若き無邪気な日々は、突然、終わる。
灼熱の太陽に焼かれた夏の頬に、秋風が吹きつけるように。
そんな瞬間を歌った曲は多い。
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昨日
愛とはいとも簡単な遊戯だった
今、僕は逃げ道を探している
ああ、まだ昨日を信じているのだ
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ビートルズの「イエスタデイ」は、彼女との突然の別れに、主人公が途方に暮れる様を描いている。
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僕がもっと若く
今日よりもっともっと若かった頃
僕はどんなことにだって
他人のヘルプを必要としたことなど
なかった
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同じビートルズの「ヘルプ」は、「イエスタデイ」を書いたポールより2歳年上のジョンが書いた作品だけあって、恋愛というよりは、人間の孤独そのものを扱っている。
いずれにしても、人は孤独なのである。
そして、夏の終わりほど、そんな気分になりがちなのだ、と言われている。
「曲を書くための燃料が何かといえば、それは幸福ではなく、寂しさ、惨めさなのだと僕は考えている」とエリック・カルメンは語っている。今回は、彼が描く「孤独」の歌を紹介しよう。
1949年、オハイオ州クリーブランドに生まれたエリックは、幼少期から音楽に親しんでいた。ティーネイジャーになる前からピアノで曲を書いていたほどである。
1972年。ラズベリーズとしてデビュー。「ゴー・オール・ザ・ウェイ」「レッツ・プリテンド」などヒット曲を連発するが、2年後、メンバー間の人間関係が原因で、解散してしまう。
そして翌1975年、エリックはソロとして再デビューを果たす。「オール・バイ・マイセルフ」は、全米チャート2位まであがる大ヒットとなった。
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若き日々
誰も必要ではなかった
メイク・ラブもただの楽しみだった
でも、そんな日々も終わった
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ポールが書いた「イエスタデイ」とジョンの「ヘルプ」を足して2で割ったような歌詞である。
「歌詞はなるべくシンプルにしたかった。タイトルもね。『オール・バイ・マイセルフ』(僕独り)というタイトルを見れば、どんな歌かわかってもらえる。誰もが感じたことがあるであろう、想いだからね」とエリック・カルメンは言う。
歌詞をシンプルにしたのは、メロディがドラマティックだから、である。
「オール・バイ・マイセルフ」のメロディーは、ロシアのピアニスト、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」をモチーフにした。
「幸福と自信に満ちていたモーツアルトではないよね。少なくとも、あの曲を書いた頃のラフマニノフは、幸福に満ちていたとは思えない」
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独りで暮らしていると
時折、やたら不安になる
電話をしても
誰も出やしない
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エリック・カルメンは、ドラマティックなメロディーにシンプルな歌詞を乗せていく。そしてコーラスも、いたってシンプルである。
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僕独り
独りではいたくない
僕独り
もう独りではいたくない
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