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デヴィッド・ボウイ追悼~センセーションとクリエイションを極めた男~

2016.01.12

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2016年1月10日、デヴィッド・ボウイが旅立った。
日本時間では、1月11日15時30分に更新されたFacebookの公式アカウントで「18ヶ月におよぶ癌との勇敢な闘いの末、家族に見守られながら静かに死去しました」と告知された。
ボウイは1月8日、69歳の誕生日に通算25作目となるニュー・アルバム『★(Blackstar)』をリリースして、最新のミュージックビデオも公開されたばかりだった。


Look up here, I’m in heaven
I’ve got scars that can’t be seen
I’ve got drama, can’t be stolen
Everybody knows me now
Look up here, man, I’m in danger
I’ve got nothing left to lose

見上げてみな、俺はここ、天国にいる
俺には傷跡がある、見えないけど
ドラマがある、決して奪えない
今や皆が俺を知っている
見上げてくれよ、もう死にそう
失うものなんてもう無い

〜中略〜

This way or no way
You know, I’ll be free
Just like that bluebird
Now ain’t that just like me

こうでもしないと
ね、俺は自由になれないのさ
あの青い鳥みたいに自由に
俺っぽいだろ


<和訳詞引用元・似非る手記>
http://nihilnote.blog.fc2.com/blog-entry-166.html


アルバム『★(Blackstar)』 の第2弾先行シングル「Lazarus(ラザロ)」は、1976年の映画『地球に落ちて来た男』でデヴィッド・ボウイが演じたホームシックの宇宙人、トーマス・ジェローム・ニュートンの目線で描かれているという。
“ラザロ”とは、聖書に登場するイエスが蘇生させたユダヤ人の男である。
このミュージックビデオに出てくる顔の覆いや白い服、そしてラストシーンでクローゼットの中に戻ってゆくボウイの姿は、洞穴に葬られたラザロのイメージと重なってゆく…。

<新約聖書―ヨハネによる福音書11章・ラザロの復活>
http://art.pro.tok2.com/Bible/CLater/17Lazarus/17Lazarus.htm

lgp01a201311290600


1970年代初頭、ビートルズという一つのアイコンを失ったロンドンの若者たちは、新たなポップスターの出現を待望していた。
そして彼らが選んだのは、妖艶なメイクを顔に施し、ラメやスパンコール、孔雀の羽根などを身にまとう中性的な魅力に満ちたグラマラスで神秘的な男たちだった。
突如として出現した“彼ら”の姿は、かつてのビートルズのマッシュルームカットなどを“昔のもの”にしてしまう程のインパクトを持っていた。
──デヴィッド・ボウイとマーク・ボラン。
共に1947年生まれのロンドンっ子である。
少年時代はエルヴィス・プレスリーやリトル・リチャードのロックンロールに夢中になり、ハイティーンの頃には映画『さらば青春の光』に登場する青年のごとく“スインギンロンドン”のお洒落なモッズで、両者ともこの頃から音楽活動をスタートしたという。
そのすぐ後に、ボブ・ディランやドノヴァンから影響を受けて、典型的なヒッピーの格好をしてフォークを歌うこととなる。


1969年、ボウイ、そしてボラン率いるティラノザウルス・レックス(後のT・REX)は、共に若きプロデューサー、トニー・ヴィスコンティ(※遺作となったアルバム『★(Blackstar)』のプロデュースも担当)のもと、地味にフォークロックを奏でていた。
ちょうどこの頃に公開され世界中に衝撃をあたえたスタンリー・キューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』の洗礼受けて、22歳のボウイは“コズミック・フォーク”とも言える2ndアルバム『Space Oddity』を発表する。
そこで彼は自分を映画で観た主人公に重ねて、世に絶望し漂流するさまを描く。
この楽曲とアルバムで初のヒットを記録し、彼は一躍時代の寵児に祭り上げられることとなる。
彼は当時のプレッシャーや、兄テリーの精神病の悪化、家庭の崩壊なども重なり、一時的に活動を停滞させてしまう。
しかし、当時「Get It On (Bang a Gong)」などのヒットでエレキギター全開のサウンドで一世を風靡していたマーク・ボランに刺激を受けた彼は、ハードなロックサウンドを取り入れて創作意欲を燃やす。
そして1971年、3rdアルバム『The Man Who Sold The World(世界を売った男)』を発表。
ドレスを纏い女装してカウチソファーに身を横たえたジャケットは、大いなる論議の的となった。
このアルバムのプロモーションのためにボウイは初めてアメリカへと渡り、そこでルー・リードやイギー・ポップと運命的な出会いを果たす。
この翌年、ボウイは自分がバイセクシャル(両性愛者)であることを公言し、世間の度肝を抜いた。
その頃のイギリスでは同性愛は犯罪であったし、女装姿を公にすることなど考えられないことだった。
今とは違って当時は、それだけ価値観も画一的なものであったし、社会規範、モラルの締めつけは厳しく、ローリングストーンズが警察をはじめとした権力に何かと目の敵にされたりしたのも、こうした構造が背景にあったからだ。
そんな渦中、さらに彼は自らを“宇宙からやってきたロックスター”というコンセプトのもと「ジギー・スターダスト」と名乗り、同名のアルバムを発表する。
それは5年後に地球が破滅するという設定で、ジギーが救世主・悪魔・天使・受難者となり、センセーションを巻き起こして去ってゆくというSF物語だった。
そこには、地球に住む人類に対する警告メッセージも込められていた。


