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パーシー・スレッジを偲んで〜希代の名曲「男が女を愛する時」の誕生秘話

2022.04.14

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ビートルズが初来日し、武道館で行われた歴史的なコンサートに日本中の若者達が熱狂した1966年。
そのコンサートよりも数ヶ月前に、海の向こうのアメリカやカナダの音楽ファンを夢中にさせた名曲があった。
今日はアメリカの黒人歌手パーシー・スレッジ(享年74)の大ヒット曲「When a Man Loves a Woman(男が女を愛する時)」の誕生秘話をご紹介します。


「When a Man Loves a Woman」/パーシー・スレッジ


男が女を愛する時 他のことには見向きもしなくなる
たとえ悪い女でも、彼の目にはそう映らない
もし彼女を悪くいう奴がいたら 彼は自分の親友にさえ背を向ける


1966年の4月にシングルリリースされたこの歌は、発売の翌週からアメリカのR&Bチャートで4週間、全米チャートでは2週間に渡ってNo.1の座をキープし、隣国カナダでも同じく首位を独占した。
発売元のアトランティック・レコードではこれが3枚目の全米トップで、“初のゴールドディスク”となったという伝説のヒットソングである。
約20年の歳月を経て…同曲はイギリスで1987年にジーンズブランド“Levi’s(リーバイス)”のCMソングに起用され全英チャートでNo.2を記録する。
さらには、R&Bに深く傾倒しているアメリカの歌手マイケル・ボルトンが1991年にこの曲をカヴァーし、オリジナル同様、全米チャートでNo.1に輝くなど、まさに時代を超えて愛されつづけてきた“希代の名曲”なのだ。

「When a Man Loves a Woman」/Levi’s 501 コマーシャル (1987)


「When a Man Loves a Woman」/マイケル・ボルトン(LIVE)

パーシー・スレッジは、1940年11月25日(長く1941年生まれとされていたが、最近になって訂正された)アラバマ州レイトンの田舎で生まれた。
幼い頃からラジオでカントリーミュージックを聴きながら育ち、21歳になるまでプロの黒人歌手がいることを知らなかったという。
高校時代には野球の才能を開花させ、ハイスクールチームの選手として活躍していた野球少年だった。
しかし、卒業後は野球で生活できる訳でもなく、しばらくはブルーカラー(労働者)の仕事をしていた。 
そして1965年の終り頃、彼に二つの不運が訪れる。
ある日突然、働いていた職場から解雇を言い渡され彼は職を失ってしまう。
さらに、当時交際していた女性がモデルを夢見てカリフォルニアに旅立ってしまい、彼は捨てられた恰好となった。
職も恋人も失ってしった彼は、悲しみに暮れながらも“溢れる気持ち”をノートに書きとめて、浮かんできたメロディに乗せてみたという。

男が女を愛する時 最後の10セント硬貨を使い果たしても
必要なものを繋ぎとめようとする
もしも彼女に言われれば 彼はすべての安らぎをあきらめ
雨の中で寝ることも厭わない


曲の原型が出来たときのタイトルは「Why Did You Leave Me Baby」(ベイビー!どうして俺を捨てたんだよ!)だったらしい。
その後、アラバマ州シェフィールドの病院で雑用の仕事をするようになった彼は、患者を慰めるために歌を唄うようになった。
そして、週末は The Esquires Combo (エスクァイアーズ・コンボ)という地元のグループと共に、南部の地方の小さなクラブなどでも歌い始めたのだ。 
そんな日々を過ごす中、25歳となった彼に転機が訪れる。
当時、病院で歌っていたことがちょっとした評判となり、地元の音楽プロデューサー(クイン・アイヴィー)が彼に声をかけてきたのだ。


クインの紹介で、彼は大手レコード会社(アトランティック)のオーディションを受けるチャンスを掴み、その誠実な人柄が認められ契約を交わすこととなる。
「契約したばかりのパーシーの歌声を早速レコーディングしよう!」と、トントン拍子で話しがまとまってゆく。
そこで選曲された歌が、あの失意の時期に紡いだ「Why Did You Leave Me Baby」だったのだ。
職を失い、彼女に去られてしまったという実体験に基づいて書かれたトーチソング(失恋歌)は、新たに「When a Man Loves a Woman」というタイトルに生まれ変わり、たった数週間の間でレコーディングの準備が整えられた。
そして1966年の2月、いよいよその楽曲を録音するにあたって、リック・ホールからプロデューサーでギタリストでもあるマーリン・グリーンを紹介してもらい、優れたミュージシャンたちが集められたのだ。

【参加ミュージシャン】
スプーナー・オールダム: Organ
マーリン・グリーン : Guitar
アルバート “ジュニア” ロゥ: Bass
ロジャー・ホーキンス: Drums


実はレコーディングされるギリギリまで、この曲の歌詞は完成しておらず、パーシーがアドリブで言葉を乗せながら歌っていたという。
手練の演奏者たちによって誕生した入魂の一曲は、完成と同時に、関係者の誰もがヒットを確信したという。
律儀で誠実なパーシーは、アマチュア時代を共に過ごしたグループ(エスクァイアーズ・コンボ)のメンバー、カルヴィン・ルイス(Bass)とアンドリュー・ライト(Keyboards)が、もともと曲作りに貢献してくれていたという理由で、楽曲の権利を二人に与えた。 
本当の作詞作曲者である彼の名前がクレジットされていないのは、そういった経緯からだった。

