小学生の頃から始めたインスタグラムでファッション・センスが話題になっているMAPPY(マッピー)は、2001年5月24日生まれの中学2年生。
インスタグラムで公開している古着を取り入れたレトロでポップな私服が、「懐かしくて新しい」「中学生に見えない」と広まって、現在のフォロワー数は8万人を超えている。
そんな彼女の夢は、ジャズ・ピアニストになって音楽で世界の人を魅了すること。
だから今はピアノを弾いている時が一番楽しいそうだ。
この夏にはニューヨークに渡って1か月の短期留学を実現、英語を学んでピアノのワークショップに通い、夜はジャズ・クラブに足を運んだ。
ニューヨークではみんなが親切で、ごく自然に伸び伸びと過ごせて、ゴキゲンだったという。
ジャズとの出会いはピアノの発表会で、年上のお姉さんが演奏したジャズっぽい曲の表現に興味を持ち、それを母親に話したところ、図書館からたくさんのジャズCDを借りて来てくれたのが発端だ。
それらのCDを聴いていていくうちに強く惹きこまれたのが、セロニアス・モンクとバド・パウエルの2人だった。
奇しくもモダンジャズの起源となったビバップの異端児セロニアス・モンクと、歴史上でもっとも傑出したピアニストのバド・パウエルである。
モダンジャズにおける「ピアノの祖」とパウエルが称されているのは、リズムの取り方、スウィング感、即興演奏における閃きの大切さにいたるまで、現在も変わらないジャズ・ピアノのスタイルを築き上げた革命児だからだ。
1924年にニューヨークで生まれたパウエルは、祖父がフラメンコ・ギタリストで、父はストライド・ピアニスト、兄のウィリアムはトランペット奏者という音楽一家で育った。
最初はクラシックの勉強をしていたパウエルだが、ジャズに興味を持つようになった15歳頃には、兄と一緒のバンドでピアノを弾き始めた。
当時のジャズにおけるピアノは、トランペットやサックスといった花形プレーヤーを後ろでサポートする脇役に過ぎなかった。
しかしパウエルはピアノを中心に、ベースとドラムスによるトリオ編成のスタイルを確立して、ジャズ・シーンに革命をもたらしたのだった。
そして『ジ・アメイジング・バド・パウエル』という傑作を、20代半ばにして生み出している。
幼稚園の頃から人と違う服を着るのが好きだったMAPPYは、まわりで流行っているものにも興味があり、自分なりの着こなしを洋服で試していた。
小学校に入ってからは同級生の女子とはまったく話が合わず、遊ぶ相手はいつも男子ばかりだった。
やがて小学生ブロガーとして活躍し始めると同時に、英語とピアノを一生懸命に習って留学に備え始めた。
海外のファッション誌でも特集が組まれるMAPPYのSNSには日本語、英語、中国語など世界中からコメントが寄せられ、最近はファッション・イベントへの出演も多く注目度が高まっている。
「mappyすっごい可愛い」「これで14歳とか驚き」などの声がツイートされて、14歳にしてブレない生き方とスタイルを貫いていることに「カッコいい」「憧れる」といった言葉も綴られる。
生徒を横並びに扱う日本の学校が苦手で、早くからアメリカに留学したいと母親に訴えていたMAPPYは、生まれついてのコスモポリタンかもしれない。
日本の人ではロックの甲本ヒロトが、とりわけ「大大大好き!」だという。
「いちばん好きなのはどこ?」とたずねると、「すべて!声、歌、曲、歌う姿、生き方、全部です。毎晩、聴いています」と答えた。
甲本ヒロトとセロニアス・モンクとバド・パウエル。
3人の反逆児と異端児と革命児。
MAPPYの心をに響いたのは、無骨ながらも純粋でエネルギッシュな男たちの音楽だった。
今の時代に新たな風を吹き込むのは、レトロなファッションと1950年代のジャズ・ピアノが好きという、現代人離れした感性を持つ少女たちなのかもしれない。
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