが(次に出したアルバムタイトルは『A Single Man』だった)、1983年の『Too Low for Zero』で完全復活。個人的には、MTV時代に合わせた同年のビデオクリップ「I’m Still Standing」の見方が変わった。


映画の予告編


こちらは本物のエルトン・ジョンのMV


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*日本公開時チラシ

*参考・引用/『ロケットマン』パンフレット
*このコラムは2019年9月に公開されたものを更新しました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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