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ヒッピーの聖地へと向かう途中で生まれたレッド・ツェッペリンの「カシミール」

2018.03.01

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「私のお気に入りの1曲だ。詩的に、とてもポジティヴな歌だ」

 ロバート・プラントはレッド・ツェッペリンが1975年に発表した「フィジカル・グラフィティ」に収録されている「カシミール」について、そう語っている。そしてジミー・ペイジは、ツェッペリンで最高のリフは、と聞かれて、この曲をあげている。

 カシミール。
 その地は、インドの北部とパキスタン北東部の国境地帯の山岳地にある。カシミアの産地として有名な場所だ。



 だが、ロバート・プラントがこの曲の歌詞の着想を得たのは、サハラ砂漠を車で横断している時だった。
 1973年、ロバート・プラントとジミー・ペイジはモロッコで開かれるナショナル・フォルクローレ・フェスティバルに向かっていた。
「私はジミーとモロッコの大西洋岸を、アガディールからシディイフニに向かって走っていた」と、ロバーロ・プラントは言う。

「私たちはまさに、ヒッピーたちと同じルートを辿っていたのさ」



 モロッコ南西部に位置するアガディールは、1505年にポルトガル人の手で開発され、貿易の拠点となった港町である。だが、何故、ヒッピーなのか?
 1960年代から70年代にかけて、欧米の若者たちは、世界を旅して回ったものだった。
 17世紀にブームとなったグランドツアーは、英国の裕福な家庭の子息が、卒業旅行にと、フランスやイタリアを訪ねるものだったが、ラブ&ピースの時代に流行った世界旅行は、ヒッチハイクでアジアやアフリカに向かうのが常だった。
 ロバート・プラントとジミー・ペイジがサハラ砂漠を走っていた1973年、ひとりの青年が一冊の旅行記を出版している。



 彼の名は、トニー・ウィーラー。彼は妻モーリーンとロンドンからミニ・バスで新婚旅行に出かけたのである。旅行記を出版する1年前の話だ。「安上りアジアの旅」と題されたその本は当初、自費出版されたものだが、人気を呼び、世界各国で出版されることになる。現在も続くトラベル・ガイド「ロンリー・プラネット」誕生の瞬間である。

 トニーとモーリーが新婚旅行に出かけた1972年、カントリー・シンガーのダニエル・ムーアが「シャンバラ」という楽曲を書き上げている。シャンバラ、とはヒマラヤ山脈のどこかにある伝説の楽園である。若者たちは楽園を求めていた。そしてこの曲は翌1973年、スリー・ドッグ・ナイトが歌い大ヒットさせている。

 モロッコの町、シディイフニもまたヒッピーの聖地であった。ロバート・プラントはその地に向かう車の中で、ヒッピー街道を行く若者たちを想っていたのだ。





Led Zeppelin『Physical Graffiti』
Atlantic Records

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