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人間の本質に由来する愚かさ、醜さ、滑稽さ、哀れさを歌う泉谷しげる~〈吐きすて〉の歌の系譜⑦

2024.04.13

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『黄金狂時代』は泉谷しげるの通算5枚目のアルバムで、1974年10月10日にエレック・レコードより発売になった。

そこからシングル・カットされた「眠れない夜」が出たのは10月25日だったが、翌月の音楽業界誌の週刊ミュージック・ラボ(11月18日号)には、泉谷らしいユーモアのある広告が掲載された。

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泉谷がシンガー・ソングライターとして注目を集める存在になったのは2年前、1972年に加藤和彦のプロデュースのもとで作られたセカンド・アルバム『春・夏・秋・冬』からだ。
そこで発表された代表曲となる「春夏秋冬」のライブ・ヴァージョンが、シングルとしてリリースされて若者たちの間で話題となった。

自作自演で弾き語りのライブだった「春夏秋冬」が多くの人に受け入れられたことで、泉谷はフォーク・シンガーとして確固たる立ち位置を得た。

それに続くアルバム『光と影』(1973年)では、加藤和彦が率いるサディスティック・ミカ・バンドの面々、高中正義、高橋幸宏といったミュージシャンが参加して、サウンド面でもレゲエを取り入れるなど、意欲的なレコーディングが行なわれた。

次第にロック色を強めていくなかで1974年に制作されたアルバム『黄金狂時代』は、レコーディングに集まったメンバーで作られたバンドのラストショ―と、ジョニー吉長が在籍していたロックバンドのイエローがバックを務めて、曲ごとにアレンジと演奏を担当している。(注)

実力あるミュージシャンの集合体だったラストショーのメンバーには徳武弘文、村上律、瀬尾一三、松田幸一、島村英二など、後にスタジオ・ミュージシャンやアレンジャーとして活躍する面々がいて、カントリー・ロックのテイストを持つユニークな存在だった。

一方のイエローはM(エム)というロックバンドを組んでいた垂水孝道と良道の兄弟を中心に結成され、ジョー山中らとカニバルスを組んでいたドラマーのジョニー吉長が在籍していた。

アルバムの冒頭を飾ったのは、初期の代表曲となる「眠れない夜」。
泉谷流の〈吐きすて〉の歌はイエローとのアレンジと演奏によって、日本語のロックになったのである。


ホットな熱を帯びている「Dのロック」もイエローと組んだ作品で、テレビというメディアをめぐって、作る側と視る側の本質を捉えた強烈な〈吐きすて〉の歌である。

人間の持つ愚かさ、虚飾の陰に見える醜さ、滑稽さや哀れさを、泉谷は容赦なく言葉にして吐き出す。
戯画化された情景をロックにしたことによって、ヤワで甘い音楽に浸っている者たちを驚かせた。

そんな泉谷をサウンドで支えていたのが、ドラムのジョニー吉長だった。
2012年6月4日にジョニー吉長の訃報を受けて、泉谷は自身のブログにこう記していた。

彼のドラムはホントに凄いのだった!
どう凄いかって?
オイラのアルバムに引っかけてナンだがさ~5枚目の『黄金狂時代』の中で、当時の彼のバンド「イエロー」のメンバーと共にアルバム創りに参加してくれたンだ!
アルバムの中の「眠れない夜」「Dのロック」「火の鳥」「国旗はためく下に」のドラムはジョニー吉長さんなのである。
これらの楽曲が今持ってライブのメイン曲になりえてるのは、ジョニーの腕前があったからこそなのだ!
音楽的知識がカナリ乏しかったオイラの曲をイエローのメンバーと共にアレンジして見事なモノにしてくれたのだから!
彼のドラムは日本離れしてて音に迫力があり、かつ正確で色気があった。当時ミュージシャンの間で話題になっていたのだよ!
オイラとイエローのライブにゃ関係者も多く訪れ、会場はいつも満員だったンだぜぇい!
「泉谷は面白いバンドを見つけるのがウマイ!」とまで云われ~イイ気になったっけ(笑)。


70年代初頭に開花し始めた日本語のロックというアプローチにおいて、泉谷の『黄金狂時代』はひとつの頂点を極めたと言ってもいいだろう。


(注)イエローは泉谷とのツアーや『黄金狂時代』への参加を経て、1975年には泉谷の楽曲「国旗はためく下に」をカヴァーしたシングルでデビューし、アルバムの『イエロー』を発表するがまもなく解散。ジョニー吉長は1970年代後半にギタリストのChar、ベーシストの加部正義(ゴールデン・カップスのルイズルイス加部)と、ジョニー・ルイス&チャーを結成する。


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