aretha&curtis

TAP the LIVE

カーティスの曲を完璧に歌い上げたアレサ・フランクリンの名唱

2016.08.16

Pocket
LINEで送る

1990年8月13日、アメリカの音楽シーンを揺るがす凄惨な事件が起きた。
ブルックリンの屋外でコンサートをしていたカーティス・メイフィールドが、強風で倒れてきた照明塔の下敷きになり、重症を負ってしまったのだ。

カーティスはマーヴィン・ゲイやダニー・ハサウェイらと並んでR&Bシーンを牽引してきた1人だ。
天性の歌声に加えて編曲やプロデュースなど幅広い分野で才能を発揮し、ソウルやR&Bにとどまらず、幅広いジャンルのアーティストたちに多大な影響を与えてきた。
代表曲の1つである「ピープル・ゲット・レディ」はジェフ・ベック&ロッド・スチュワートのバージョンをはじめ、ボブ・ディランやボブ・マーリィ、日本ではハナレグミなど、世界中で数えきれないほどカバーされている。



カーティスは一命を取り留めたものの、下半身麻痺という深刻な後遺症が残ってしまい、かつてのようにギターを弾くこともできなくなってしまった。

そんなカーティスを励ますために制作されたトリビュート・アルバム、『オール・メン・アー・ブラザーズ~カーティス・メイフィールド・トリビュート』がリリースされたのは、1994年の2月のことだ。
アルバムにはスティーヴィー・ワンダーやエリック・クラプトン、B.B.キング、エルトン・ジョン、ブルース・スプリングスティーン、レニー・クラヴィッツ、ホイットニー・ヒューストン、ロッド・スチュワートなど、錚々たる顔ぶれが参加しており、その名前を見るだけでも、カーティスがいかに多くのアーティストから尊敬され、愛されているかが伝わってくる。

MI0003575379

中でもカーティスと親交の深かった1人がアレサ・フランクリンだ。
その存在と影響の大きさについて、アレサの姉でシンガーでもあるアーマ・フランクリンはこう語る。

「わたしたちは彼をジェントル・ジャイアント[心優しき/温厚なる巨匠/偉人、の意]と称し、現代のデューク・エリントンだと思っていました」


1976年にアレサがリリースしたアルバム『スパークル』では、カーティスがプロデュースを手がけている。楽曲も全てカーティスの書き下ろしによるものだった。
アルバムは全米で50万枚以上を売り上げ、アレサにとって4年ぶりのゴールド・ディスクを獲得する。当時やや低迷していたアレサの人気を取り戻すきっかけを作ってくれたという意味でも、アレサにとってカーティスは特別な存在だった。
カーティスが大怪我をする前には、また2人でアルバムを作ろう、という話もしていたという。



トリビュート・アルバムの中でアレサが歌ったのは、カーティスのソロ・デビュー・アルバム『カーティス』に収められている「ザ・メイキングス・オヴ・ユー」だ。

ラジオDJや司会者として人気を博すドニー・トンプソンのテレビ番組『ヴィデオ・ソウル』に出演した際には、トークの流れからこの歌を生で披露している。
収録場所はアレサの自宅。ドニーに「ザ・メイキングス・オヴ・ユー」を歌ってほしいと頼まれると、最初の1~2行だけ歌ってくれないかしら、とアレサは答える。
そしてピアノを弾きながら交互に歌い、調子を掴んだアレサは改めて歌い始める。

ほんの少しの砂糖にスイカズラの花
それと満面の幸せそうな表情
ああ、バラの花束も忘れちゃいけない
君を驚かせるくらいのね
周りには笑顔の子供たちによる歓喜

これらによって君はできているんだ
本当さ
これらによって君はできているんだ


かつてプロデュースを務めたジェリー・ウェクスラーによれば、ピアノを弾きながら歌うときのアレサには特別な力が宿るという。

「アレサを鍵盤の前に陣取らせておくと、パフォーマンス全体がさらに強力かつ有機的になる。アレサ自身が自らのリズム・セクションになり、猛烈なパワーが彼女の中から流れ出てくるんだ」


『ヴィデオ・ソウル』でのパフォーマンスについて、かつてアレサの自叙伝を手がけたデイヴィッド・リッツは、評伝『リスペクト』でこう綴っている。

このときの、聖なる世俗性に包まれたアレサは、カーティスの曲の完璧な表現者だった。




1996年、カーティス・メイフィールドは多くの励ましに応え、最後にして至高のアルバム『ニュー・ワールド・オーダー』で奇跡的な復活を果たす。それは亡くなる3年前のことだった。




『Tribute to Curtis Mayfield』


参考文献:『アレサ・フランクリン リスペクト』デイヴィッド・リッツ著/新井祟嗣訳(シンコーミュージック・エンターテイメント)

Pocket
LINEで送る

スポンサーリンク

関連アーティスト

関連するコラム

[TAP the LIVE]の最新コラム

このコラムへの感想・コメントを書く

Pagetop ↑