スウェーデン出身のアヴィーチー(Avicii)ことティム・バークリングは、19歳で世界のトップDJとして認められて、EDMのムーブメントを牽引してきた。
ショービジネスの世界でスターの座を維持しながら、表現者として新しい作品を生み出していたが、たえまない緊張を余儀なくされたことで、精神的にはかなりきつい日々が続いていたという。
そこで2016年にツアー活動からは引退することを表明し、創作の仕事に打ち込んでアルバムを作っていた。だが昨年の4月20日、訪問先のオマーンで自らを死を選んだ。享年28。
そんなアヴィーチーのラスト・アルバム『TIM』が、6月7日に全世界で同時発売になった。
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そのアルバムの中に入っていた「FREAK」という曲には、坂本九が唄った「上を向いて歩こう(SUKIYAKI)」のメロディがサンプリングで使われている。
これを完成させたソングライター兼プロデューサーのクリストファー・フォーゲルマークとアルビン・ネドラーが、アヴィーチーと一緒に楽曲を制作しているときに、「上を向いて歩こう」がひらめいたプロセスについて語っているYouTube動画も公開された。
それによると当初は「Denial」と呼んでいた曲をレコーディングしていた時に、アヴィーチーが「SUKIYAKI」のメロディを急に演奏し始めたのだという。
日本の歌で、とてもはっきりしたメロディがある。たぶん間奏で歌い手が口笛でメロディを吹いているパートがあるんだ。最終的にそのパートを使おうということになり、サンプリングをした。Tim(アヴィーチー)はシンセの音でもメロディを被せている。聞けばわかると思うけど、そのパートができた時、基本的に曲全体が仕上がったんだ。
「上を向いて歩こう」のメロディだけが足りない部分だったので、そこにパズルがピッタリとはまった形になった。
それを見つけたとき、もう”Wow!”という感じだった。これはたまたま、Timがsukiyakiのメロディーを見つけたときの瞬間で、それで、私の携帯のボイスメモに入っているんだ。これは彼が後ろでメロディを引いている録音。「すごくいいメロディだ!」
最初は日本のヒット曲だった「上を向いて歩こう」が、坂本九がうたう日本語のまま「SUKIYAKI」というタイトルで、世界中の国々でヒットしたのは1963年のことだった。
そして6月15日から3週連続で全米チャート1位になったことから、「SUKIYAKI」は世界のスタンダード・ソングへの道を歩んで現在に至っている。
その年の8月に初めてアメリカを訪問することになった坂本九が、こんなふうに喜びと豊富を語っていたことが思い出される。
もう『上を向いて歩こう』は僕だけの歌じゃない。世界中の人の歌なんだ。生意気なこと言うみたいだけど、『上を向いて歩こう』って世界中の人への素晴らしいメッセージだと思いませんか? 僕はそのメッセンジャーボーイになれただけでも光栄です。
坂本九が言ったとおりに、この歌は日本だけでなく世界中にまで知れ渡っていった。アメリカではその後も1982年と1994年に英語詞によるカヴァーの「SUKIYAKI」が大ヒットし、それぞれゴールド・ディスクにも輝いた。
しかも言葉は通じなくとも、音楽の力でメッセージは伝わっていった。
21世紀になってからスウェーデンのアヴィーチーに発見されたことで、さらに世界中の若い人たちにまで、あらためて知られる可能性が出てている。
(注)本コラムは 2019年6月14日に公開されました。
世界で一番有名な「ジャパニーズ・ソング」はこうして生まれた! 前編 http://www.tapthepop.net/day/4903
世界で一番有名な「ジャパニーズ・ソング」はこうして生まれた! 後編 http://www.tapthepop.net/day/4907

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