イギリスBBCの音楽番組『ジュークボックス・ジュリー』は、発売される新曲を聴いて審査員が評価するという内容で、新曲がヒットするかどうかをジュークボックスで聴いて、ヒットすると思ったら「HIT」のカード、ヒットしないと思ったら「MISS」のカードを出す。
1959年から始まった番組で、60年代にポップ・ミュージックが流行するとともに人気が出た。アルフレッド・ヒッチコック 、 スパイク・ミリガン 、 ロニー・ドネガン 、ジョニー・マティス 、ロイ・オービソン、デヴィッド・マッカラムといった、ショービジネス界の有名人がレギュラー審査員として出ていた。
基本的には新譜紹介だから、審査員はそれなりの”ほめ言葉”を口にしたり、気のきいたひと言や皮肉なコメントでその場の笑いをとるという内容だ。ヒットすると思ったらベルを、ヒットしないと思ったらクラクションを鳴らす方法だった時期もある。
ビートルズのジョン・レノンが単独でゲスト出演し、物議をかもしたのは1963年6月のことだ。ジョンはいかにもジョンらしい反応を見せた。そう、全曲にクラクションを鳴らしたのである。レギュラー審査員たちもジョンにつられたのか、その日はいつになくクラクションが多く鳴らされたという。
・クレオ・クレイン「Southend」
・タイムズ「So Much In Love」
・エルヴィス・プレスリー「Devil In Disguise」
・ミリアム・マケバ「The Click Song」
・トム・クレイザー「On Top Of Spaghetti」
・ラス・コンウェイ「Flamenco」
・ポール&ポーラ「First Quarrel」
・ジュリー・グランド「Don’t Ever Let Me Down」
しかし、2番目にかかったフィラデルフィア出身の黒人ボーカル・グループ、タイムズの「渚の誓い(So Much In Love)」は、8月3日に全米1位となる大ヒットを記録した。
エルヴィスの「悲しき悪魔(Devil In Disguise)」も全米では8月10日に3位、イギリスでは10月に1位になっている。
ポール&ポーラの「けんかでデート(First Quarrel)」も全米で27位、日本でも田辺靖雄と梓みちよがカヴァーしてまずまずヒットした。
審査員たちが予想を外したのは、ジョンに影響されて冷静さを欠いたからだった。
それから半年後。リバプールのエンパイア・シアターで、『ジューク・ボックス・ジュリー』のためにライブを行ったビートルズは、4人そろって番組の収録に参加した。
ビートルズが「HIT」のカードを上げたのは、地元リヴァプール出身だったスウィンギング・ブルー・ジーンズのときだ。
アメリカで1959年に、チャン・ロメロ (Chan Romero) が発表してヒットした「ヒッピー・ヒッピー・シェイク(Hippy Hippy Shake)」は、リヴァプールのバンドたちの間では好んでカヴァーされていた。
もちろん、アマチュア時代のビートルズもレパートリーに取り入れて、1960年のハンブルグ巡業の頃から激しいシャウトを披露していた。
スインギング・ブルー・ジーンズによってカバーされた「ヒッピー・ヒッピー・シェイク」は、ビートルズの評価通りに全英2位のヒットとなり、全米チャートでも24位まで上昇した。
それから10年後の日本では、この曲をカヴァーしていたビートルズのコピー・バンド、キャロルがテレビ番組でのライブが評判になってプロデビューしている。
ザ・ビートルズ・ライヴ!! アット・ザ・BBC
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