この楽曲「駅」は、1986年に竹内まりやが中森明菜のアルバム『CRIMSON』への提供曲として書き下ろしたもの。翌1987年11月には自身の16枚目のシングルとしてリリースし、以降、彼女の代表曲として長きにわたってファンに愛され続けている。
歌詞には、駅で繰り広げられる、男女の切ない“すれ違いの情景”が見事に描かれている。なんとも言えない余韻を残しながら幕を降ろすその物語には、二通りの解釈があるといわれている。
彼が“私だけを痛いほど愛してくれていた”と気づく。
彼のことを“私だけが痛いほど愛していた”と気づく。
作者の竹内がこの歌詞の込めた想いは前者。中森は後者の解釈で歌唱しているのだという。
実に日本語の面白さを感じる一行である。もしかすると、聴き手の心理状況で、聴こえ方が違ってくるのかもしれない。
後に竹内自身は、「楽曲提供の依頼がなければ、自分のために書く事はなかったタイプの曲」と語っている。
ところで、この歌に出てくる“駅”が実在したことをご存知だろうか?
これまでも諸説飛び交う中、数年前に夫でもある山下達郎のラジオ番組によって明らかにされたのだ。2013年3月17日、山下がパーソナリティを務めるFMラジオ番組に、一件のリクエストが届いた。
「あの駅が移設されて寂しいから…かけて下さい」
それは、妻・竹内まりや本人からのリクエストだった。山下はその日の放送の最後に、この「駅」を流した。
妻が27年前に書いた楽曲の舞台となった場所(駅)がなくなってしまい、寂しがる妻への、彼なりのなぐさめだったのかもしれない。
その放送のつい二日前(3月15日)に、東急東横線・渋谷駅の地上2階にあったホームの使用が終了となり、翌日から地下にもぐることとなった。
85年間使用されたその駅を惜しみ、たくさんの人が渋谷駅を訪れた。東京で暮したことのある者、東京を訪れたことのある人にとっては、それぞれに思い出のある駅。
開発と共に日に日に表情を変えていく街、渋谷。竹内もかつて、通学するときにその駅を利用していた。この歌に唄われているように、駅という場所は、たくさんの人の様々なドラマや思い出が交差する場所なのだ。
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執筆者
【佐々木モトアキ プロフィール】
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