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ルー・リードが歌にした“ワイルドサイド”に生きるものたち

2023.10.26

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ホリーは、フロリダ州マイアミから
USAをヒッチハイクで横断して
やってくる途中
眉毛を抜き、すね毛を剃って
彼は彼女になったのさ


 ルー・リードは、ネルソン・オルグレンの同名小説を下敷きに、アンディ・ウォーホルのスタジオに出入りする同性愛者たちをイメージしながら「ワイルドサイドを歩け」(Walk on the Wild Side)を書き上げている。今でこそ、女装はさほど珍しいものではなくなったが、この曲が発表された1972年当時では、なかなかぶっ飛んだ内容だった。

 歌の最初に登場するホリーとは、ホリー・ウッドローンのことだ。プエルトリコで生まれ、マイアミで少年時代を過ごしていたホリーがマイアミを後にしたのは、15歳の時。彼はアトランタからヒッチハイクをしながらニューヨークにたどり着いている。

 眉毛を抜いた話は実話である。ホリーは、ヒッチハイクの途中、15歳で海兵隊の男に童貞を奪われている。


彼女は、言うのさ
ねぇ、ベイブ
ワイルドサイドを歩かない?


 ワイルドサイドを歩く、という表現は、同性愛者の娼婦が客を引く時の誘い文句である。


キャンディはロングアイランドから来た
楽屋では、みんなのダーリンだ


 みんなのダーリンとなっているキャンディは、そのままアンディ・ウォーホルの女神と呼ばれたキャンディ・ダーリンである。ルー・リードは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド時代に「キャンディ・セズ」という、彼女をイメージした曲を書き上げている。

 客から金を巻き上げるリトル・ジョーは、ジョー・ダレッサンドロ。ウォーホルの1968年の作品「フレッシュ」で、アンダーグラウンドから絶賛され、セックス革命のシンボルにもなった男である。


ジャッキーは飛ばすのさ
ジェイムス・ディーンになった気でね


 ジャッキー・カーチスもまた、「フレッシュ」に出演していたウォーホル・キッズである。
 彼らは、グリニッチ・ヴィレッジにあるクラブ「マックスズ・カンザスシティ」によく出入りしていた。彼らがホリーと出会ったのも、このクラブである。クラブでは深夜、グレタ・ガルボやマリーネ・デートリッヒの映画を流していた。


ねぇ、ハニー
ワイルドサイドを歩かない?


 ジャッキーたちがホリーを誘ったのである。
「アンディに会った方がいいわ。きっとスーパースターになれるわよ」

 この曲にはデビッド・ボウイとミック・ロンソンが参加している。ボウイはギター演奏の他に、楽曲のプロデュースも手掛けている。


(注)本コラムは2018年10月29日に公開されました。

ルー・リード『トランスフォーマー 』
Sony





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