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「TAP the COLOR」連載第124回
故郷アイルランドの風景を想う男の歌。孤独と愛の喪失に胸を痛める男の歌。青春と人生のクロスロードで立ち尽くす男の歌。そして戦場で敵と心を通わせたいと願う者のメロディ。男たちのバラードをいくつか。
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ヴァン・モリソン『Moondance』(1970)
前作『Astral Weeks』(1968)はセールス的には芳しくなかったが、音楽的には極上の域に達した名作中の名作となった。しかし、ヴァンによると「金欠状態にうんざりしていたから、ラジオでかけられる機会のあるアルバムを作る必要があった」ことから、本作は生まれたそうだ。妻に捧げられた「Crazy Love」をはじめ、アイリッシュ・ソウルマンの風景の歌たちを収録。ヴァンのアルバムの中でも最も売れた1枚。
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エリック・カルメン『Eric Carmen』(1975)
クラシック・ファンなら知らない者はいない有名なラフマニノフのピアノ協奏曲第2番をモチーフにした「All by Myself」や、同様に交響曲第2番の甘い調べをモチーフにした「Never Gonna Fall in Love Again」などの大ヒットを生んだ本作。ラズベリーズでアイドル的な人気を得ていたエリック・カルメンのソロデビュー作。
ブルース・スプリングスティーン『Darkness on the Edge of Town』(1978)
前作『Born to Run』で新たなロックヒーローになったブルースだったが、マネージャーとの裁判沙汰でレコード制作ができない事態に陥ってしまう。本作はそんな時期を乗り越えて生まれた。大名曲「Racing in the Street」を収録。「道路を駆け抜け、限界のない自由な人生を捜し求めていた初期の作品の主人公たちを、現実の社会に対峠させる曲作りを始めた」(音楽評論家/五十嵐正氏)
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坂本龍一/サウンドトラック『戦場のメリークリスマス/Merry Christmas Mr.Lawrence』(1983)
大島渚監督の伝説的名作のサントラ盤。坂本龍一はデヴィッド・ボウイやビートたけしらとともにキャスティングされ、映画初出演にしてエリート武官のヨノイ大尉を演じた。坂本は撮影中にたった一度だけカメラのファインダーを覗かせてもらった時、音楽が聴こえてきたと言っている。「メロディーのないたった一音の音だけど、無数の音がひしめき合ってる。そんな感じの音群だった」。200時間以上もスタジオに籠って仕事をし続け、この有名で感動的な映画音楽は作られた。
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