男が女を愛する時  
僕のものなら何でも君にあげるよ
大切な君の愛を繋ぎとめたいんだ
ベイビー、お願いだから意地悪しないでくれ


こうして彼は、億単位の印税収入を手に入れることなく、有名になっても南部人らしい地に足のついた生活を送っていたという。
楽曲の著作権に関して、彼は後日談でこんなことを語っている。

「本当はちょっと後悔しているよ」
「あの曲の権利を持っていたら、子供にもう少しいい暮らしをさせてあげれたと思うから…」



彼はいつも和やかに微笑んでいたという。
その飾らない笑顔が彼の人柄、そして人生のすべてを物語っているようだ。
素晴らしい名曲と歌声をありがとう。



こちらのコラムの「書き手」である佐々木モトアキの音楽活動情報です♪
宜しくお願い致します。






『山部“YAMAZEN”善次郎×佐々木モトアキ ダブルネーム弾き語りTOUR “ちょっと長い関係の歌旅2022”】


3月25日(金)広島LIVE café Jive
3月26日(土)岡山Desperado
3月27日(日)徳島Music Bar Ricky
4月15日(金)小郡ジラソーレ
4月16日(土)熊本八代7th chord 
4月17日(日)大牟田 陽炎
4月21日(木)仙台HIGHBURY
4月22日(金)福島Harvest
4月23日(土)岩手・二戸 HOUSE OF PICNIC 
4月24日(日)秋田・湯沢BASEMENT
4月28日(金)東広島pasta amare 
4月30日(土)福岡Bassic.(ライブ&スペシャルスライドショー)

↓チケットご予約&公演詳細・共演者情報はこちら
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12713121312.html





【佐々木モトアキ×Keith “唄うたいと雷神”】

6月18日(土)金沢JealousGuy
6月19日(日)富山・高岡GOOD FELLOWS
6月25日(土)高円寺MOONSTOMP
7月22日(金)青森Be on café 222
7月23日(土)岩手・二戸 HOUSE OF PICNIC 
7月24日(日)秋田Yuki’s Hookah Bar(昼公演)
7月24日(日)秋田Yuki’s Hookah Bar(夜公演)

↓チケットご予約&公演詳細・共演者情報はこちら
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12733597546.html






【歌ものがたり2022 雨ニモマケズ風ニモマケズ】



4月2日(土)兵庫・宝塚 IL grazie
4月3日(日)京都・四条大宮高辻 夜想 
4月9日(土)茨城・古河LIVESTATION ”L” 
5月3日(火・祝)福岡・みやま市 暖古扉(だんぶるどあ)
5月4日(水・祝)大分・日田Chewing Gum
5月14日(土)横浜Bar Brixton Market
5月15日(日)静岡・三島 ぐらBar’s
5月21日(土)群馬・前橋 呑竜横丁 
5月27日(金)名古屋ROLLINGMAN
5月28日(土)和歌山OLD TIME
5月29日(日)大阪 大きな輪
6月3日(金)小倉Bar Disa
6月4日(土)福岡Bar KINGBEE
6月5日(日)行橋Rock ‘n Roll Bar Memphis
6月10日(金)広島Jammin’ bar
6月11日(土)広島・呉Albatross
6月12日(日)岡山Record BAR COZY
6月17日(金)新潟Gallery Bar Veronica
7月2日(土)北九州・黒崎 居酒屋 中村屋
7月3日(日)大分・宇佐 音小屋REBOOT
7月9日(土)佐賀 雷神 
7月10日(日)長崎 タンゲ食堂

↓チケットご予約&公演詳細・共演者情報はこちら
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12733736025.html





佐々木モトアキの楽曲「You」のミュージックビデオです♪
映像編集、ポートレート(写真)撮影共に、佐々木モトアキ本人が手掛けております。
とてもシンプルな技法ですが、何よりも登場する皆さんの表情が素敵です✨
人が“目を閉じている”表情。
その“瞼(まぶた)に浮かんでいる”誰かの顔。
繋がってゆく“一人ひとりの想い”が、100通りの、いや1000通りのドラマを描いてくれています。





佐々木モトアキ
執筆、動画編集、音楽・食・商品・街(地域)に関わるPRなどなど…様々なお仕事承ります。

例えば執筆・編集のお仕事として、、、
「ロック」「ジャズ」「ブルース」「R&B」「シャンソン」「カントリーミュージック」「フォークソング」「歌謡曲」「日本の古い歌」など、ほぼオールジャンルのページ企画・特集に対応いたします。
ライブイベントの紹介・宣伝文や、アーティストの紹介文なども対応できます。
音楽以外のライティングとして、WEBページの作成・リニューアル、各種パンフレット作成に伴う「店舗のご紹介」「メニューご紹介」「企業・会社のご紹介」「商品のご紹介」などなど様々なPRに関わるお仕事も承ります。


音楽、人、食、商品、街(地域)…私たちが関わるものすべてには“ものがたり”があります。
あらゆるものに存在する、ルーツや“人の想い”を伝えながら「誰が読んでもわかりすい読み物」をお作りいたします✒︎
お気軽にご依頼のご相談・ご連絡ください♪
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090-2669-2666

【佐々木モトアキ プロフィール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12648985123.html

【TAP the POP佐々木モトアキ執筆記事】
http://www.tapthepop.net/author/sasaki

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