ボウイやボランを中心に、ロキシー・ミュージック、ゲイリー・グリッター、スレイド、スイート、そしてクイーンなど登場でイギリス全土が“グラム熱”に冒されている真っ最中の1973年7月、彼はロンドンでの公演を最後にジギーを封印することを宣言する。
この突然の“幕引き”は、またしてもシーンに大きな衝撃をあたえ、一大ブームとなっていたグラムロックの勢いを一気に失速させることとなった。

彼はその後も、ある時は“未来社会の半身半獣(ダイヤモンドの犬)”を演じたり、アメリカに渡ってソウルを歌う“シン・ホワイト・デューク(痩せた青白き公爵)”になりきったり、ロキシー・ミュージックを脱退したブライアン・イーノや、イギー・ポップとコラボレーションするなど、多彩な変身ぶりでファンを魅了してゆく。
80年代に入り14thアルバム『Let’s Dance』の大ヒットで、彼は名実共にスーパースターの座を手に入れるが、一方でカルト的な信者たちから失望される時期も経験する。
90年代、そして21世紀になっても(長く期間をおくこともあったが)彼は良質な作品を発表し続けてきた。
その唯一無二の存在感、探求と挑戦をし続ける姿勢、音楽、アート、ファッション、ソサエティにおいて境界線を押し広げようとした彼の音楽人生は“最期の一日”までクリエイティブだった。

世界を興奮させた多くのセンセーションとクリエイションをありがとう。
世界中の音楽ファンは、永遠に貴方の存在を忘れることはないでしょう。

Look up here, I’m in heaven
I’ve got scars that can’t be seen
I’ve got drama, can’t be stolen

見上げてみな、俺はここ、天国にいる
俺には傷跡がある、見えないけど
ドラマがある、決して奪えない


bowie ※こちらの写真は、彼が亡くなる二日前にカメラマン、ジミー・キングが公開したもの



【イギー・ポップの追悼コメント】
「デヴィッドとの友情は最愛のものだった。あんな眩しい人は会ったことがない。彼は最上の人だったんだ。」

【ザ・ローリング・ストーンズの追悼コメント】
「ザ・ローリング・ストーンズは、我が親愛なる友人デヴィッド・ボウイの訃報を知り、ショックで悲しみに包まれている。彼は素晴らしく、優しい人だったと同時に、類まれなアーティストで、本物のオリジナルだった。」

【ポール・マッカートニーの追悼コメント】
「雨が降る朝、とても悲しい知らせで目覚めた。デヴィッドは偉大なスターで、僕は彼と過ごしたときを大切に思っている。彼の音楽は、ブリティッシュ・ミュージック史上極めて重要な存在であり、彼が世界中の人々に大きな影響を与えたことを考えると誇らしい。彼の家族にお悔やみ申し上げます。僕は、彼と共有した笑いの数々を忘れない。彼の星はこの空で永遠に輝き続ける。」

【トニー・ヴィスコンティの追悼コメント】
「彼はいつだってやりたいことをする人でした。そして、自分のやり方で、ベストな方法でやろうとする人でした。彼の死も、彼の人生や、アートとしての作品と違いはありません。わたしたちのために彼は別れの贈り物として『★(ブラックスター)』を作ってくれました。こうなるであろうことは1年間のほど知っていました。しかし、わたしは準備ができていなかったのです。彼は桁外れの人物でしたし、愛と生活に溢れていました。彼はわたしたちと共にいてくれるでしょう。ただ、今は泣くときなのでのです。」

デヴィド・ボウイ『★』

デヴィド・ボウイ『★』

(2016/ SMJ)

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