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11月のナンバーワンアルバム⑥〜イーグルス/U2ほか

2017.11.29

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「TAP the COLOR」連載第222回〜BLACK〜

1990年代以降、ビルボードのアルバムチャートは売り上げに基づいた集計方法に変わった。さらにゼロ年代に入るとネット配信が普及してCDやアルバムが売れなくなった。その影響もあって現在のチャートはほぼ毎週のようにナンバーワンが入れ替わり、すぐにトップ10圏外へランクダウンしてしまう(その代わりに年に数枚だけビッグヒットが生まれる)。だが70〜80年代はナンバーワンになること自体が困難で、言い換えればそれらは「時代のサウンドトラック」として確かに機能していた。11月にはどんなアルバムがナンバーワンになったのだろう?


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イーグルス『The Long Run』(1979)
前作『Hotel California』(1976)と表題曲で一つの幻想=カリフォルニアとロックの夢物語に終止符を打ったイーグルス。やるべきことはやり遂げた感もあったのだろうか。本作(9週連続1位)をリリースして解散してしまう。すべての曲に哀切を帯びた終焉感を漂わせつつ、乾いた感覚がたまらない。目を閉じれば、ラストの「Sad Cafe」の余韻がどこまでも。


U2『Rattle and Hum』(1988)
前作『The Joshua Tree』(1987)で世界の頂点を獲ったU2。80年代の新旧ロックバンド群が時代の音・売れる音に対応せざるを得ない状況の中、彼らだけはルーツミュージックに根ざした硬派な音で一貫したのが感動的だった。本作(6週連続1位)はドキュメンタリー映画のサウンドトラックとしてライヴとスタジオ新録で構成。B.B.キングやボブ・ディランも参加した力作だ。そしてU2はこの後、テクノロジーを駆使しながら90年代を駆け抜けていく。

フェイス・ヒル『Breathe』(1999)
19歳の時、ミシシッピのスモールタウンからプロの歌手になろうとナッシュヴィルに向かったフェイスは、この手の話によくあるように最初は音楽どころか生活するための仕事さえ見つからなかった。音楽にまったく興味がないフリをしながら5年間も出版社の事務員として働いていたある日、オフィスに誰もいないと思った彼女はラジオに合わせて大声で歌った。そんな姿をこっそり見ていた同僚はボスに報告。すると彼女はボスからこう言われたのだ。「お嬢さんに言っておくことがある。もうこの仕事をする必要はないよ」。それからフェイスが覚醒したのは言うまでもない。本作は彼女の4枚目のアルバムで、カントリーとポップチャート(1週)両方でナンバーワンとなった。夫ティム・マグロウとのデュエット「Let’s Make Love」は名曲だ。

ミリ・バニリ『Girl You Know It’s True』(1989)
ドイツから火がついてアメリカで大成功した彼らだったが、1990年末にフロントマンの2人=ロブ・ピラトゥスとファブリス・モーヴァンには影武者がいて、実際には歌っていないこと(口パクで別のメンバーが歌唱)が判明。この事実を隠していたことが騒動となり、グラミー賞の新人賞が剥奪されてレコードも廃盤に。そのことを前提にして聴くと、本作(8週1位)から生まれた5曲「Girl You Know It’s True」(2位)「Baby Don’t Forget My Number」(1位)「Blame It on the Rain」(1位)「Girl I’m Gonna Miss You」(1位)「All or Nothing」(4位)は、どれも大ヒットしたことに納得。

*参考/『カントリー・ミュージックの巨人』(ニール・ヘイスロップ他著/星野吉男訳/東亜音楽社)

【執筆者の紹介】
■中野充浩のプロフィール
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