このコーナーでもたびたび紹介してきた、イスラエル発の音楽。今回はともにファンクやジャズを経由しつつ、アフリカのルーツに新たな解釈を加えて、オリジナルなサウンドを生み出している2組のアーティストを紹介したい。
まず1組目。クォーター・トゥ・アフリカは、2014年にイスラエルで結成。当初は2人編成でスタートしたが、さまざまな民族が共存する多様性を反映するように、多彩なミュージシャンたちによって構成する音楽集団として活動している。
エレクトリック・ウードや、ホーン・セクションをフィーチャーした大所帯のアンサンブルで奏でるのは、マカーム(アラブ音階)を基調としたメロディに、アフリカのリズム、さらにジャズやファンクをミクスチャーしたグルーヴィーなサウンド。自ら〈アフロ・アラブ〉と称する独特の音楽性は大きな反響を呼び、2017年にはデビュー・アルバム『The Layback』をリリース。同年10月には、ピーター・バラカン監修の音楽フェス『LIVE MAGIC』に出演するなど、初来日ツアーも敢行している。
その来日ツアーで、日本のファンに向けて特別に披露されたのが、なんと「炭坑節」だった。アフロ・アラブ×レゲエなアレンジによる意外すぎる選曲に日本のオーディエンスからも大きな反響を集めたカバーを、帰国後すぐにレコーディングし、日本先行配信/7インチ限定シングルとして発売。日本の民謡までをも呑み込む〈アフロ・アラブ〉なサウンドは、いったいどこまで進化していくのか? 今後の動きにも注目したいバンドだ。
もう1組は、テルアビブを拠点に活動するエチオピア系イスラエル人アーティスト、ギリ・ヤロ。ダブ・バンドのボーカリストとして活動していたというギリ・ヤロ。自らのルーツであるエチオピアへの想いを込めたメッセージを、英語とエチオピアの言語であるアムハラ語の両方を使用した歌詞と、エチオピアの伝統的な音階を多用したメロディで歌い上げていく。
デビュー・アルバム『Gili Yalo』には、以前にもこのコーナーで紹介しBoom Pamのリーダーでもあるギタリストのウリ・ブラウネル・キンロトがプロデュースを担当し、バルカン・ビート・ボックスのメンバーらがレコーディングに参加。ファンクやソウル、ジャズ、ロックをフィルターを媒介に、伝統的なエチオピア音楽に新たな解釈を加えながら、オリジナルな表現へと昇華している。
Quarter To Africa http://www.q2africa.com
Gili Yalo https://www.giliyalo.com/
Tuff Beats http://www.tuff-beats.com