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コギャルの時代に奏でられたティーンエイジ・シンフォニー〜安室奈美恵ほか

2014.12.17

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「TAP the COLOR」連載第60回

1990年代前半、まだダンス・ミュージックのレーベルだったエイベックスは、一人のミュージシャンとの出逢いによって若い世代の心を掴むことになる。プロデュース活動を本格化した小室哲哉は、1993年にDJ/ヴォーカリスト/ダンサーからなるユニット・trf(TK RAVE FACTORYの略)をデビューさせると、一躍ディスコやクラブシーンを舞台に人気者へ。

この頃、それまでのバブル時代の社会人や大学生に代わって、若者社会の中心に躍り出たのは「女子高生」だった。放課後の渋谷に集まる高感度な彼女たちは、自分たちに十分な商品価値があることを知っていた。そして独特のクチコミという魔法によって消費や流行のムードを牽引。「コギャル」と呼ばれ始めた彼女たちのサウンドトラックに「小室サウンド」が歓迎されようとしていた。

1995年には「コギャル」世代の安室奈美恵が満を持して小室プロデュース作の「Body Feels EXIT」で登場する。安室がカリスマになるのは必然だった。彼女のルックスやヴィジュアルは「女子高生」たちの最新のファッションと見事にシンクロしていた。「アムラー」はファッション雑誌やTV番組を通じてブームや流行語にもなった。

1997年にはティーンエイジ・シンフォニーの金字塔とでも言うべき的作品「CAN YOU CELEBRATE?」がリリースされる。20才のカリスマの突然の結婚・休業宣言に話題が集中した。そしてMISIAや椎名林檎、宇多田ヒカルや浜崎あゆみがデビューする中、「小室サウンド」は90年代末に終焉を迎える。「コギャル」も第二世代に入り、2000年代というネット時代が到来した。

──あの頃の「女子高生」「コギャル」たちも今や30代後半の母親世代になった。それでも「小室サウンド」は今でも彼女たちの心の中に刻まれていることだろう。なぜなら、これほどまでに世代と音楽が“同じ光景の中”で呼吸していた時代はないのだから。

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jacket_ESCB01552B01A_600over.1200x1200-75 篠原涼子『Lady Generation~淑女の世代~』(1995)
「小室サウンド」がティーン世代に浸透したのは、東京パフォーマンスドールに在籍した篠原涼子の大ブレイクから。1994年から翌年に掛けて「恋しさとせつなさと心強さと」が200万枚超えの大ヒット。名曲「もっと もっと…」などを収録。黄金時代はすぐそこまで来ていた。


10841142_1008610532487247_1904941668_n 安室奈美恵『SWEET 19 BLUES』(1996)
“カッコ良く大人っぽく見られたい”願望は日増しに高まるけど、心の中では“高校生の女の子”であることの現実を消すことはできない。本作の最後を飾るタイトル曲は、そんなコギャルたちの心境を見事に歌い描いていた。スターにとっても、この歌は特別な作品だったことだろう。

10822672_1008610525820581_617842671_n globe『globe』(1996)
小室ブームは1996年がピークと言われているが、その勢いは同年のJASRAC賞を独占したことからも伺い知れる。自身のユニットglobeのデビュー作も300万枚以上をセールス。CDが最も売れていた時代、プロデューサーは時代がどの世代の手の中にあるのか知っていたのだ。

10846577_1008610345820599_942000635_n 華原朋美『LOVE BRACE』(1996)
愛に満ち溢れたアルバム。華原の高音域は空を天高く舞い上がっていくような響きを持っていたし、プロデューサーも彼女の歌声をこの上なく美しい旋律で強く優しく包み込もうとしていた。「I BELIEVE」「I’m proud」、美しいタイトル曲などを収録。200万枚以上をセールス。

『うたのチカラ JASRACリアルカウントと日本の音楽の未来』

『うたのチカラ JASRACリアルカウントと日本の音楽の未来』

今年11月下旬に発売された、日本の歌と歴史を時代別/テーマ別に綴った書籍。TAP the POPのメンバーも執筆。「流行都市TOKYOに鳴り響いたバブル80’sというパーティ」「コギャルの時代に奏でられたティーンエイジ・シンフォニー」などを収録。1982〜2013年の音楽利用ランキングデータは資料性が高い。


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