2008年4月19日にアメリカで始まった「RECORD STORE DAY」は、“レコードショップに出向いてレコードを探す面白さ、ヴァイナルやカセットテープで聴く音楽の楽しさを共有しよう”とい呼びかけた熱心なショップと、それに応じた音楽ファンによる年に一度の祭典だ。
10周年を迎えた2018年は全米だけでおよそ700 店舗、世界でも21 か国で数百を数える独立資本のレコードショップが参加し、賛同するアーティストと一体になってレコードショップでしか買えない貴重な限定ヴァイナルを中心に、カセットやグッズなどのリリースとイベントが開催される。
今年の限定アイテムとして注目のアイテムは、ザ・ビートルズの復刻シングル盤「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー/ペニ ー・レイン」を筆頭に、デヴィッド・ボウイの未発表ライヴ・アルバム 『DAVID BOWIE/CRACKED ACTOR』、エルトン・ジョンのライヴ2枚組LP『Elton John/17/11/1970』、プリンスの12インチ・シングル『PRINCE/BATDANCE』、ピンク・フロイドがデビュー以前にレコーディングしていた未発表音源による『Pink Floyd/Interstellar Overdrive (12inch Vinyl for RSD)』、ルー・リードのアコースティック・ライヴ音源による2枚組LP『PERFECT NIGHT: LIVE IN LONDON 』、74年にリリースされたパティ・スミスのデビュー・シングル「HEY JOE」などなど、実にたくさんの限定ヴァイナルが発売される。
〈詳細は公式サイトを御覧ください。https://andmore-fes.com/news/36400/〉
エルヴィス・コステロとのデモ音源3曲が収録された限定カセットで、『Paul McCartney/Cassette Demos』をリリースするポール・マッカートニーはこう語っている。
「このデモは、当時出来立てホヤホヤの曲で、絶対にボックス・セットに収録したいと思ってだんだ。この曲が素晴らしいのは、当初まだ書き上げたばかりだったんだ。なので、これ以上、新鮮にはならないよ。その素晴らしい瞬間が収められているんだ。長らくこのデモは聴いてなかったんだけど、聴いた瞬間に、みんなに聴かせたいと思ったんだ。テープにこの曲を入れてエルヴィスに送ったんだ。そしたら、彼も喜んでくれたよ。EPか何らかの形でリリースしたいねって話になったんだけれど、やっとそれが実現したよ」
日本ではCDショップ大賞を運営するNPO法人のミュージックソムリエ協会が、2011年4月から「Record store day japan」を始める準備をしていたが、3月11日に東日本大震災が起きたために、大きな展開は見送らざるを得なくなった。
邦楽によるヴァイナルへの取り組みが本格化したのは2012年からで、ムーンライダース、キノコホテル、鈴木祥子、カーネーションの4タイトルがリリースされた。
そして2013年に14タイトル、2014年には42タイトル、そして2015年は82タイトルと急増し、昨年が91タイトルだった。
今年は昨年よりリリース数が減少しそうだが、これは日本にヴァイナルのプレス工場が一つしかなく、生産枚数に限りがあることも影響している。
世界中でヴァイナルの人気が復活して生産が追いつかない状況で、海外でのプレスもふくめて思うにまかせなくなってきたのだ。
「レコードストアデイジャパン2017」のアンバサダーを引き受けたスチャダラパーの3人が、公式パンフレットのインタビューのなかで、プレス工場についてこんなことを話している。
Bose;日本にももっとプレス工場あったらいいのに。今、RECORD STORE DAYの前ってすごい工場が混んだりしてるんですもんね。
SHINCO;ジャック・ホワイトが自分でプレス工場作ったりして。そのくらいね、マニアでお金持ってる人がね。
Bose;地元の岡山でプレス工場やるってのもありえるかも。ジーンズ工場ありますから。ふるさと納税で。レコードが届く。
ANI;ふるさと納税でレコードが届く。レコードの街、津山みたいな。
日本ならではの話題としては昨年、レコード・ストア・デイ当日に熊本地震が発生したために、準備していた限定レコードやグッズの販売ができなくなった熊本県で、昨年は出来なかった企画を「今年はやろう!」とレコードショップが手を組んでイベントを行なうことだろう。
4店舗合同の缶バッジでのスタンプラリーで、各店オリジナルの缶バッジを4店舗分集めると、7インチがぴったりと収まるトートバッグがもらえるという。
また、今年は「日本一早いRECORD STORE DAY 2017(前夜祭)」と題して、4月22日の午前0時から販売を開始する。
限定アナログのゲットはもちろん、飲み会や残業のあとにでもレコードを掘りにきていただければ嬉しいです。ウエルカムドリンクを用意してお待ちしています。
当日の昼間のメインイベントは、熊本のミュージシャン田尻精とMC COOKIEのライブです。こちらも去年ライブをやってくれる予定だったみなさん。また地元のDJもアナログ・オンリーでプレイしてくれます。
回るレコードを間近で見れるよいチャンスなので、あまり馴染みのないみなさんも、この機会に足を運んでみてください。
熊本らしい手づくりのイベントが全国各地に広がり、都会だけでなく地方ごとに音楽ファンがヴァイナルと出会う場を作っていくことが、レコード・ストア・デイ本来の意義にも合致している。
日本は世界で唯一のCD大国だが、こうした祭典をきっかけにCDショップやレンタルショップとともに、熱心なレコードショップが存在することが、もっと広く知られてほしいと思わずにはいられない。
全国各地のイベント詳細 http://www.recordstoreday.jp/event
〈レコード・ストア・デイ2017の全体については公式サイトを御覧ください。http://www.recordstoreday.jp/release.html〉