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TAP the SCENE

欲望〜スウィンギング・ロンドンと60年代ポップカルチャー

2016.12.18

1960年代のある特定の時期(つまり1965年〜67年頃)におけるロンドンは「スウィンギング・ロンドン」と呼ばれて、間違いなく世界のポップカルチャーの中心だった。それはファッション、デザイン、映画、文学、アート、写真、そして音楽などに携わる人々やそれらを支持する人々が醸し出した一つの確固たる文化革命ムードであり、ロンドンが最も輝いていた時代として今でも伝説のように語られる。

それまでヨーロッパではパリがモードやカルチャーの権威だった。しかし、この時期はロンドンに眩しいくらいのスポットライトが当たる。その起爆剤になったのは「若者」「音楽」「ファッション」の三つだった。第二次世界大戦後のベビーブームの影響で、60年代はティーンエイジャー人口が増加。その消費力はいよいよ無視出来なくなってくる。いわゆる「ティーンエイジャー」という存在が都市ロンドンでも浮上して、コリン・マッキネスの小説『アブソリュート・ビギナーズ』(アラン・シリトー『土曜の夜と日曜の朝』をはじめとする“怒れる若者たち”の作家の一人)で描かれたようなモッズ族が全盛期に入る。

“完璧な10代のライフスタイル”を追求したモッズたちはドラッグをやり、イタリアン・ルックに拘り、何よりも音楽を愛した。モダン・ジャズ〜R&B〜ロンドンのビートバンド〜モータウン・ソウル〜ブルービート/スカといった彼らがクラブで聴いて踊りまくった音楽は、そのまま「スウィンギング・ロンドン」のサウンドトラックと言える。

大人気だったTV番組『レディ・ステディ・ゴー』でザ・フーやヤードバーズはTV初出演を果たしたし、ローリング・ストーンズ、ビートルズ、キンクス、スモール・フェイセズ、エリック・クラプトン、ロッド・スチュワート、デヴィッド・ボウイ、スティーブ・ウィンウッド、ダスティ・スプリングフィールド、マーク・ボラン、ジミ・ヘンドリックス、ピンク・フロイド、ドノヴァンもすべてが「スウィンギング・ロンドン」の一部だった(イミディエイト・レーベルも)。

ファッション界ではミニスカートとボブ・ヘアーが革命を起こした。デザイナーのマリー・クワントやピエール・カルダン、あるいはヴィダル・サスーン。ジーン・シュリンプトン、ツィギー、アニタ・パレンバーグ、マリアンヌ・フェイスフル、パティ・ボイドといった可憐なモデルたち。「ヒズ・クローズ」「ビバ」「バザール」などの最先端のブティック。ピート・タウンゼントのユニオン・ジャックのジャケットも「スウィンギング・ロンドン」だ。ストーンズのプロデューサーだったアンドリュー・オールダム、のちにセックス・ピストルズを仕掛けるマルコム・マクラーレンも、みんなこの空気を吸い込んでいた(ドラッグの「パープル・ハーツ」も)。

しかし、ヒッピー/LSD文化の浸透やポップスターの相次ぐドラッグ逮捕劇、そして英国が経済不況に覆われ始めると、時代のスポットライトは「スウィンギング・ロンドン」からアメリカ西海岸サンフランシスコへと移っていく。こうしてロンドンは70年代のグラム・ロック到来まで、ポップカルチャーの主役の座を再びアメリカに譲ることになった。

「スウィンギング・ロンドン」のムードを記録した映画は『ナック』『OO7』をはじめ何本か存在するが、最も有名なのはイタリアの巨匠・ミケランジェロ・アントニオーニ監督による『欲望』(BLOW-UP/1967)だろう。主役は売れっ子カメラマンという設定で、これはストーンズのレコード・ジャケットや雑誌ヴォーグのファッションを撮ったカメラマン、デビッド・ベイリーがモデルになったと言われている。

音楽はモダンジャズ・ピアニストのハービー・ハンコックが担当。本作ではR&Bっぽいオルガン・ジャズを披露して、ロンドンの全盛期を見事に音にして表現してくれている。若かりしジェーン・バーキンも出演。なお、ジェフ・ベックとジミー・ペイジ在籍時のヤードバーズのライブ演奏も記録されていて話題になった。

物語は売れっ子カメラマン、トーマス(デヴィッド・ヘミングス)の日常や仕事を描きながら、たまたま通り掛った公園で撮影した不倫カップルの写真に、殺人の証拠が移り込んでいるというもの。トーマスが現場を再訪すると、そこには死体が転がっていた……とにかく「スウィンギング・ロンドン」のムードをこの上なく満喫出来る作品だ。

ヤードバーズの演奏シーン


ファッション写真の撮影シーン


『欲望』サウンドトラック

『欲望』サウンドトラック


『欲望』

『欲望』

*日本公開時チラシ
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*このコラムは2015年1月21日に公開されました。

この機会にぜひお読みください!
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