マイトガイ

TAP the SONG

追悼・船村徹~日本で最初にヒットしたロックンロール・ナンバー「ダイナマイトが百五十屯」の破壊力②

2017.02.17

1958年に「ダイナマイトが百五十屯」が発表された時にはそれが日本語のロック第1号の楽曲として、21世紀にまで受け継がれることなど誰にも想像できなかったにちがいない。

小林旭の研究家でもあった故・大瀧詠一は「ダイナマイトが百五十屯」の破壊力について、料理にたとえてこんな解説をしている。

アキラの曲をよく聴くと「監獄ロック」と「16トン」などをブツ切りにして熱湯のナベにぶち込んで、16トンというケチな量ではなく、100屯の大根や山芋を一緒に煮込んで50屯の味噌で味付けをしたような、とにかく豪快さと爽快さを感じる。


この楽曲が作られたきっかけは若手の映画スター候補生のなかで、少し頭角を現してきた小林旭が歌った鼻歌を日本コロムビアの文芸部長だった目黒健太郎が、日活の撮影所で偶然に耳にしたことだった。

美空ひばりの映画主題歌のほとんどすべてを制作したディレクター、目黒が”声が面白い”と思ったそのひらめきから歴史が作られていく。
小林旭が著書「熱き心に」(双葉社)のなかでこう語っている。

「キミは面白い声を出す人だねえ。どう、昼休みに一緒に食事をしながら、少しキミの話を聞かせてくれないか?」
突然の申し出だったんだ。
でも、当時の俺はまだそれほどの給料を貰っていなかったから昼メシの提案が有難かったわけよ。
「じゃあ、お言葉に甘えてご馳走になりますよ」
それで昼メシを食いながら話しているうちに、妙な展開になってきてね。
「キミ、レコードを吹き込みませんか?」


美空ひばりを筆頭に日本を代表する人気歌手の半数近くを有していたレコード会社で、目黒は現場のディレクターをたばねている制作者のトップだった。
小林旭が日本コロムビアを訪ねると栃木訛りの若い作曲家、船村徹がレッスンのために待っていた。

栃木県生まれの船村は東洋音楽学校のピアノ科を卒業後に作曲を目指して、キングレコードの春日八郎が歌った「別れの一本杉」(1955年)がヒットした。

コロムビアに移籍したのは翌年のことだったが、そうそうたる先輩作曲家が揃っているなかでは駆け出しの若手だった。

それから1年数ヶ月の試行錯誤の期間を経て、1958年9月に小林旭のデビュー曲「女を忘れろ」が発売される。

マイトガイ2

印象的なハイトーン・ヴォイスが好評だったので、第2弾として作られたのが「ダイナマイトが百五十屯」である。
当時の音楽シーンはロカビリー・ブームの真只中にあり、ロカビリー三人男の平尾昌晃、ミッキー・カーチス、山下敬二郎の人気が爆発していた。

彼らが歌っていたのはエルヴィス・プレスリーの「ハートブレイク・ホテル」やポール・アンカの「ダイアナ」、ジーン・ヴィンセントの「ビー・バップ・ルーラ」などアメリカのヒット曲のカヴァーだ。
しかし「ダイナマイトが百五十屯」は作曲が船村徹、作詞が関沢新一のオリジナルだった。

大瀧詠一はそこを高く評価した。

日本初の(成功した)ロックンロールのオリジナルである「ダイナマイトが百五十屯」は、詞・曲・歌唱が奇跡的に融合され爆発している”土着ロック”の最高傑作である。
しかし、当時は作者も歌手も制作側も、それほどのものとまでは気がついてはいなかった。
それが同時期に世の中で吹き荒れていたロカビリー・ブームと底辺ではつながっていることに誰も気がつかなかった。


発表から20年以上が過ぎてから、ほとんど忘れられていた「ダイナマイトが百五十屯」をビートの効いたロックンロールにアレンジしてカヴァーし、新たな生命を吹き込んだのは甲斐バンドだった。

「ダイナマイトが150屯」甲斐バンド


1981年にリリースされた『破れたハートを売り物に』は8作目のオリジナル・アルバムだが、「ダイナマイトが150屯」はその3曲目に収められていた。
そこでは歌詞の一部が著作者の承諾を得て改変されていた。

その破壊力にはファンもすぐに気づいて、たちまちライブにおける人気ナンバーになった。
それから10年後、こんどはTHE BLUE HEARTSの真島昌利がソロ・アルバム『HAPPY SONGS』でカヴァーした。

歌詞は甲斐バンドのものを踏襲していた。
こうして小林旭の原曲を知らない世代にまで「ダイナマイトが百五十屯」は伝わっていった。

「ダイナマイトが150屯」真島昌利

そしてオリジナル・シンガーの小林旭は現役で今なお、「ダイナマイトが百五十屯」を歌っているのである。

(注)大瀧詠一の発言は、自らも編集に加わった「小林旭読本 歌う大スターの伝説」(キネマ旬報社)のなかに寄稿した「アキラ節の世界 大瀧詠一」からの引用です。


<日本で最初にヒットしたロックンロール・ナンバー「ダイナマイトが百五十屯」の破壊力①は、こちらからご覧ください>



*本コラムは2015年9月4日に公開されました。

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