1960年1月10日、それはロッド・スチュワート15歳の誕生日の出来事だった。サッカー好きで、鉄道模型の収集が趣味で、いたって真面目な学校生活を送っていた少年に転機が訪れる。父親からクラシックギターをプレゼントされたのだ。
「俺が欲しかったのは木でできた鉄道模型の駅舎だったんだけど、なんで親父は俺へのプレゼントにギターがいいと思ったんだ? どっかで拾ったとか、安かったとか、理由は考えられるけどね(笑)。俺は不満気な顔をしつつも、その日からギターをいじるようになったんだ。学校でもギターを持ってる奴らがいたりして、イギリスではちょうど“スキッフル”が流行っていて、ロドニー・ドネガンが皆の憧れだった。俺の音楽キャリアの中で、最初に歌えるようになったがロニーの“Rock Island Line”という曲だった。」
1962年、17歳になったロッドは、一枚のレコードから大きな衝撃を受ける。ボブ・ディランのデビューアルバム『Bob Dylan』を聴いたその日、彼の音楽人生の扉が開いたのだ。
「大地を揺るがすような衝撃だったよ。あの一枚が俺の人生を変え、俺の周りの空気を一変させてしまったんだ」
「“Talkin’ New York”を聴いた瞬間、走ってその場所まで行きたくなったよ。広くて開放的なアメリカという可能性に満ちた世界を体験したくてね。後にも先にも、ディランの音楽ほど俺に影響を与えてくれたものはないよ」
ロッドはディランに魅せられ、自分もディランのように歌いたい!という衝動に駆られ、一本のギターを手に入れる。
「俺は貯金していた10ポンドと親父から借りた30ポンドで(ようやくまともにチューニングも合わせられる)Zenithのアコースティックギターを手に入れたんだ。ついでにハーモニカホルダーも買った。これでディランの曲は完璧にやれる!ってはりきっていたよ。だけど、知り合いからハーモニカは吹くだけじゃなくて吸ってもいいって指摘されたのは、それから一年くらい経ってのことだった(笑)」
当時、ロッドは父親の新聞販売店の店番を任されていた。真面目に働くふりをしながら父親の姿が見えなくなると、ドアに“閉店”の札をかけて、裏庭に行ってディランの曲をマスターするために、ひたすらギターを弾きながら過ごしていたという。
1963年、18歳になったロッドは、あるミュージシャンと運命的な出会いをする。
「ロング・ジョン・ボルドリーにはもの凄く世話になったよ。彼が俺を歌手にしてくれたんだ。存命中は彼のことを愛したし、亡くなったときは打ちひしがれたよ。財布にはいつも彼の写真を持ち歩いてたくらいで、正直な話、彼のことを考えない日なんてないんだ」
ある日、ロング・ジョン・ボルドリーが真夜中に駅のホームで酔っ払って歌っていたロッドを気に入り、まるで拾って帰るみたいにして、自身のバンドザ・フーチー・クーチー・メンに誘ったというのだ。
ロッドはそれから「スティーム・パケット」「ショットガン・エクスプレス」「ジェフ・ベック・グループ」「フェイセズ」「ソロ」と出世して、ロック界を代表するヴォーカリストへと成長していく。
ロング・ジョン・ボルドリーといえば、ロッドをはじめ、ローリング・ストーンズやジェフ・ベック、エルトン・ジョンなど多くの英国ミュージシャン達にとって、“兄貴分的”な存在として君臨していた歌手だった。
2メートルもある長身であったため、親しみをこめて”ロング”と呼ばれながら、英国ロック創成期を築いた人物の一人として知られた男である。
<引用元・参考文献『ロッド・スチュワート自伝』ロッド・スチュワート (著)中川泉 (翻訳)/ サンクチュアリ出版>
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執筆者
【佐々木モトアキ プロフィール】
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