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カート・コバーンが誇りにしたMTVアンプラグドでのパフォーマンス

2019.04.09

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『MTVアンプラグド』は様々なミュージシャンがプラグを使用せず、つまりはアコースティックで演奏を披露する番組だ。
1992年にエリック・クラプトンが出演した際にそのパフォーマンスが話題となったことによって、MTVの看板番組となった。(詳しくはこちらのコラムで

そんな人気番組が1992年の秋にオファーを送ったのが、若者たちから絶大な支持を集め、MTVビデオミュージックアワーズを受賞した経歴を持つ3人組のバンド、ニルヴァーナだった。
ドラムのデイヴ・グロールは、出演前に抱いていた番組の印象についてこう話している。

「アンプラグドは観たことあったけど、大半の演奏は好きじゃなかったな。
だって、あいつらマジソン・スクエア・ガーデンにいるかのような振る舞いで自分たちのヒット曲をやってるんだぜ。
違うのはアコースティックギターってことだけさ」


メンバーの目には、アンプラグドでやることの意味、本質といったものを理解せず、ただ商業主義に走っているだけの番組のように映った。
そのような番組に出演することが果たしてバンドにとってプラスになるのか、メンバーは慎重に話し合う。
結果として3人は出演することを決めたのだが、それは同時に『MTVアンプラグド』に相応しいステージとはどのようなものなのか、それを模索する日々の始まりでもあった。

彼らはセットリストを組むにあたり、自分たちの曲のほかにデヴィッド・ボウイの「世界を売った男)」やブルースの巨人、レッド・ベリーが残した「ホエア・ディド・ユー・スリープ・ラスト・ナイト?」など、カバー曲を何曲か取り上げている。
そしてその中に、彼らの大ヒット曲である「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」は入らなかった。
この曲を演奏することに辟易していた彼らにしてみれば、外すのはごく自然の成り行きだった。

ゲストには、カート・コバーンがミート・パペッツを呼びたいと提案した。
ミート・パペッツは1980年から活動している3人組のバンドで、ニルヴァーナに音楽のレクチャーをしたり、ジョイント・ツアーをしたりしている間柄だ。
カートもファンの1人であり、セットリストには彼らの曲も入っていた。

バンドのこうした提案に対して、番組制作のスタッフたちは了承してくれたものの、MTVの役員はいい顔をしなかった。
彼らが求めていたのは話題のミュージシャンが大物ゲストと一緒に、大ヒット曲を披露するというステージだったからだ。それが確実に視聴率をとる常套手段だった。
そういった商業主義的な方向に背を向けて、自分たちの音楽と真摯に向き合うニルヴァーナに対し、役員たちは不満を募らせるばかりだった。

本番を1週間後に控えたある日、プロデューサーのアレックス・コレッティがカートのところへ、ステージのイメージを確認しにいくと、カートは「ロウソクとユリの花を用意してほしい」と要求する。
アレックスが「葬式の時みたいにかい?」と尋ねるとカートは「ああ、まさにそんな感じだ」と答えた。
こうしてそれまでの『MTVアンプラグド』とは一線を画した、特別なステージが準備されていくのだった。

収録は11月18日、ニューヨークのソニー・ミュージック・スタジオで行われた。
カートの要望通りにロウソクやユリの花が飾り付けられた舞台で、普段の荒々しいサウンドと叫ぶようなヴォーカルを封印し、アコースティックなサウンドとカートの歌声によってメロディーや言葉が会場に響き渡った。
その純潔性に満ちた音楽に涙した観客もいたという。



その模様は12月16日に放送され、商業主義に屈することなく自分たちの音楽を貫きながら、それまでのニルヴァーナとは違う新たな一面を見せたことで、大きな反響が寄せられた。

後年、マネージャーだったダニー・ゴールドバーグは、カートが『MTVアンプラグド』でのステージにとても満足していたことを証言している。

「カートが収録のあとで電話をかけてきたんだ。
彼は『とても誇りに思っている。今までで最高の出来で、きっとバンドが広いオーディエンスにアピールするチャンスになる』と言ってたよ」


ニルヴァーナはその後、カートが翌1994年4月に自らの生涯にピリオドを打ったことによって活動停止となった。
だが、同年11月1日、MTVでのライブを収めた『アンプラグド・イン・ニューヨーク』がリリースされると、カートを失い活動停止となったニルヴァーナにチャート1位という栄誉をもたらすのだった。

Nirvana『Unplugged in New York』
Geffen Records


(このコラムは2015年6月9日に公開されたものに一部改正を施したものです)

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