日本民謡とラテン・リズムの融合──たとえば東京キューバンボーイズやノーチェクバーナといった先達がかつて挑んだ試みに、まったく異なる立脚点からアプローチするのが、民謡クルセイダーズというバンドだ。
カリビアン/ジャンプ・ブルース・バンドのザ・モーレッツなどで活動してきた福生在住のギタリスト田中克海と、正調民謡歌手として25年以上のキャリアを持つフレディ塚本を中心に2012年に結成。田中が仕事場にしている福生の米軍ハウスを拠点にセッションを重ねながら、独自のスタイルを模索してきた民謡クルセイダーズ。現在はスカフレイムスなどで活動していたベーシストDADDY Uや、女性シンガーのmeg、クラシックからスカ、ジャズまで幅広く活躍するサックス奏者・大沢広一郎ら、3人のパーカッション奏者と2人の管楽器を含む10人編成で活動中だ。
彼らのファースト・アルバム『エコーズ・オブ・ジャパン』には、ゲスト・ミュージシャンにカセットコンロスのアンドウケンジロウ(クラリネット)が参加。ミックスにはLITTLE TEMPOやキセルなどを手がける内田直之、ジャケット・デザインをスピッツや椎名林檎、Superflyなど数々の作品を手がけた木村豊(Central67)が担当。
クンビアやブーガルー、ビギン、レゲエ、エチオピア・ファンクなどなど、ラテン〜カリブ音楽や、その源流にあるアフリカ音楽を生々しいままアレンジに取り入れたバンド・サウンドに乗せて、「串本節」(和歌山県)、「ホーハイ節」(青森県)、「炭坑節」(福岡県)、「会津磐梯山」(福島県)など日本各地の民謡を歌い上げていく……のだが、民謡の歌唱をラテンのリズムやアレンジに寄せているのでもなければ、アレンジもことさら和風に仕立てるでもない。さらにいえば芸術性をもってスタイリッシュにまとめているわけでもない。民謡とラテン音楽それぞれが持つ大衆音楽としての成り立ちや力強さを、そのままぶつけ合ったようなザラっとしたルードな手触り。しかし、昔からこういうアレンジでも歌われてたんじゃないか?と錯覚してしまうぐらい、実にしっくりくる耳馴染みを感じるのが不思議だ。その独特のミクスチャー感覚から生まれる音楽には久保田麻琴やピーター・バラカンが賞賛を寄せ、なんとライ・クーダーも自身のTwitterで紹介したという。
ちょっと昔までは、母親やおばあちゃんが小さい子どもをあやしながら民謡を歌ったり、あるいは親戚や町内の集まりで大人たちが酔いに任せて自然と民謡を歌って踊りだす……なんて光景をよく見たが、最近じゃ民謡を歌える人も少なくなってきた。というか、テレビやラジオで民謡を耳にする機会もほぼ皆無だ。その一方で、ここ数年で音頭や盆踊りが若い世代からもふたたび注目を集めつつある。カッコよくて、胸に沁みて、なんだか踊りだしたくなる音楽──民謡クルセイダーズはラテン音楽を媒介に民謡の新たな魅力を引き出しながら、民謡が失いかけていた大衆歌としての存在価値を再び示してくれる。
official website
http://minyocrusaders.tumblr.com/
民謡クルセイダーズ『エコーズ・オブ・ジャパン』リリース・パーティ
2018年1月21日(日)東京・表参道CAY
other live schedule
2017年12月26日(火)東京・代官山UNIT
LIVE: REGGAELATION INDEPENDANCE(Special Guest OKI)/ Bim One Productions (1TA & e-mura)/ 民謡クルセイダーズ