「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

Extra便

レコーディング中だったアヴィーチーが急に演奏した「SUKIYAKI(上を向いて歩こう)」のメロディ

2024.06.15

Pocket
LINEで送る

スウェーデン出身のアヴィーチー(Avicii)ことティム・バークリングは、19歳で世界のトップDJとして認められて、EDMのムーブメントを牽引してきた。

ショービジネスの世界でスターの座を維持しながら、表現者として新しい作品を生み出していたが、たえまない緊張を余儀なくされたことで、精神的にはかなりきつい日々が続いていたという。

そこで2016年にツアー活動からは引退することを表明し、創作の仕事に打ち込んでアルバムを作っていた。だが昨年の4月20日、訪問先のオマーンで自らを死を選んだ。享年28。

そんなアヴィーチーのラスト・アルバム『TIM』が、6月7日に全世界で同時発売になった。


●この商品の購入はこちらから

そのアルバムの中に入っていた「FREAK」という曲には、坂本九が唄った「上を向いて歩こう(SUKIYAKI)」のメロディがサンプリングで使われている。

これを完成させたソングライター兼プロデューサーのクリストファー・フォーゲルマークとアルビン・ネドラーが、アヴィーチーと一緒に楽曲を制作しているときに、「上を向いて歩こう」がひらめいたプロセスについて語っているYouTube動画も公開された。

それによると当初は「Denial」と呼んでいた曲をレコーディングしていた時に、アヴィーチーが「SUKIYAKI」のメロディを急に演奏し始めたのだという。


日本の歌で、とてもはっきりしたメロディがある。たぶん間奏で歌い手が口笛でメロディを吹いているパートがあるんだ。最終的にそのパートを使おうということになり、サンプリングをした。Tim(アヴィーチー)はシンセの音でもメロディを被せている。聞けばわかると思うけど、そのパートができた時、基本的に曲全体が仕上がったんだ。


「上を向いて歩こう」のメロディだけが足りない部分だったので、そこにパズルがピッタリとはまった形になった。

それを見つけたとき、もう”Wow!”という感じだった。これはたまたま、Timがsukiyakiのメロディーを見つけたときの瞬間で、それで、私の携帯のボイスメモに入っているんだ。これは彼が後ろでメロディを引いている録音。「すごくいいメロディだ!」



最初は日本のヒット曲だった「上を向いて歩こう」が、坂本九がうたう日本語のまま「SUKIYAKI」というタイトルで、世界中の国々でヒットしたのは1963年のことだった。

そして6月15日から3週連続で全米チャート1位になったことから、「SUKIYAKI」は世界のスタンダード・ソングへの道を歩んで現在に至っている。

その年の8月に初めてアメリカを訪問することになった坂本九が、こんなふうに喜びと豊富を語っていたことが思い出される。

もう『上を向いて歩こう』は僕だけの歌じゃない。世界中の人の歌なんだ。生意気なこと言うみたいだけど、『上を向いて歩こう』って世界中の人への素晴らしいメッセージだと思いませんか? 僕はそのメッセンジャーボーイになれただけでも光栄です。


坂本九が言ったとおりに、この歌は日本だけでなく世界中にまで知れ渡っていった。アメリカではその後も1982年と1994年に英語詞によるカヴァーの「SUKIYAKI」が大ヒットし、それぞれゴールド・ディスクにも輝いた。

しかも言葉は通じなくとも、音楽の力でメッセージは伝わっていった。

21世紀になってからスウェーデンのアヴィーチーに発見されたことで、さらに世界中の若い人たちにまで、あらためて知られる可能性が出てている。

(注)本コラムは 2019年6月14日に公開されました。

世界で一番有名な「ジャパニーズ・ソング」はこうして生まれた! 前編 http://www.tapthepop.net/day/4903

世界で一番有名な「ジャパニーズ・ソング」はこうして生まれた! 後編 http://www.tapthepop.net/day/4907

坂本九『上を向いて歩こう』
EMIミュージックジャパン

佐藤剛『上を向いて歩こう』(書籍)
岩波書店

  • Amazon

  • ●Amazon Music Unlimitedへの登録はこちらから
    ●AmazonPrimeVideoチャンネルへの登録はこちらから


    TAP the POPメンバーも協力する最強の昭和歌謡コラム『オトナの歌謡曲』はこちらから。

    Pocket
    LINEで送る

    あなたにおすすめ

    関連するコラム

    [Extra便]の最新コラム

    SNSでも配信中

    Pagetop ↑

    トップページへ