この曲は、もともと“ムッシュかまやつ”ことかまやつひろしが1975年に大ヒットさせたシングル「我が良き友よ」のB面に収録されていた。
A面は、当時フォーク界の大スターだった吉田拓郎による作詞作曲。
日系二世のジャズマン“ティーブ釜萢”の息子として生まれたムッシュと言えば、60年代に伝説のバンド“ザ・スパイダース”のメンバーとしての輝かしいキャリアを持っており、カントリー、ウエスタン、ジャズ、ロック、フォークまでこなせる実力の持ち主である。
そんな彼にとって、レコード会社が決めた拓郎節全開のA面曲に対して「僕の世界じゃない!」と、個人的にはあまり気に入っていなかったらしい。
そこで「それじゃB面はオレの好きに作らせてくれ!」と、交換条件を出したのだ。
面白いのはここからだった。
ムッシュは当時のことをこんな風に述懐している。
その当時、僕はフェイセスが好きで、ロッド・スチュワートを気取っていたから「我が良き友よ」の“ゲタ履いて腰に手ぬぐいぶら下げて”っていう詞を歌うのにすごく抵抗があったわけ。
じゃあB面は自分がやりたいことをやるんだってことになってね(笑)
そんな啖呵を切りつつも…実際のところ曲も作っておらず「さて、何をやろうか?」という状態だったらしい。
その頃ちょうどアメリカのファンクバンドの至宝、タワー・オブ・パワーが来日していることを聞きつけたムッシュは、ダメもとで「オレの新曲のバックの演奏をしてくれないか?」とオファーしたという。
本人も驚くくらいにあっさりと快諾の返事をもらい、トントン拍子で作業に取りかかることになる。
「レコーディングは明日か明後日」ということになり、その時点では曲も歌詞もできていなかったので慌てて“それらしいコード進行”をバンドに渡したという。
レコーディングは明後日からというのに曲なんかないわけ(笑)
しょうがないから、眠っていても勝手にできるようなコード進行を書いて渡して、そのオケを聴きながら「ここからここの部分は歌ね」ってメロディーを作って(字余りなんか気にしない感覚で)サッと歌詞も書いてね。まぁ時間がなかったしね(笑)
タワー・オブ・パワーと言えばRCサクセションのアルバム『シングル・マン』(1976年リリース/1974年12月〜1975年3月録音)への参加でも知られるバンドである。
ムッシュは、あるインタヴューでこんなこと語っている。
僕の「ゴロワーズ〜」のセッションが終わった後にポリドールへ行って、清志郎くんたちのバックをやったみたいだね。
タイトルに関してよく訊かれるんだけど…当時、無性に「ゴロワーズ」って単語が好きだったから、手元にあったネタなんだよね。
「これで何か作れないかな?」なんて(笑)
ゴロワーズとは一体どんな代物だったのだろう?
それは1910年に登場したフランス産の煙草で、フランスではジダンと並ぶもっとも有名なブランドだった。
労働者階層が好んで吸う煙草だったようで、紫煙は苦々しい中にもメンソールとは違う独特な香りがほんのり混じって、明らかに日本の煙草とは違っていたという。
これは煙草の葉を堆積発酵させた“黒煙草”の香りの特徴でもある。
パッケージが洒落ていて、マルセル・ジャクノというデザイナーの作ったという薄青色に翼のついた兜のデザイン。
古代ガリア人の騎士達が用いた防具で、フランスの伝統的な兜だそうだ。
ゴロワーズという名称は、フランスの旧名“ゴール”に由来し、形容詞としては「あけっぴろげな性格の女性」という意味があるのだという。
何はともあれこんな名曲を40年以上も前に作っていたムッシュの才能とセンスには、ただただ脱帽である。
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