TAP the SCENE

ドゥ・ザ・ライト・シング〜無関心のままじゃヤバイんだよ、そろそろ真剣になろうぜ

2016.06.30

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なあ、みんな、俺たちは同じ人間なんだぜ。
だけどどこかが違ってる。
目を覚ませ、無関心のままじゃヤバイんだよ。
一体何事だ?ってお前らはそう問いかけるけど、
そろそろ真剣になろうぜ。
俺たちなりの自己防衛を本気で考えよう。
お遊び気分の連中をつまみ出せ。
あとはお前らの意識の問題さ。
俺たちをがんじがらめにする圧力と闘うために、
世の中が目を覚まさなきゃ。
お前らも声を大にして叫んでくれよ。
俺たちを虐げ続ける権力と闘おうぜ。


パブリック・エナミーの「Fight the Power」が全編に鳴り響く映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』(Do The Right Thing/1989)は、「黒人の映画監督として黒人たちのために映画を作る」と断言したスパイク・リー監督による4作目だった。『ジョーズ・バーバーショップ』『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』『スクール・デイズ』を経て、遂に人種差別と向き合ったこの作品は、権威筋がお決まりの無視を決め込むのを横目に、その年のカンヌ映画祭や世界中のヒップな人々の間で大絶賛された。

それにしてもこのラップ、今の日本に間違いなく漂っている空気感とシンクロするような気がしてならない。しかし、当時はバブルの絶頂期。ヒップホップ/クラブカルチャー、ファッションなどに興味のある一部の若者たちが劇場に詰めかけていたことを覚えている。それでも立ち見が続出するくらい、この映画は熱かった。

物語はブルックリンのスタイヴェサント通りのレキシントンからクインシーまでという、たったワンブロックの中だけを設定。スパイク曰く「そこには貧困、失業、麻薬など、都市の不幸がすべて揃っていたから」。女の子がボクサーのファイティングポーズやパンチを繰り出しながら踊るオープニングは、これから観る者に過激な出来事を予感させるが、物語が始まると、不器用な登場人物の誰もが、実は愛と憎み(LOVE/HATE)の狭間で揺れていることに気づく。

サルは潜在的人種差別主義者かもしれないけど、彼は人種差別主義者じゃないんだ。ムーキーは将来のことなんて考えちゃいない。彼は親友のラジオ・ラヒームに起こることを目の当たりにする時だけ、政治的になるんだ。


うだるような暑さ、ブルックリンの一角。小さなラジオ局DJ(サミュエル・L・ジャクソン)の「目を覚ませ!」がモーニングコールとなってベッドから気怠そうに起き上がるムーキー(スパイク・リー)は、妻子がある身にも関わらず、妹の家に居候しながら長続きしないフリーター生活を送っている。通りを歩くと、市長と呼ばれる飲んだくれの男から「まともになれよ!(正しいことをしろよ)」(Do The Right Thing)と言われる始末だ。

ムーキーのバイト先は、イタリア人のサル(ダニー・アイエロ)と息子たちが経営するピザ屋で、壁にはフランク・シナトラ、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノなど、イタリア系の写真が飾られたウォール・オブ・フェイムが広がっている。サルはこの地で20年以上も商売をしていて、近所の黒人やヒスパニックの若者たちが自分のピザで腹を満たして成長したことを誇りに思っている。しかし、長男は1日も早く店を売り払って別の場所へ行きたいと告白する。

一方、活動家気取りでエア・ジョーダン・マニアのバギン・アウトは、サルの店の壁に黒人の写真が1枚もないことに不満を抱いている。ここは黒人街で客も黒人ばかりなのにおかしいだろ?というのが彼の持論だ。さらに、いつも巨大なラジカセを抱えてパブリック・エナミーを流しているラジオ・ラヒームは、その大音量のせいでサルの店で入店拒否にあう。二人はボイコットすることで意気投合する。

その他、街を見守っているマザー・シスター、偉大な黒人指導者の写真を持ち歩く若者、下世話な話や愚痴ってばかりの何もしない3人組のオヤジ、スーパーを経営するアジア人夫婦、パトロールする警官たち、唯一の白人居住者ヒッピーなど、住人たちのスケッチが一定のリズムの中で描かれていく。そしてすべての断片はある一点に向かって、破壊・放火・暴動といったクライマックスへと集結していく。

3人組のオヤジたちと警官たちが無言のまま睨み合うシーンに、この映画の真髄を感じた。また、映画の最後には二人の指導者による言葉が綴られる。

人種差別に暴力で闘うのは愚かなことである。暴力は破滅に至るらせん状の下り階段で、「目には目を」の思想はすべてを盲目に導く。暴力は敵の理解を求めず、敵を辱める。暴力は愛ではなく憎しみを糧とし、対話ではなく独白しか存在しない社会を生む。そして暴力は自らを滅ぼし、生き残った者の心には憎しみを、暴力を振るった者に残虐性を植えつける。
──マーチン・ルーサー・キング

アメリカには善人も多いが、悪人も多い。権力を手中に握って我々の進む道を阻んでいるのは悪い奴らで、この状況を打破するために闘うのは我々の権利である。私は暴力を擁護する者ではないが、自己防衛のための暴力を否定する者でもない。自己防衛のための暴力は「暴力」ではなく、「知性」と呼ぶべきである。
──マルコムX


ラジオ・ラヒームがムーキーに「LOVE」と「HATE」を語るシーン


パブリック・エナミーの「Fight the Power」

♪ Fight the Power


『ドゥ・ザ・ライト・シング』

『ドゥ・ザ・ライト・シング』


*日本公開時チラシ
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*参考・引用/『ドゥ・ザ・ライト・シング』パンフレット

*このコラムは2015年11月11日に公開されました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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