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ブルーズは健在だ!80代を迎えたバディ・ガイがブルーズに込める熱い思い

2018.08.06

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2018年6月、バディ・ガイのニューアルバム『ザ・ブルース・イズ・アライヴ・アンド・ウェル』がリリースされた。2015年の『ボーン・トゥ・プレイ・ギター』から約3年ぶりの新作だ。
7月30日で82歳となったバディ・ガイが、まだまだ衰えぬパワフルなギター・プレイと歌を聴かせてくれている。
しかし、そこに歌われる内容は、80代を迎えたブルーズマンの、飾らない正直な気持ちが散りばめられているのだ。

アルバム1曲目の「ア・フュー・グッド・イヤーズ」では「あぁ神様、あと何年かでいいから良い年を俺に授けてくれないか」と祈るように歌われている。他にも、天国にいる友についてや、自分もそちらへ行くのはそう遠くないだろう、というような内容が随所に見られる。

また、「ブルーズは健在だ」というアルバム・タイトル『ブルース・イズ・アライヴ・アンド・ウェル』だが、表題曲で歌われているのは、ブルーズ(憂鬱な気持ち)をもたらす人生の苦難は、生きている限りいつだって存在するということだ。

そして終盤の「エンド・オブ・ザ・ライン」では、人生の終着点に立つ男の胸の内が吐露され、思わず胸が締め付けられる。
しかし、歌もギターも力強くエネルギーに溢れていて、そんな感傷さえも吹き飛ばしてしまうほどだ。これこそがまさに、バディ・ガイのブルーズと言えないだろうか。

2008年のアルバム『スキン・ディープ』以降、バディは自身の人生体験に裏付けされた、本物のブルーズの物語を伝えて行くことを、強く意識しているそうだ。
『スキン・ディープ』以降のプロデュースを、そして多くのソングライティングも手がけているトム・ハンブリッジは、バディと多くの時間を共に過ごし、バディ自身の物語を伝えることを重要視しているという。
また、今回のアルバムジャケットはバディの生まれ故郷、ルイジアナ州レッツワースの古い農作業小屋を背景にしていて、ここから自身のブルーズが始まったということを暗示している。

2015年にB.B.キングがこの世を去り、昨年はブルーズ・ハープ奏者ジェイムズ・コットンも亡くなって、同時代を生きたブルーズマンの中で最後の現役ブルーズマンとなったバディ・ガイ。その意識は本人にも強くあるらしい。本物のブルーズを生き続けさせて行くと、彼はB.B.キングと約束をしたという。「エンド・オブ・ザ・ライン」ではこう歌われる。

友達も大勢見送った
たぶん俺のお迎えが来る日も遠くない
約束しよう この世を去るその日まで
俺は このブルースを生き生きと守り続けていこう


「End Of The Line」



ところで、このアルバムでは豪華なゲストにも注目だ。
「コニャック」では、ジェフ・ベックとキース・リチャーズが共演したことで話題を集めている。

マディ あんたとはもう一緒に飲めない
でもここにはキース・リチャーズがいる
そっちはどうだい ベック?
一緒にやろうじゃないか


と二人をジャム・セッションに招き入れ、それぞれの個性的なギター・ソロが交互にプレイされる。ギターファンにも楽しめる1曲だ。
バディは、英国からやってきたジェフ・ベックやローリング・ストーンズらが、アメリカの白人達に自分たちのブルーズを、ブルーズとはなんたるかを教えてくれたのだと語り、彼らとの友情はもう50年ほどになるという。
「ユー・ディド・ザ・クライム」では、ミック・ジャガーがブルーズ・ハープで参加しているのも聴きどころだ。

「Cognac」



「You Did The Crime」


他にも英国の若きシンガーソングライター、ジェイムス・ベイの参加もあり、エンターテイメント性に富んでいて、衰えを知らないバディ・ガイの艶やかなブルーズが楽しめるアルバムになっている。

さらに国内盤では、このTAP the POPでもおなじみの五十嵐正氏による渾身のライナーノーツが添えられている。
暑い季節に、バディ・ガイの熱いブルーズをぜひとも感じて欲しい。


Buddy Guy『The Blues Is Alive And Well』
RCA Records


参考文献:五十嵐正氏によるアルバム・ライナーノーツ

※アルバムのライナーノーツにならい、音楽スタイル/ジャンルのbluesを、原音を考慮しブルー「ズ」と表記し、日本盤表題は表記どおりブルー「ス」としております。

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