ラジオから流れた歌を聴いてRCサクセションの大ファンになった竹中直人が、熱心にライブへ足を運ぶようになったのは中学3年生の頃だった。
RCサクセションはヤマハの生ギターFG500をがむしゃらにかきならし、大きなウッドベースを持ったボロボロの3人組だった。
竹中の書いたエッセイには、初期のRCサクセションが持っていた魅力が描かれている。
今からもう20年も前になるか、ぼくは彼らのコンサートに出かけていった。破廉ケンチの病的に、脳ズイをシゲキする、左ききのリードギター! そして暗く重いはぎしりをしたくなるような林小和生のウッドベース! そしてはちきれんばかりにギターをかきならし、三人さんにの中で唯一心をゆるしてくれそうな、それでいて、かたくなに心を閉ざしてしまったら、あまてらす大みかみのように、美しく、力強く、そして切ない、ボロボロのキヨシローのうた声に私の魂は、ブルブルとふるえたのだ!!
竹中の魂をブルブルとふるわせたのは「九月になったのに」という歌で、1972年12月5日に発表された2ndアルバム『楽しい夕に』に収められていた楽曲である。
「九月になったのに」をライブで聴いた竹中は、必死になって唄うRCサクセションから、確かなメッセージを受け取った。それは歌や音楽でしか伝えられない、ボロボロの天使たちの叫びだった。だからこそ、魂をふるわされたのだ。
おれの人生はその頃、不安のかたまりだった。どうしていいのかがわからなかった。いや今もそうだ。そんなおれに彼らは不安のままでいい、そのままでいいんだというパワーを、必死に教えてくれたのだ。どんなにギンギンにショーアップされたロックンロールのRCよりも、暗い照明の中で、必死で生ギターをかきならし、必死で叫んでいる三人の男たち、今でも目をつぶると「九月になったのに」を必死に唄う三人の姿が目に浮かんでくる。必死に見えた、必死の三人組だった。彼らはぼくにとってのボロボロの天使たちだったのだ。
破廉ケンチのギター、忌野清志郎のギター、小林和生のウッドベース、そして3人の声が大合唱となる。
ただの学生だった頃から俳優、そして映画監督へと成長していく若者と、忌野清志郎との公私にわたる交友が始まったのは、竹中が多摩美術大学に入ってからのことだった。
古井戸の加奈崎芳太郎に紹介してもらって面識ができた竹中は、8ミリの自主映画を製作したときに、忌野清志郎に出演してもらうことが出来たのである。
ところが中央線の社内を撮影中に電車が揺れて、カメラが倒れて壊れてしまうアクシデントのために、その映画は結局のところ完成しなかった。
しかしそれ以来、ライブに行って顔を合わせると、「竹中、あの8ミリ映画はどうした?」と、声をかけてもらえるような関係になったという。
竹中はその言葉を胸に抱いて、いつか一緒に映画を作るんだと夢をふくらませてきた。そして1994年に監督した映画『119』で、ついに念願だった劇中音楽を担当してもらうことができたのである。それが日本アカデミー賞の最優秀音楽賞に選ばれて、喜びを分かち合うことにもなった。
その後も忌野清志郎は竹中が映画を撮るたびに、「竹中、映画を撮っているそうじゃないか。出番はないか?」と、いつも駆けつけてくれた。
2005年の『サヨナラCOLOR』ではゲスト出演したばかりか、竹中のたっての希望で主題歌「サヨナラCOLOR」をハナレグミとともに歌っている。
〈参照コラム〉国分寺三中の先輩・忌野清志郎と後輩・ハナレグミのデュエット~「サヨナラCOLOR」
「ボロボロの天使たち」はその後、ドラムを加えてエレキバンドを目指し、1977年にはオリジナル・メンバーの破廉ケンチが脱退している。
新生RCサクセションの快進撃が始まるのは1979年からだが、そこに至るまでの過渡期に記録された貴重なライブ音源からは、忌野清志郎が確かな方向性をつかみつつあることが伝わってくる。
「九月になったのに」LIVE 1976.12.7 京都府立体育館
<参考文献>竹中直人氏のエッセイ「九月になったのに」は、ロックンロール研究所編集「生卵―忌野清志郎画報」(河出書房新社) からの引用です。
(注)本コラムは 2017年9月1日に公開されました。

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